第2話

私は絵を描くのが好きで、休み時間だけでなく授業中も先生の眼を盗んで絵を描いていた。私の絵は友達からよくほめられた。美鈴もほめてくれた。私にとって美鈴にほめられるのは特別嬉しかった。

「また絵描いてるの?」

「うん。授業中もずっと描いてた。」

「授業ちゃんと聞け(笑)。見せて。」

美鈴が私の描き途中の絵をとりあげた。三つ斜め前に座っている日向の後姿を描いた鉛筆画だった。

「へぇ、日向じゃん!うま!」

「ちょっと、声でかいって。てか勝手に見ないでよ。」

と言いながら絵を取り返し、日向の方を見る。幸い、日向は男子の友達と話していて、こちらには気づいていないようだった。ほっと胸の中で溜息をついた。私はこの時自分の気持ちにまだ気付いていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る