第16話 お弁当

 母さんからリンゴが届いた後、俺はよくお世話になっているコンビニへと向かい、2日分くらいの弁当やパンなどを、ある程度購入してきた。


 これで、朝と昼は問題無いだろう。夜は、今ある食材で足りるから、よっぽどのトラブルが無い限り、この台風は乗り越えられそうだ。


 家に帰ると、いつも通り柚梪がお出迎えをしてくれた。柚梪に買ってきたお弁当などを、テーブルの上へと置くよう指示した後、俺は再度外に出て、1階の窓を守るために雨戸を閉めた。


 その後、家の中から2階へと上がり、ちょっと閉めずらかったが、2階の雨戸も全て閉める。


「よし、これで大丈夫だろう」


 1階と2階の雨戸を閉め終わり、1階へと降りる。


 やがて、リビングへと戻って来た時には、すで朝11時を回ろうとしていた。


 リビングへ戻って来た俺を見た柚梪は、俺の前へ歩いて来て、ゆっくりと手に持ったリンゴを差し出す。


「どうした? リンゴを食べたいのか?」


 俺の問いかけに、柚梪は小さく頷く。


 だが、まだ昼食まで約1時間はある。どうせ食べるなら、昼食後のデザートととして食べたいんだが……


「柚梪、お昼ご飯まで待てないか?」

「……」


 柚梪は少しだけ、シュンとした顔になる。


 困ったな。後1時間は待って欲しいのだが……柚梪はどうしても、リンゴを食べたいようだ。


「仕方ない。ちょっとだけ早いけど、お昼にしようか。リンゴはご飯を食べ終わってからね。いい?」


 俺がそう言うと、柚梪は嬉しそうな顔でコクリと頷いた。はあ、俺は甘いなぁ……


 早速俺は、買って来たお弁当を電子レンジで温める。その間に、おまけで付けてもらった割り箸をダイニングテーブルに並べる。


 今温めているお弁当は、ハンバーグ弁当。その名前の通り、少し大きめのハンバーグと、ごまの付いた白米、ちょっとしたサラダなどが入っている。


 チンッと電子レンジが鳴ると、お弁当を取り出し、蓋を開けて椅子に座る柚梪の前に置く。


「先に食べて良いよ。俺はもう少し時間が掛かるから」


 俺がそう言うと、柚梪は手を合わせた後、紙袋から割り箸を取り出すのだが、椅子から立ち上がり、俺に割り箸を持って来る。


「あぁ、ごめん。割り箸の割り方を教えてなかったね」


 そう言えば、柚梪は割り箸を使ったことが無かったことを、すっかり忘れていた。


 俺は柚梪の前で、割り箸を綺麗に割って見せた。


「割り箸ってのは、こうやって2本に割ってから、箸として使うんだよ。さあ、早く食べないと冷めるよ?」


 柚梪は1回頷くと、俺が割った割り箸を持って、再び椅子へと座り、ご飯を食べ始めた。


 やがて、俺の分のハンバーグ弁当も温めて終わり、柚梪の隣へ座ってから、2本に割った割り箸でお弁当を食べ始める。


 やはり、ハンバーグ弁当は文句無しに美味しい。定番と言えば定番だな。柚梪も美味しそうに食べてるし。


 俺からしたら、ちょっと量が物足りないが、小腹が空いたら、母さんが大量に送りつけてきたリンゴを食べれば良い。


 ……ん?そう言えば、手紙には母さんと光太の名前しか書かれてなかったな。父さんは仕事で居ないのは分かるけど……


(おかしいな……あいつも家に居るはずなんだが……)


 


 

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