第22話 離れたくない
結局俺は、夜中の2時頃まで柚梪の頭を撫でていた。昼寝をしたと言うこともあり、なかなか眠れなかったのだ。
雷は1時くらいまで鳴っていたな。雨と風に関しては、俺が睡魔に負けて眠りに入った時には、まだ止んでいなかった。
暗くてはっきりとは見れなかったが、少なくとも俺の腕の中で眠る柚梪は、とても安心したような顔で、スヤスヤと眠っていた。
その寝顔は、何時間でも眺めていられるような、とても可愛いらしい顔だった。
そして時刻は朝の9時頃になり、いつもなら7時に起床する俺と柚梪だが、夜寝る時間が遅かったがため、少しお寝坊をしていた。
先に目を覚ます柚梪。半開きの目で周囲を見渡す。
風はいまだに吹いているが、そこまで強くはない。雨もどうやら止んでいる様子だった。
そして柚梪は、ソファーの背もたれに頭を乗せて寝る俺を見つめると、俺の両肩に手を添えて、ゆっくりと揺さぶる。
しかし、遅くまで起きていた俺は、そう簡単には起きなかった。
すると柚梪は、無理に俺を起こそうとせず、ソファーから立ち上がり、1人で洗面台へと向かう。
朝とは言えど、外は雲って太陽の光があまり届かず、家の中は薄暗いままだったが、柚梪が試しに廊下にある電気のスイッチを入れると、廊下に設置された電球が光だす。
電力も昨日の夜中に戻っていたようだ。
洗面台に来た柚梪は、手慣れた手つきで歯磨きをする。水で歯ブラシを濡らし、歯磨き粉をつけ、自分の歯をまんべんなく磨く。もちろんうがいもね。
歯磨きを済ませると、廊下の電気を切って、再び俺の元へと戻ってくると、膝の上に座って俺の胸元に頭を添える。
ドクン……ドクンと俺の心臓が動く音を聞く柚梪。そこに、遅れて俺が目を覚ます。
「んあ……? あぁ、柚梪……もう起きてたの……ふわぁ~あ……」
大きなあくびをする俺を見て、柚梪はクスクスと笑う。
「ふう……歯を磨かねぇとなぁ……柚梪、どいてくれないか?」
俺は洗面台へ向かおうと、柚梪にそう言うが、柚梪はどいてくれる気配がない。
それどころか、逆に『行かないで』と俺の体にしがみついてくるのだ。
「柚梪……? 俺、歯を磨きたいんだけど……」
しかし、柚梪は俺にムッとした顔を見せた後、柚梪は俺の右手を持って、自分の頭の上へと乗せてくる。
撫でて欲しいのか?そう思った俺は、柚梪の望み通り頭を撫でる。すると、柚梪はニッコリと微笑み、気分が良くなった様子。
「ほら、これでどいてくれないかな?」
頭を撫でてから柚梪にそう聞くが、再び柚梪はムッと頬っぺたを膨らませる。
今度は、俺の両手を自分の背中へと持っていくと、『抱き締めて』の意思を表す。
俺は仕方なく、柚梪を抱き締め自分の体へと柚梪の身を寄せると、またもや幸せそうな顔つきになる柚梪。
なるほど、俺から離れたくないってことか。よっぽど心地が良いのだろう。しかし、この様子では……しばらくどいてくれそうにない。
「仕方ないな……少しだけだぞ? 朝食も取らなきゃいけないし」
俺がそう言うと、柚梪は俺の胸元に耳を当てながら、コクリと頷く。
そうして数十分ほど、この状態が続いたのだが、こうして抱き締めていると、柚梪もある程度体に肉がついてきたことが分かる。
それに……僅かに柔らかい感触が体越しに伝わってくる。また一段と成長してるのか。
この調子なら、数週間以内には、万全な体つきになるのではないだろうか?柚梪の立派な女性姿を、早くこの目で拝見したいものだ。
しかし、この時の俺は気づくはずがない。
柚梪の心臓の鼓動が早くなり、新たなる感情が生まれ始めていると言うことを……
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