第50話 訪れし裁判に備えて

「如月龍夜。君にお客様が来ている。出てこい」

「俺にお客?」


 突然警官の人から告げられた言葉に、俺は首をかしげた。こんな俺に、いったい誰が会いに来たと言うのか……


 警官の人から連れてこられたのは、ごくごく普通の面会室だ。


 面会室へと入ると、透明の窓越しに水色の服に赤いネクタイをつけた、1人の男性が座っていた。


「おや? 君が如月龍夜君で間違いないですか?」

「はい……そうですけど」


 俺は、その男性の前に座る。


 黒い髪にメガネをかけた男性。声は少し低めだが、ゆったりと口調で、長い間聞いていると、眠たくなってしまいそうだ。


「初めまして。私は、明日の裁判で君を弁護をする、柏木かしわぎと申します」

「弁護士の人……」


 どうやら、俺の事を弁護してくれる人らしい。


 ん?待ってくれ、裁判受けるのは警官の人から聞いたんだけど、明日!?


「待ってください……! 裁判って、明日なんですか!?」

「驚くのも無理でしょう。本当なら、1週間後に開催されるはずでしたが、なぜか明日になったそうで。ですので、私はあなたに挨拶へ参りました」


 嘘……じゃないみたいだな。裁判って、こんなにも早く受けられるものなのか……?


 とにかく、柏木さんに聞けることを全て聞いておかないと……


「あの、俺はどうなるんですか? 誘拐の件は分かりませが、殺人なんてしてませんよ!」

「ご安心を。全て把握してあります。昨日、あなたの為に情報と証拠を集め、私に提供してくださった方がいらっしゃいます」

「そうなんですか……? そんな人が……」

「はい。提供くださった情報の中には、動画もございました。私の知り合いに加工動画を見抜くプロが居るのですが、その方からも加工動画ではないと言う、証明書も頂いてます」


 すごい……俺の為にそこまで頑張ってくれた人が居るのか……


 是非ともその人に会って、お礼を言いたい。


「ですが、提供された情報や証拠は、『最後の手段として私が使うので、詳細は言わないで欲しい』と頼まれていますね」

「私? その情報提供者って、女性なんですか?」

「はい。その通りですよ」


 まさか女性の人だったとは……俺にそこまで協力的な人なんて、誰なんだ?


「私から言えることは1つです。安心してください。あなたの無実は証明されるでしょう。彼女の情報収集能力は、プロに値するほど素晴らしい物でした」

「……そうなんですか」


 そんなにすごい人がついてくれたのか。柏木さんもこう言ってることだし、信用しても……良いのかな?


 とりあえず、その女性と柏木さんを信じてみることにしよう。じゃないと、俺がどうなるのか……分からないからな。


「それでは、私はすべき事が残っていますので、ここで失礼します。また明日、お会いしましょう」

「あっ、はい。ありがとうございました」


 柏木さんは、ゆっくりと面会室から出ていった。


 その後、面会が終わった俺は、再び牢屋の中へと連れて行かれるのだった。



 一方その頃……



 ガチャッ……


「……」


 太陽の光が差し込む部屋に、お父様かある物を持って入って来ました。


 お父様は、私の座るベットの前に台座を置いて、台座の上に物を取り付ける。取り付けられたのは、モニターでした。


「……モニター?」

「そうだ」


 お父様はモニターを取り付けると、私の方を見て、ニヤッと微笑みながら話だしました。


「明日、如月龍夜の裁判が始まる」

「……! 裁判……!?」

「そうだ。裁判だ。あいつには、間宮寺家の娘を誘拐した上に、私を殺そうとしたと言う偽情報を流した。それに、私には協力な友が居る。我が友は、自分の立場を使い、様々な邪魔者を死刑に追いやった。本当に素晴らしい人材だ」

「まさか……龍夜さんを……」

「あぁ、お前が思っている通りだ。明日の裁判時間になると、モニターがつくように設定しておいた。せいぜい、お前の世話をしてくれた人が裁かれる所を、よく見ておくんだな」

「……っ!? 待って……!」


 話すだけ話すと、お父様は部屋を出ていきました。


 様々な邪魔者を死刑に追いやった……いったい、どんな人なんでしょうか……?


 嫌……龍夜さんが居なくなるなんて……絶対に嫌……!


「うぅ……龍夜さんに……会いたいよぉ……龍夜さぁん……」


 私は流し出る涙を、両手でひたすら拭いながら、弱々しく呟くのでした。


 そして、裁判の日が訪れるのです……

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