第20話 停電

 時刻は夜の20時頃。風は強く、雨も激しく降っていた。部屋のあちこちから、雨が叩きつけられる音が聞こえる。


 お昼に柚梪と、少し甘い時間を過ごした後、満足した柚梪は、再度小説を読み始めて、俺は少し昼寝をしていた。


 夕食と入浴を済ませた俺と柚梪は、再び自由時間を迎えるのだが、より強くなった風に、雨の激しい音に柚梪は、体まで毛布を被り、俺に身体を極限まで寄せていた。


 どうやら少し怖がっている様子。右手で柚梪の右肩を支え、左手でスマホを弄る俺。しかし、結構な頻度でインターネットの接続が悪くなり、スマホの画面にグルグルマークが表示される。


「あっ、また接続に失敗しやがった。やっぱ雨と風の影響か」


 だんだんとスマホのインターネット接続が悪くなってきている。しかも、再接続するのにかなり時間がかかる。


 非常に参ったな……これじゃ、今この辺りの状況が分からない。


 近くに川は無いが、川の水が溢れそうだったり、土砂崩れが起きてたりするかもしれない。洪水とかしてないといいのだけど……


 それにしても、雨や風の音がすごくうるさい。これでは、まともに眠ることすら出来ないではないか。勘弁して欲しいものだ。


 俺がそうこう頭の中で呟いていると、チカッと鳴った瞬間、ある現象が発生する。それは……


「……っ! 停電か……」


 一瞬で電気が消えて、部屋の中は暗闇状態となる。


 さらに、停電した瞬間に怖がっていた柚梪が、俺の体へと抱き付いてくる。


 体を握り締める力が強い……こりゃ、かなり怯えているな。


「大丈夫だよ。俺はここに居るし、ブレーカーが落ちただけだろうから」


 柚梪の頭を撫でて、ひとまず柚梪を落ち着かせる。


 そして俺は、左手でスマホに電源を入れ、ライトをONにする。すると、スマホから出た白い光が部屋の一部を照らす。


 スマホの光を頼りに、右腕を抱き締める柚梪を連れて、俺はキッチンへと向かい、ブレーカーをスマホで照らすが……


「あれ? ブレーカー落ちて無いじゃん……」


 なんと、ブレーカーは落ちてはいなかった。と言うことは、完全なる停電ではないか。


「おいおい……マジかよ。冷凍食品を先に使っておいて正解だった」


 幸いにも、冷蔵庫内の食材はある程度使っているため、特に問題は無いが……もし、食材を買い出しに行った後だったら、かなり絶望的だったと思う。


 なにせ、今は電力が失わているのだから。少なくとも、食材が少し痛んでしまう可能性があった。


 まあ、外がこんなにも荒れた状態だ。電力が復旧するまでは、気長に待つしかないな。


「柚梪、しばらくは暗いままになるけど、我慢しておくれ。一緒に居てやるから」


 柚梪は弱々しく頷くと、俺と柚梪はソファーへと戻る。


 再び毛布を被って、ネットが再接続されてないか確認する俺と、俺の腕を抱き締め体を寄せる柚梪。


 暗闇に覆われ、外の影響で部屋の気温が下がっている中、俺と柚梪はお互いに身を寄せ合いながら、この夜を過ごしていく。


 しかし、この台風の脅威は……まだ終わらない。

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