第27話 柚梪の私服デビュー

 柚梪が疲れてしまい、昼食中に眠りへとついてしまった。ソファーで膝枕をしていたが、お昼15時からバイトへ向かった。


 夜20時。いつも通りバイトが終わった俺は、のんびりの家まで歩いて帰っていた。


 徐々に家が見えてくると、家の前にトラックが止まっていた。


 何用だ?と頭の中で呟きながら、俺は玄関へと向かうと、そこには1人の作業服を着た男性が立っていた。


「あの、俺の家に何か用ですか?」


 俺がそう男性に問いかけると、男性はすぐに俺の方へと振り向く。


 男性は、そこそこ大きなダンボールを手に持っていた。どうやらまた宅配便のようだ。


「あ、こんばんわ。如月龍夜様で間違えないでしょうか?」

「はい。間違えないですよ」

「良かったです。どうやらご不在のようでしたので。こちら、宅配物になりますので、サインをお願いしたいのですが」

「分かりました……はい、どうぞ」

「ありがとうございます! 少々重たいので、お気をつけて」

「はい、どうもです」


 俺は宅配物を受け取ると、男性はトラックへと乗って走り去っていった。


 とりあえず、一旦ダンボールを地面に置いて、家の鍵を開けてダンボールを家の中へと運ぶ。


 家中の電気がついていない……柚梪はまだ起きていなかったのか。


 玄関の電気を、ガチッとスイッチを押してつける。


 すると、リビングから寝起きの柚梪が、目の少し下を擦りながら、ゆっくりとお出迎えに来てくれた。


 まあ、多分インターホンの音を聞いて来たのだろうけど。


「ただいま柚梪。すまんが、ちょっとそこをどいてくれるかい?」


 柚梪にリビングへの道をあけてとらうと、ダンボールを持ち、ダイニングテーブルの上へと乗せる。


 先に柚梪用の夜食を作って、柚梪にご飯を食べさせる。ちなみに、野菜がたくさん入ったチャンポンだ。


 柚梪がご飯を食べている間に、俺はダンボールを開封する。すると、中に入っていたのは、以前俺が注文した柚梪用の服ではないか。


「おぉ! 柚梪、見てごらん。お前のために買った洋服が届いたぞ! 良かったな」


 ご飯を食べる柚梪に服を見せると、柚梪は興味を示し、食事中なのにも関わらず、俺の隣へと移動してきて、灰色の可愛いらしい服を眺める。


 透明の袋に入った服を柚梪に渡すと、次に出てきたのはスカート。こちらも灰色で、先端には白色の線が2本入った模様が施されており、実に女の子らしいスカート。


 さらにその下には……


「あっ……下着……」


 一様、女性用の下着が上下共に入っていた。とりあえず、なんか犯罪感あるから、見なかったことにしよう。


 その他にも、夏と冬用のパジャマが一着ずつ。これで、柚梪にも本格的な服を着させることが出来るぞ。


「よーし、柚梪。さっそくお風呂上がったら、この服を着てみてくれ。あと、ちゃんとご飯を食べるんだぞ?」


 柚梪は嬉しそうに頷くと、再びチャンポンを食べ始める。


 それから数時間後、ソファーに座ってスマホを弄る俺の肩を、お風呂から上がって、髪を乾かした柚梪がポンポンと叩いてくる。


 俺はゆっくりと振り返ると、ネット通販で買った、灰色の洋服とスカートを履いた柚梪が、立っていた。


「おぉ……!!!」


 やはり、髪色が白っぽい灰色であるせいか、実に服が似合っているじゃないか!


 今目の前に立つ柚梪は、一段と女性らしくなった、とても可愛いらしい姿となっていた。


 灰色で襟元は白、前には茶色のボタンが5つ付いている半袖の上着。白の線が2本施されただけの、シンプルなスカートは、柚梪が少し動くたびに、ヒラヒラと軽々しく動く。


 柚梪自体も、右の揉み上げを耳に引っ掛けて、片耳露出状態にしてくれている。別人かのように変わった柚梪は、痩せているなど関係無く、ただただ美しかった。


「柚梪! すごく似合ってて可愛いじゃん! もうれっきとした女性じゃないか? これなら、お出かけをする時も、安心して外に出られるな」


 綺麗になった柚梪を、俺は無意識に抱きしめながら褒める。まるで、薔薇ばらの花が開花したみたいだ!


 まさに女神。もう普通の女性達がどうでも良いくらい可愛いくて綺麗。何時間でも眺められる。


 そうこう頭の中で、バカなことを呟く俺に対して、抱きしめられている柚梪は……ほんのりと顔を赤らめていた。

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