第4話
美鈴と私は普段恋愛の話はあまりしないのだが、ある冬の日の放課後、珍しく恋話をした。
「遥は好きな人いるの?」
「いや、いないな。」
「え~、本当に~?」
「うん、いない。そういう美鈴は?」
「うち付き合ってる人いるよ。」
「えっ?そうなの?」
「うん。日向と。」
性の多様性については知ってはいたが、私はそういうことに慣れていなかったので、驚き混乱したが、普通の反応を装った。
「いつから?」
「えっと、中一の冬くらいからかな。」
日向から美鈴に告白したらしい。日向と美鈴は中一の時同じクラスで、前期の頃から気が合い、仲が良かったのだそう。私は美鈴と途中まで一緒に下校し、別れた。一人で歩いていると、だんだん嫉妬のような感情が出てきた。私はこの時、やっと自分の気持ちに気づいたのだった。自分がその気持ちを持っていることに対して罪悪感があった。私は嘆いた。初めて恋した人が、初めから他の人のものだったなんて。しかも、友達の。
そのころから日向を意識し始めた私は、日向と上手く接することができなくなっていった。普通に話したいのに、ぎくしゃくしてどうしても変になってしまう。日向ともっと仲良くなりたい、日向に好かれたいと思っている自分が憎かった。美鈴に申し訳なかった。私は自分の気持ちを必死で押さえようとした。自分は日向に嫌われているんだと思い込もうとした。自分は美鈴のようにきれいではなく、心も体も醜い人間だと自分に言い聞かせた。自分の気持ちを忘れようと努めた。しかし日向に会うたびにまた気持ちがよみがえってしまうのだった。
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