第31話 柚梪と彩音の顔合わせ
「お兄ちゃん、家に泊めて❤️」
「はぁ……、そうくると思った」
家に泊めて欲しいとお願いしてくる彩音。別に俺は構わないが、今は柚梪が居る。しかも、3日とかじゃなく、夏休み中とのこと。
勘弁して欲しいが、俺も兄として、現在では滅多に会えない妹のお願いは、叶えてやりたいと思っている。
だが……柚梪がどう反応するのかだな……
「お兄ちゃん……ダメ……?」
「うぐっ……」
無言で悩む俺に、あざとい声で俺にそう言った。
くそっ……今の声は反則だろ。ホントに変わったな……彩音。
「俺は別に構わないけどさぁ……柚梪が……」
「わぁーい! お兄ちゃん大好きぃ❤️ じゃあさっそく、お邪魔しまーす!」
「あっ!? おい、待て! そっちには……!」
家に上がった彩音は、ぐいぐいと家の奥へと進んで行く。やがて、彩音は柚梪の居るリビングへと向かって行った。
「うわぁー! ここがお兄ちゃんの家のリビングかぁー! すごー……うん?」
リビングを見渡す彩音は、ソファーに座っている、突然の来客に驚いた柚梪と目が合ってしまった。
「彩音っ! 待ってくれ……て、遅かった……」
柚梪を見た彩音は、とてつもないオーラを徐々に放ち始める。
これは……ヤバいのでは……?
「お兄ちゃん……? 私と言う女がありながら……部屋に別の女を招き入れてたなんて……」
「違うんだ彩音……! 落ち着いてくれ……!」
「しかも超美人さんじゃん……まさか……お兄ちゃん、あの女の人と……セッ……」
「やめろぉ! それ以上言うなぁ! てかしてないから!? マジで!」
彩音が危うく危険なワードを口にするとこだった……しかし、彩音の暴走は止まる気配がない。
「嘘だぁ! お兄ちゃんに女の人が出来たなんて認めなぁい! お兄ちゃんは私だけのものなの! お兄ちゃんに対する愛は、誰にも負けないのぉー!」
「だから落ち着けぇ! あの子は恋人とかじゃないから!」
「ホントに……?」
「本当だよ」
「じゃあ、あの子誰?」
「保護人だよ」
「保護人……?」
ようやく落ち着いてくれた彩音は、一瞬で身に纏ったオーラが消えて、少し考え込んだ。
それにしても、彩音が俺に対してここまで気持ちを持っていたとは……嬉しいのだが、ちょっと変な気分だ。
「保護人って、どういうこと? 拾ったの?」
「まあ、あながち間違えでは無いな」
「いつから保護してるの?」
「4週間前くらい」
「4週間!?」
彩音は俺に近づくと、目を必死に見つめながら、またもや訴えてくる。
「4週間……あの子と暮らしていたってこと……?」
「まあ、そうなるわな」
「……っ、やっぱり……あの子と営みははぐんで無いとしてもっ! 毎日毎日イチャコラアンアンしてるんじゃないの!?」
「だからしてねぇ……いや、してるかも」
「やっぱりぃ!!!」
イチャイチャして無いか……と聞かれれば、してないとは言えないような……
「あの子だけズルいよぉ! 彩音にもイチャコラしてぇ! 今すぐぅ!」
彩音は俺の襟元を掴んで、ぐわんぐわんと揺らしながら、必死に俺を求めてくる。
そのやり取りを遠目で見ていた柚梪は、右手を胸に当てながら、こちらを見つめてくる。
「お兄ちゃん。今夜、一緒に愛の営みを……」
「しないから」
「えぇ……そんなぁ……なら、せめてチューしようよぉ……」
「しないから」
だんだん過激に求めてくるようになる彩音。
すると、突然俺の右腕を抱きしめながら、俺と彩音の間に、柚梪が割り込んできた。
「……」
「柚梪……」
柚梪は俺を守るかのように彩音を見つめる。すると彩音は、ムッと頬っぺたを膨らませる。
「だいぶ懐かれているようで」
「ま、まあな……」
声のトーンを少し落として、彩音は俺にそう言った。彩音はため息をつくと、キャリーバッグをソファーの横へと持って行くと、両手を腰に当てる。
「はあ、とりあえずお兄ちゃんを求めるのは後にして……」
「え? 後でまた求められるの?」
「えっと、その子は保護人なんでしょ? お兄ちゃん。少し詳しく教えてくれるかな?」
「あぁ……分かった」
その後、ダイニングテーブル越しに椅子へ座り、隣に柚梪、目の前に彩音がいる状態だ。
突然冷静になる彩音に、少し戸惑いながらも、俺は柚梪について知ってることを、彩音に説明するのだった。
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