第15話 宅配便
朝9時頃のこと。テレビをつけてニュースを見ている俺と、俺の肩に寄りかかって小説を読む柚梪。
「次のニュースです。現在、沖縄付近にて台風12号が発生し、5日間にかけて北海道へと北上していく予想です」
「なんだ? 台風が来てるのか。それも、結構強いぞ。雨戸を閉めておくか」
日本全域を通過するような、大規模かつ強力な台風らしい。これは、相当天気が荒れることだろう。
明日くらいから、風が強くなり始めて、明後日からは大雨だろうな。
そして俺は、透明のテーブルの上に置いてある、スマホを取る。
プルルル……プルルル……
「……あっ、もしもし、如月です」
俺は、スマホでとある人に電話をかけた。その電話先の相手は、バイトで働いている店長だ。
「あぁ、如月君。どうしたんだい?」
「店長、さっきのニュース見ました? かなり強い台風が来てるみたいですね」
「そうだね。明日から、風が強くなってくるみたいだし、如月君も気をつけなさい」
「はい。それで、バイトなんですが……今日お休みします」
「おや? 如月君がお休みを取るなんて、ずいぶん珍しいね。どうかしたのかい?」
「ちょっと食材が足りないもので。台風も来ますから、弁当とかを買っておきたいですし、万が一に備えて、準備もしときたいので」
「確かに、自分の身が一番だからね。分かった。それから、明日と明後日は休みにするから」
「分かりました。それでは、失礼します」
店長から、今日のバイトを休む許可を貰うことに成功。とりあえず、近くのコンビニで食べられる物を買ってこないと。
柚梪が家に来てから、だいぶ日も経って食材が無くなりつつある。買い出しに行こうと思っていたが、台風が過ぎた後になるな。
「柚梪。ちょっと、どいてくれるかな?」
俺の言葉に、柚梪は一瞬俺を見た後、俺の肩から頭をのける。
「柚梪、ちょっと買い物に行ってくるから、お留守番よろしくね」
俺がそう言うと、柚梪は軽く頷いた。
服装は、朝起きた後に着替えているから問題ない。
あとは、財布を持ってと……
ポケットに財布を入れて、俺は玄関に向かおうとしたその時……
ピンポ~ン……
突如、家のインターホンが鳴った。どうやらお客さんのようだ。
「はーい。今、行きますね」
俺はそう言うと、急いで玄関へと向かい、扉をゆっくりと押し開く。すると、玄関前に立っていたのは……配達の人だった。
「どうも。郵便物をお持ちしました」
「あぁ、ありがとうございます……(あれ? 俺なんか頼んだっけな?)」
俺は何かを注目した記憶が無く、少し戸惑ったが、確かに俺宛ての郵便物のようだ。
「如月さんのお宅で間違えないでしょうか?」
「はい。間違いないです」
「ありがとうございます。では、こちらにサインをお願いします」
提示された紙に、『如月』と書いて、配達の人に手渡す。
「はい、ありがとうございます。こちらお届け物になります。ありがとうございました!」
「はい、どうも」
荷物を渡した配達の人は、すぐにトラックへと乗り込み、俺の家を去って行った。
届いた荷物は、大きめの四角いダンボール。それも、そこそこの重さがある。いったい何なのだろうか?
俺は荷物をリビングへと持って行き、ダイニングテーブルの上に、ドスッと重い音を立てて置く。
その音に反応した柚梪が、小説にしおりを挟んで、ソファーの上に置くと、俺の元へと歩いてきた。
とりあえず、時間はあるから、先に荷物を確認するとしよう。
俺は棚に付いている引き戸から、カッターナイフを取り出し、ダンボールを塞ぐテープを切っていく。
そうしてダンボールが開き、俺と柚梪は中身を確認する。
「これは……リンゴだな」
ダンボールの中には、15個くらいのリンゴが丁寧に詰められていた。
そして、1つの手紙を見つけて、手に取ってから読み始める。
『龍夜へ……最近、近所さんからリンゴをたくさん貰ったのだけど、さすがにお母さんと
なるほど、つまりリンゴを貰ったけれど、食べきれないから、俺に押し付けて来たと。
全く、母さんってば……
しかし、柚梪はリンゴを見つめると、俺の方を見て、何かを伝えようとしてくる」
「なんだ? リンゴが食べたいのか?」
俺がそう聞くと、柚梪はコクコクと頭を2回縦に頷いた。そう言えば、柚梪にはスイーツを食べせてやったが、フルーツは食べさせたことが無かったな。
俺はリンゴを持てるだけ持って、冷凍庫に運ぶ。
「そうだな。お昼のデザートにでも、リンゴを出そうか」
リンゴを冷蔵庫に入れて、とにかく食材を先に買い出しへ行かないと、食べる物が無くなってしまう。
そうしてリンゴを全て冷蔵庫へと入れた。
「じゃあ柚梪、行ってくるね」
俺が柚梪に対してそう言うと、柚梪は軽く手を振ってくれた。
まさか、母さんからリンゴが届くとは思わなかった。まあ、ありがたいのだけれどね。
なんやかんや言って、リンゴなんて久しぶりに食べるなぁ……
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