第5話 寝かしつけ

 結局彼女は、一皿のオムライスを、あっという間に食べ尽くしてしまった。


 作った側からすれば、こうして誰かに料理を振る舞ったことは無いが、全部食べてもらえると、何気に嬉しいもんだな。


 時刻はすでに21時を回っていた。


 一通り彼女へのやるべきことは、全て終わったかな?


 少し多めに作っておいた、オムライスを新しい皿につぎ、スプーンも取り出して、俺もパパッと夕食を済ませる。


「じゃあ、俺は風呂に入ってくるから、少し待っててね」


 俺は、ダイニングテーブル越しに座る彼女にそう言うと、お風呂場へと向かうのだった。


 脱衣場の棚から、寝る用のパジャマを取り出して、お風呂場に入りシャワーを浴びる。




 ……それから数十分後、頭と体の全てを洗い終え、大きめのタオルで全身の水気を拭き取る。


 用意しておいたパジャマに着替えて、使ったタオルと脱いだ服を洗濯機の中へとぶち込み、洗剤を入れてスイッチON。


 昨日の洗濯物が入ったかごを持って、リビングへと戻った時には、すでに22時を回ろうとしていた。


 そして彼女は、腕を枕にして、テーブルに伏せながら、すでに眠りに入っていた。


「……。腹が満たされて、眠くなったのか」


 俺は、その場に籠を置いて、伏せて静かに眠る彼女を、お姫様抱っこをする。そして、2階にある自室へと連れて行った。


 本当は、俺が風呂から上がったら、彼女の歯を磨いてから、自室で寝かせようと思ってたが、すでに寝ちゃったし、無理に起こすのは可哀想だから、そのまま寝かせてあげよう。


 明日は日曜日で、1日中空いてるし、朝食後でも歯医者に連れて行くとしよう。

 おそらく、ここ最近歯を磨いていないだろうからね。虫歯や歯石しせきが多いことだろう。手痛い出費だが、これも仕方ない。


 2階の自室の前に到着し、扉を腕でなんとか開くと、俺のベットの上に彼女を寝かせる。


 すると、ベットに乗せた衝撃で、彼女が起きてしまった。


「あぁ、起こしてしまったか。ごめんよ」

「……」


 彼女は俺を見つめるが、ベットに寝かせた彼女に、俺は薄い毛布をお腹らへんまでかける。


「悪い悪い。起こすつもりは無かったんだ。俺の部屋だけど、ここなら静かに眠れるだろ?」


 俺は、彼女のサラッとした髪の上に手を置いて、優しく頭を撫でる。


「ほら。もう夜遅いから、ゆっくり休みな」


 頭を撫でていると、彼女は心地が良くなったのか、徐々にうとうとし始める。


 そして、1分も経たずに、再び眠りについた。


 スヤスヤと寝る彼女の顔は、まだ痩せ細いままだけど、子猫のように可愛いらしく俺には見えた。


 彼女が完全に眠りについた後、1階へと戻り、リビングに洗濯物をハンガーにかけて干し終わると、脱衣場にある洗面台で歯を磨いて、リビングのテレビ前にある、3人座りのソファーに寝っ転がって、俺も眠りにつくのだった。

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