第2話 失った心
「……っ、これは……」
優しく肩を叩き、ゆっくりと顔を上げたこの子のある部分に俺は気がついた。
それは……目だ。
目はパッチリと開いているのだが、その水色の瞳に光が
さらに、この子は
一瞬俺は、この子は人形なのではないか?もうすでに、手遅れだったのではないか?と疑問を浮かべるが、弱々しくだけど……肩が上がったり下がったりしているのを確認した。
つまり、この子は息をしている……生きていると言うこと。
しかし、瞬きをしないうえに、瞳に光が無い状態で、ひたすらジ~っと見つめられると、人間として恐怖を覚える……
でも、俺にこの子を見捨てると言う選択肢は無い。
それで、次の日にこの子が亡くなってたら?俺は見殺しにしたことになる。1つの命を助けられないクズになるから。
「君、お
「……」
そうだろうとは思ったが、
どうやら、思ってたよりも心が壊れてるのかもしれない。はたまた、壊れかけの状態なのか……
服がボロボロな上、虫も集まっているほどだ。一体、何日の間お風呂に入ってないのだろうか。
とりあえず、警察の所へ連れて行くか……と言っても、辺りはすでに暗い上、この辺に交番は無い。一番近い警察署でも徒歩20分以上は掛かる。
俺はズボンのポケットから、スマホを取り出して電源を入れる。
連絡をして、警察の方から来てもらえないかを、聞いてみることにしよう……と思ったその時だった。
ぐぅ~~~……
俺をひたすら見つめてくるこの子が、お腹からよく聞く音が鳴ったのだ。
「お腹が空いてるのかい?まあ、その様子だとしばらく何も口にして無いだろうね」
何か買ってあげたいけど、ここはそこそこ広めの住宅地なため、スーパーやコンビニに行くには、少し距離がある。
見た感じ……結構弱っているようだし、あまり歩かせる訳にはいかない。逆に、置いて行くのも心配だ。
警察を呼んでから来るまでに時間が多少掛かるからな。となれば……俺の家でご飯をご馳走するくらいしか思いつかない。
幸い、俺の家は3分も掛からないくらい近くにある。
「良かったら、ご飯をご馳走しようか?俺の家、ここから結構近いんだ。それに、もう辺りは暗いからね。もちろん、君が嫌ならいいんだけど……」
俺はその子に優しく問い掛けてみるが、全く反応が無い。ただ俺の目を見つめるだけ。
困った……どうすればいいのやら……
とりあえず家へ連れて行こう。辺りが暗くなった夜に行動するのは、あまり良いとは言えない。
この子の体がある程度回復でもしたら、警察に連れて行くとしよう。
その子を家に連れて行こうと、優しく手を握る。
しかし、痩せ過ぎているせいか、骨を直接触ってるような感じだ……しかも、相当冷えている。
これは、ご飯を作るより先にお風呂に入れて、体を暖めてやらないとダメだな。
それに、近くに自動販売機があるが、暖かい飲み物を買ってあげても、おそらく自分では飲まないだろう。
それどころか、ずっと握り続けて
自動販売機の暖かい飲み物って、案外熱々だからな。数十秒も持ってられない。
そう言った危険を
遠回りになるとは言えど、ほんの数分しか変わらない。まずはこの子を、俺の家まで連れて行くことにしよう。
「ほら、ゆっくりでいいからね」
「……」
そう言って、その子を立ち上がらせると、頭の位置がちょうど俺の肩と同じくらいの身長だった。
中学3年……もしくは、高校1年生くらいかな?はたまた、食べ物を全く口にしてないから、身長が伸びて無いだけかもしれないが。
ともかく、ずっと俺の顔を見つめるこの子の、痩せ細い手を優しく握りながら、ゆっくりと我が家へ向い連れて帰るのだった。
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