第9話 折り紙
コンビニで購入したおにぎりを食べながら、家へと帰宅。洗面台で手を洗い、部屋に入った時はちょうどお昼の12時を回った頃だった。
本当ならば、今から食事を作り、昼食を取る時間なのだが、おにぎりを食べたばかりのため、そんなにお腹は空いていなかった。
夕方まで自由時間なのだけど、正直……することが無い。
昨日の夜に干した洗濯物をたたみ、ソファーに腰掛けながら、最近読み込んでいる恋愛小説を片手に持って、静かに読んでいるくらいだ。
幸い、俺の読んでいる小説は、物語が長いおかげで巻数も多い。暇潰しにはもってこいだ。
俺が小説を読んでいると、左袖から引っ張られる力を感じて、その方向に小説から目を向ける。そこには、俺の左袖を指で
「どうしたんだ? それは……折り紙じゃないか」
彼女は片手に、未開封の折り紙を持っていた。
「折り紙を折りたいのか?」
俺の問いかけに、彼女は小さく頷く。
「いいぞ。開けてやるから、貸しておくれ」
彼女から折り紙を受け取ると、折り紙を開封して、ソファーとテレビの間にある透明のテーブルの上に置く。
この折り紙は、電話機やメモ帳、雑誌などを置いている棚がリビングにあるのだが、その棚に置いてあった物。俺も、いつから折り紙を置いていたのか忘れたが、買った記憶は無い。
まあ、彼女が興味を示してくれたし、別に気にすることじゃないか。
折り紙をテーブルに置くと、彼女はテーブル前の床に座り込んで、早速折り紙を折りだし始めた。しかし……かなり雑な折り方だ。何を折っているのか、正直検討がつかない。
「ほら、これに色んな種類の折り方があるよ? これ見ながら、好きなのを折ってみ?」
折り紙の中に入っていた1つの紙を見つけて、彼女の前に広げて見せる。
「カエルとか、カメラとか、
彼女は折り方の紙を必死に見る。何を折ろうか決めているのかな?
ある程度見終わると、何を折るのか決まったのか、彼女は折り方の紙を見ながら、何かをゆっくりと折り始めた。
その様子を見た俺は、再び小説に目を通す。部屋中に紙の擦れる音だけが鳴り響く。
それから数時間、お昼の14時を回ろうとしていた時、今度は右袖から引っ張られる力を感じ取る。
「お!鶴を折ったのか!良く折れているじゃないか!すごいぞぉ~!」
それは、彼女から『鶴』を折り終えたと言う報告だった。時間が掛かったとは言えど、ズレ1つない完璧の出来に、俺は少し驚いた。
彼女を誉めながら、頭を優しく撫でる。
頭を撫で終わると、彼女は鶴を俺に差し出してくる。
「ん? この鶴を、俺にくれるのか? ありがとう。初めて君から貰った贈り物だし、飾っておこうか」
鶴を受け取った俺は、
それを見た彼女は、再び床へと座り込み、折り紙を折り始めた。
彼女を保護して2日目なのに、俺にプレゼントをくれるとは思わなかったな。頭を撫でてる時も、まるで子供を甘やかしているみたいで、とても気分が良かった。
こうして見ると、なんだか少しずつ……彼女に愛着が湧いてきたのかもしれない。早く彼女と、言葉を交わし合って、会話を楽しんでみたいものだ。
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