第29話 芽生え始める気持ち

 時間は進み、柚梪を保護してから約4週間。


 俺の夏休みシーズンも8月中旬と、半分も無くなってしまった。


 しかし、柚梪もだいぶ成長してきた。


 まず、体の肉つきが完璧に近いほどになった。少なくとも、もう痩せているって言うラインは越えた。

 そして胸だ。とうとう服越しからでも、胸の膨らみが良く分かるようになった。


 時々、チラチラと柚梪の胸に目が行ってしまう場合がある。しかし、柚梪は保護人……変な感情を抱く訳にはいかない。


 身長も少し伸びたな。だいたい、女子高校生の2年の平均身長と全く同じだった。


 つまり……柚梪は、高校2年生の年齢で言う約17歳と言うことになる。おっと、大学生である俺が17歳の女の子を家に……ゴホン。


 とにかく、柚梪は綺麗で美人さんになった。それで良い。柚梪用の保険証も完成したことだ。これからは柚梪を病院に連れて行く時も安心だな。


 8月中旬のある日曜日。バイトが休みの俺は、以前柚梪を連れて行った歯科病院に保険証を提示し、負担した7割のお金を返金してもらった後、家でゆっくりとしていた。


 だが、ここ最近……柚梪の様子が変だ。


 嬉しい時や、褒めた時は、天使のような可愛い笑顔を見せてくれてた柚梪だが、今ではなぜかそっぽを向かれるのだ。


 それに、甘えてくる頻度が高くなったり、甘えの仕方が大胆になってきた。


 現在時刻は、お昼の1時を回ったところだ。


 今俺は、スマホのサイトで適当に数学の計算問題を解いているのだが、柚梪は膝の上に座って来て、両手を俺のうなじ通して抱きついて来たり、俺の腕をギュッと抱いて、柔らかい胸に押し付け、頭を俺の肩に添えてお昼寝をしたりと、理性が壊れかねない甘え方をするようになった。


 正直、いつまで耐えられるか分からない。常に心臓はバクバクの状態だし、頭の中は柚梪のことを考えてしまう。


 俺も気がつけば、柚梪を意識するようになっていたようだ。


 柚梪を襲って、取り返しのつかないような事をしてしまったら……もし親が柚梪の事を探しているとすれば……親……


「……。」


 そうだ……今まで考えて無かった。もし柚梪が家出したのであれば、必ず探しているはず……


 俺の親ならともかく、この4週間柚梪と同棲していることを知られれば、相手の親は何と言うか分からない……


 やっぱり……これ以上、一緒に居るのは……良くないのかもしれない。


 柚梪と一緒の生活が楽しくて、なんなら……このままずっと、柚梪と一緒に居たいって思ったこともある。


「……柚梪」


 俺がそう呼ぶと、俺の肩に頭を添える柚梪は、そのままゆっくりと俺を見てくる。


「……っ」


 もしこの考えを実行するとなれば、この愛しい柚梪と会えなくなるかもしれない。この光が戻った可憐な瞳を、見れなくなってしまうかもしれない。


 でも……柚梪は十分に成長した。少なくとも、女優さんに負けないくらいだ。


 そう考えると……なのかもしれないな。


「柚梪……あのな、俺……」


 ピンポ~ン……ピンポ~ン……


 柚梪に今の気持ちと考えを伝えようとした瞬間、家のインターホンが鳴った。


「あっ、お客さんか……」


 俺は、柚梪に言おうとした事を、一旦後に回すことに。


 そして、玄関へと向かい『は~い』と言いながら、扉を押し開くと、そこには……キャリーバッグを1つ持った、高校生くらいの可愛い女の子が立っていた。


 次の瞬間……俺は、とんでもない言葉を耳にしたのだ。








「えへへっ。久しぶりだね! お兄ちゃん❤️」

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