第46話 間宮寺家現当主の襲来

「如月龍夜君だね? 君に誘拐及び殺人の容疑で逮捕状が出ている。署まで来てもらおうか」


 玄関の扉を開いた先には、4人の男性警察官が立っていた。


 先頭に居る警察官の言葉と、見せられる逮捕状を見て、俺は頭が混乱する。


「……!? お兄ちゃんが誘拐と殺人!?」


 リビングから警察官の声を聞いた彩音が、すぐさま飛び出してきた。


「ちょっと待ってください! 確かに兄は女の子を保護して、一度も警察署に連れてってないし、相談もしてませんけど、殺人ってどういうことですか!」

「そのままの意味だ。彼はと言う証言がある。また、と言う証言もある」

「……っ! それって……」

「とにかく、署で話を聞かせてもらおう。早く来い!」

「……! お兄ちゃんっ!?」


 理解の追いついていない俺は、4人の警察官によって、強引にパトカーへと乗せられ、そのまま連れて行かれてしまうのだった。


「お兄ちゃん……! お兄ちゃんっ!!」

「彩音ちゃん……? どうしたの……?」


 靴下のまま外に出て、走り去っていくパトカーに向かって、必死に叫ぶ彩音に、柚梪が近寄る。


 柚梪は何があったのかを理解していない様子だ。


「柚梪ちゃん。私、ちょっと出掛けるから」

「え? はい、分かりました……」

「あと、これを持って。絶対落とさないでね」

「……? これは?」


 彩音は、ポケットからある黒いケースを取り出すと、中に入っていた2つのUSBみたいな小さな機械を渡す。


「電波さえあれば、どこにいても会話が出来る物だよ。小さい電話機みたいなもの。だから、落とさないようにね?」

「は、はい……!」


 柚梪はその機械をポケットに入れた。


「お兄ちゃん、今行くから……っ!?」


 靴も履かずに近くの警察署まで向かおうと走りだす彩音。しかし、曲がり角を通り過ぎようとしたその時……


「ガハッ……!?」

「……! 彩音ちゃん!?」


 彩音は曲がり角に身を潜めた何者かに、首の後ろを思いっきりやられ、その場に倒れ込んでしまった。


「その小娘は、敷地内の物陰にでも寝かせとけ」


 気を失った彩音を持ち上げる3人の黒服の男達に、命令をしながらゆっくりと柚梪の前に姿を現す、ねずみ色の髪をした1人の男……


「……っ!? お父……様……」


 柚梪の前に現れるは、かつて柚梪を捨てたお金持ちの家系である間宮寺家現当主……間宮寺鷹行だった。


 柚梪は逃げようと後ろを振り向くが、すでに5人の黒服の男に、道を塞がれてしまっていた。


「まさかこんな愚民の家に住みついていたとは。全くけしからん。しかし、夏柰がゴミに見えるほどに綺麗じゃないか。今の貴様なら、十分に使える。真夜をする。やれ」

「嫌……っ、帰りたく……んぐっ!?」


 玄関付近に気を失った彩音を隠した男の1人が、あるピンク色の布で柚梪の鼻と口を押さえる。


 徐々に意識が遠のいていく柚梪は、やがて眠り込んでしまった。


「他の愚民どもに見られる前に、さっさと戻るぞ。急げ」

「はいっ」


 柚梪を黒い車に乗せると、間宮寺鷹行と10人近くの男達は、すぐさま車へと乗り込んで、その場を去っていく。


 しかし、玄関付近からある人影が現れる……


 その人影は、去っていく黒い車を遠目で見つめいた。その人影とは……


「愚民って……どの口が言ってるのかしらね」


 紫の長いツインテール、紫寄りのピンクの瞳をした女の子。気を失ったはずの如月彩音だった。


 彩音は、を、右手の親指で拭き取ると、クリッとした丸い目から、狙った獣は逃がさないかのような、鋭い眼差しへと変わり、異様な雰囲気を纏う……


 兄である龍夜が警察に連れてかれた直後、狙っていたかのように現れた間宮寺鷹行、何か関係していると確信をついた彩音は、少し重々しい声で言った……


「さてと……徹底的に調べ上げなくちゃね」



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