第19話 台風
ネットで買い物をした後、コンビニへ支払いをしに行った。その日は特に何事もなく1日が終わり、翌朝の10時頃のことだった。
外の風が強くなってきたせいか、窓側からはゴトンゴトンと、雨戸が風によって押し付けられているような音がする。
予報によると、夕方くらいから大雨になり、夜には落雷警報も出ている。
いつもの如く、ソファーに座ってスマホを弄る俺。そして、俺に寄り添う柚梪。柚梪に関しては、外の風が気になるのか、音が窓側から鳴るたびに目をチラチラと向けている。
「風、だいぶ強くなってきたな。それに、少し肌寒いかも」
外が冷えているせいか、半袖半ズボンで居る俺は、腕と足に寒気を感じる。
柚梪に関しては、上半身は多少分厚いパーカーを着ているし、長袖だから大丈夫だろうけど、下半身にはボクサーパンツしか履いておらず、太ももから足先までは、肌が全てオープンしている。
「柚梪、寒くないか? あれなら、2階から毛布を持って降りて来ようと思うんだけど」
コクリと頷く柚梪を見て、俺は立ち上がると、2階へと向かう。
一様、エアコンは設置してあるが、出来るだけ電気代は1円でも節約したい。
朝なのに、電気がついてない2階は、夜中かと思うくらいに暗かった。まあ、雨戸を閉めているから、明かりが入らないのは当然だけどね。
暗すぎて見えないって訳では無いから、そのまま俺は自室へと向かい、大きな棚を開くと、モコモコの触り心地が良い毛布を取り出す。
と言うか、柚梪が家に来てから、俺の部屋で柚梪が寝てリビングのソファーで俺が寝る習慣がついてから、自室に全く来なくなったよな。久しぶりに自室へ来た気がする。
毛布を両手で持ち、ゆっくりと階段を降りて、柚梪の元へと向かう。
「はい。毛布持って来たから、これを足にかけな」
そう言って、俺は柚梪の露出された足に、モフモフの毛布をかけてやると、柚梪は俺の方を見ながら、ニッコリと微笑む。
またもや不意打ちの微笑みに、俺は胸がドキッとする。ほんと、柚梪は無邪気だな。
いつも通りの位置に、ソファーの上へと腰掛けると、今度は柚梪がお返しに、余った毛布の面積を俺の足にかけてくれた。
「おっ、ありがとう柚梪。柚梪は優しいな」
俺は柚梪に微笑みながら、柚梪の頭に俺の右手をポンッと乗せて、滑らかな灰色の髪越しに頭を撫でる。
再びニッコリと微笑みながら、俺からの撫で撫でを堪能する柚梪。
それにしても、柚梪の髪色……灰色なんだけど、少し薄くなった?前までは、暗い感じの灰色だったけど、今は白がかった明るい灰色になっている。
電気で照らされているからとかでは無く、確かに色が薄くなったようだ。
最近柚梪が明るくなってきたのは、単に体つきが女の子らしくなったり、表情が豊かになってきた以外に、明るい灰色の髪へとなってきた影響もあるかもしれないな。
すると、柚梪は突然俺に飛びついて来たのだ。
「うおっ、ビックリしたじゃないか……柚梪。どうした? 急に抱き付いて来て」
ある程度頭を撫でやると、気分が良くなった柚梪は、しおりを挟まないで小説を閉じ、ソファーにポイ捨てするかのように置いた後、俺の体に真正面からギュッと抱き付いてきたのだ。
笑顔で俺の体を抱き締める柚梪に、俺は再度頭に手を置き、撫で始める。すると、柚梪は嬉しそうに俺の事を上目遣いで見上げてくる。
だんだん明るくなってきた柚梪の水色の瞳に、可愛いらしい笑顔に見とれながらも、柚梪の頭を優しく撫で続ける。
柚梪も変わったな。まだ万全では無いとは言えど、こんなに可愛いくなりやがって。
「可愛いくなったな……柚梪。」
俺は小さく声で、ボソッと呟いた。
すると、柚梪は『何か言った?』と言わんばかりの表情で、首を横にかしげる。
「どうした? 別に何でもないぞ」
俺は優しい声で柚梪にそう言うと、柚梪はもう1回首を横へとかしげた後、再び笑顔で俺の体に顔を埋める。
まるで、甘えてくる子猫のようだ。それだけ、俺を認めてくれている証拠だな。そう思うと、柚梪を拾って本当に良かったと思える。
「全く……可愛いやつめ」
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