第25話 2つの期限
食材には、必ず期限と言うものが存在することを、すでにご存知だろう。
賞味期限……その食材が、美味しく食べられるまでの期間のことを意味する。
消費期限……その食材が、決められた期間を過ぎると、食べられない。もしくは、食べない方が良いと言うことを意味する。
お店に並んでいる食材や、加工された食材、調理された食材には、この2つの期限の内、どちらかが表示されている。
お店側も、期限の過ぎた食材を、客に売りつける訳にはいかない。なら、期限の過ぎた食材はどうなる?当然廃棄となる。
そうなれば、お店側もその分赤字となってしまう。
なら、どうやって食材を廃棄しないようにしているのか……簡単な話だ。期限が一番迫っている食材を、客に購入させ、食べさせるのだ。
人間とは、何かしらの物をとる時、必ずではないのだが、出来るだけ手前にある物を取る習性があるのだ。
まあ、習性と言っても、奥にある物を取るのが面倒なだけなのだが、同じ物がたくさんある中、わざわざ遠くにある物を取る人はかなり少ないと思う。
買ったのならば、期限が来る前に食べる。もしくは、使えばいいと言う人が、ほとんどじゃないのだろうか?
しかし、お店に並べてある商品とは、手前に並べてある物ほど、期限の迫っている物が多いのだ。
お店側は、期限の迫っている商品を客に買わせて、出来るだけ赤字を少なくするのが目的の1つでもある。
だから、期限の迫っている商品を、一番手前に置くことで、客がその商品を取りやすく仕向けているんだ。
つまり、一番奥に置かれている。もしくは、下に埋もれている商品ほど、期限が長持ちする商品の可能性が、非常に高いと言うことだ。
期限が近い商品には、結構『半額』だったり、『○○%OFF』と言った、値段シールが上から貼られている場合もある。
そして俺は、元々1人暮らし。今は柚梪が居るが、こうして買い出しに来るのは、月に1回、多くて2回が最大。
1ヶ月くらい、どうってことないじゃん。冷蔵庫で冷やしておけば、ある程度は持つと言う人も居るだろうが、なるべく期限は長持ちするのに越したことはないだろう?
あまり良い考えではないが、俺はそこそこ離れた位置、もしくは埋もれた商品を、出来るだけ回収するようにしている。まあ、期限が迫ってきていても、値段が安くなっている商品なら、節約のためにそっちを買うけれど。
ショッピングカートの上部分に
俺の買い出しは、最初に米を購入し、車輪付きショッピングバックに詰め込むことで、カートの下部分が空く。そこへ、さらに多くの食材を籠に詰めるのだ。
野菜・お肉・魚・その他と言った、様々な食材を籠につめて、溢れる限界まで詰め込む。
籠いっぱいに食材を詰めたら、早々に会計。
さすがに量が多いため、店員さんも一苦労。申し訳ないとは思うが、これが俺の生活方法なのだ。
あと、柚梪はというと、柚梪にはカートを押してもらっていた。移動の際には、俺もカートの先端を持って移動している。
会計が済むと、持って来た大型斜めがけバックに、お肉や魚、冷凍食品を大量に詰め込んで、余ったスペースには、大きめの野菜を入れる。
残りはビニール袋等に入れ、手で持って帰ることになる。
「柚梪、これ一番軽いやつなんだけど、持てるか?」
俺の手慣れた収納作業を、じっと見つめる柚梪に、小さな野菜が入った、一番軽い袋を持たせる。
あまり力の無い柚梪だが、ミニトマトと言った小型の野菜が入った袋くらいは持てるようだ。
柚梪が3つある袋の内の、1つを持ってくれたおかげで、俺の片手が空き、最後の袋を持つことが出来る。
「よし。それじゃ、帰ろうか。柚梪。」
両手で袋を持つ柚梪にそう言うと、柚梪はコクリと1回頷き、俺の後ろをついて来る。
両手が塞がっているから、柚梪と手を繋げない。柚梪が人混みにのまれないよう、注意しなければ。
俺と柚梪は、2人並んでショッピングモールの出口を目指す。
出来るだけ離れた位置にある、もしくは埋もれた商品は、期限が長持ちする商品の可能性が高いとは言ったが、もちろんそうでない時もある。
それに、商品を選ぶ時、手で持ってから色の鮮やかさや、形で鮮度を確かめる人が時々居るけれど、正直に言って、俺にはさっぱり分からない。
とりあえず、この食材達を無事に家まで持って帰ることが出来れば、来月の中旬くらいまでは持つだろう。
中には期限ギリギリのハズレも存在する。よく確かめて保存しなければな。
手前の商品を取る。遠い及び埋もれてる商品を取る。結局の所は、人次第って訳だ。別に、世の中手前の商品だけを取れと言う決まりや法則なんて、この日本には存在しない。
買いたい物を買う。楽しく買い物が出来ているのであれば、それで良いと思う。少なくとも俺はな。いろんな考えを持っている人なんて、数え切れないほど居るのだから。
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