第47話 龍夜と柚梪の行方

 パトカーに乗せられてから数十分、警察署へ到着した俺は、よく見るオレンジ色の囚人服を着せられ、1人用の牢屋に収納されてしまった。


 しかし、俺は1つ疑問に思ったのだ。


 逮捕された人達は、まず先に『取調べ』を受けるはずだ。確か、罪を犯したことを問いかけられたり、犯罪をしていないなどの抗議をしたりする、『取調室』に連れてかれるはずだ。


 聞いた話だと、取調べは日中にしか行われないそうだ。だが、今はお昼時。日中のはずだ。


 取調べも無しに、囚人を牢屋に入れるだろうか?何かおかしい気がする……


 それに……誘拐及び殺人の容疑って……柚梪を保護してから、一度も警察へ連れて行かなかったのは俺の責任であるが、柚梪を捨てたのは親本人。柚梪とも家族の縁を切ったと、柚梪から聞いている。


 だけど、殺人って何の事だよ?

 俺は人に刃物を向けた事がない。逆に自分で言うのもあれだが、人の命を奪う輩は許せない方だ。


 謎の容疑で逮捕され、取調べ無しに即牢屋行き……何か裏でもあるのか……?


「しっかし、牢屋って始めて入ったけど、本当に何もねぇな。トイレと枕に薄い布だけか」


 周りは白い壁で覆われており、床は畳。普通の牢屋に比べれば、心地は良い方なんじゃないか?


 まあ、壁と壁との距離がある程度近いせいか、閉じ込められてる感はすごい。


「はぁ、俺はいつまでここで寝泊まりするんだろうな? 彩音と柚梪は大丈夫かな……」


 ため息を吐いた俺は、小さくポツリと呟いた。






「……んん……あれ? ここは……?」


 私は目を覚ますと、窓から差し込む月の光で、僅かに照らされた暗い部屋の、ベットの上に寝転んでいました。


 部屋……とは言っても、壁や床は石で出来てます。でも、月の光が入ってくると言うことは、少なくとも私が長年居た地下室ではないみたいです。


「……っ、鎖……?」


 私の右足首には、鉄で作られた輪っかみたいなのが取り付けられており、その輪っかには、南京錠と鎖が付いていて、鎖は壁取り付けられた取っ手に繋がれています。


 なぜか分かりませんが、その取っ手にも南京錠が付いています。


 私はベットの上から離れられない状態になっていました。


 キィィィ……


「なんだ。起きていたのか……真夜」

「……お父様」


 正面の両開きの鉄製扉から、お父様が入ってきました。お父様の背後を見ると、家の中ではなく外だったのです。


 それを見た時、私はどこに居るのかがすぐに分かりました。ここは……倉庫の中です。


「まさかこんなにも成長していたとはな。正直、お前は飢え死んだのだと思っていたが」

「今さら……何の用事ですか……?」

「ほう。少しは口答えするようになったか。まあいい、喜べ。お前は間宮寺家に戻ってくるチャンスが訪れたのだ」

「……何を言ってるんですか……?」

「今のお前は、夏柰とは比べものにならないほど、綺麗になっている。つまり、稼げると言うことだ」


 お父様は何も変わっていなかった。お父様は、私をお金稼ぎの道具としてしか見てない。


 昔の私は、お金を稼ぐことが使命と思っていました。でも、今の私は……龍夜さんから色々な事を学びました。


 お金を稼ぐ事だけが大切じゃない、楽しく……幸せに生きることも大切なのだと言うことや、その他たくさん。


 私の答えは……ただ1つだけです……!


「私は……お父様の所へは、戻りません……!」

「……ほう」


 しかし、お父様が見せたのは……不快な笑みでした。


「その意志、いつまで保てるか……見ものだな」

「……っ、それはどういう……」

「さあな。3日もすれば分かるだろう。とりあえず、お前はとなってもらおう。まあ、事が済むまでは、ここに居てもらうがな。安心しろ、食事や入浴はちゃんとしてやる。手洗いに行きたい場合は、後ろの壁にあるボタンを押せ」


 お父様はそう伝えた後、倉庫を出て行き扉を閉めました。おそらく、鍵も掛けられたでしょう。


 今はどうすることも出来ません。3日……いったい、3日後には何が待ってるのでしょう……


「龍夜さん……彩音ちゃん……どうかご無事で」


 私は両手を胸に当てて、心からそう祈りました。


 

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