第11話 目覚め
「ん…あぁ…?」
突然目の覚めたユリスは微睡の中、周囲を手で探る。
自分がいる場所が任務完了後に入れられた医療ポッドの中だと分かると、扉を開き中から出ようとした。
しかし何かが引っかかってなかなか開かない扉に苦戦し、完全に意識が覚醒した後も暫く格闘を続けて漸く開いた。
「こいつこんなに建付け悪かったか?…にしても何で電気点いてないんだ?」
基本点けっ放しにしておく艦内灯が消えている事を不審に思いながら唯一の明かりである医療ポッドのコントロールパネルに目をやる。
コントロールパネルには、コールドスリープが強制的に中断された事を示すメッセージが表示されていた。
「コールドスリープ?なんでそんなモンが起動して―――」
医療ポッドがコールドスリープモードになっていた事に疑問を感じたユリスだったが、その下に更にアラームメッセージが表示されている事に気付く。
「は…?……冗談、だろ?」
それを見たユリスは酷く狼狽し、冷汗が頬を伝う。
メッセージに書かれていたのは、医療ポッドの部品が耐用年数を過ぎた事を報せる文字列だった。
人類は地球から巣立ち宇宙へと生存圏を広げていくにあたって、あらゆる機械や兵器に対してある物を求めるようになった。
それは、より長く使える耐久性と耐用性の高さである。
宇宙での物流関連に多くの問題を抱えていた彼らは、補給が滞っていても安定した活動が出来る様に捨てずに済む製品を作ろうとした。
長い研究の果てに生まれた数々の素材はその圧倒的耐用年数の長さから、多くの機械や兵器に用いられてきた。
そしてコールドスリープ装置はその特性上、更に高い耐用性を求められるので必然的に耐用年数も長かった。
ユリスが目覚めた医療ポッドの耐用年数はと言えば………。
「俺は、何年眠ってたんだ……」
途中で何の故障やトラブルも起きなければ、カタログスペック上コールドスリープが起動してから1000年間の使用に耐える。
なので、この経年劣化による部品交換のアラームも1000年経たなければ表示されないようになっていた。
つまり、ユリスはあの艦隊決戦の時から1000年も眠っていた事になる。
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「重力がある………どこかの惑星に降りたのか?」
電灯が消え、真っ暗な艦内を歩き回るユリス。
初めて惑星の地上に降り立った事に興奮している余裕がある筈も無く、彼が急いで向かった先は艦橋。
特に艦橋で何か特別な事が出来るという訳でもないが、嘗て自分が父親と呼んだ男がいつもいたその場所へと彼の足が自然と動き出していた。
「お、おーい!誰かいないのか!」
開いたままの自動ドアを通り艦橋に入ったユリスだったがやはりと言うべきか、そこには誰もいなかった。
察しはついていたが、誰もいないことに落胆しつつ艦橋の中を見回る。
人が誰もいないのは勿論だが、それ以外にも不可解な点があった。
「この艦…沈められた訳じゃねえのか?」
誰もいないのでマックス・ハスが損傷を受けて全員退艦した物かと最初は思っていたが、それにしては艦内は綺麗すぎる。
何も変わらず、まるで人間だけがいなくなったかのような様子だった。
明らかに不自然な艦内の様子に首を傾げつつも、考えても無駄だと悟り艦橋のコントロールパネルの前に立つ。
「まず主電源を……っと。こうだったっけか」
ユリスは過去にマックス・ハスの始動手順をデイヴィットに見せてもらった事がある。
その時の完全な見様見真似で落とされた主電源を回復しようと試みていた。
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「何か変な音しない?」
遺跡の周りを散策している中、最も早く違和感に気付いたのは眼鏡を掛けた少年、「レスタ・ウェフォード」だった。
レスタの声に4人は立ち止まり、耳を澄ませる。
「あっホントだ、確かに何か聞こえるな」
「もしかして遺跡の中から?」
単眼の少女、「クティーア・ロイヴィッツ」が遺跡の外壁に耳を当てると確かに中からその音は僅かだが聞こえていた。
しかもそれは徐々に大きくなっていると4人は気付いた。
今までの遺跡でこのような現象が起きた事は一度たりとも無い。
「な、なんかヤバくねえか!?」
小柄の少年、「デーニル・タグリスフ」がそう叫びながら後ずさる。
他の3人も危険だと判断し遺跡から距離を取る。
甲高い音を周囲に響かせる巨大な鉄塊を恐れ、彼らは更に距離を取るべく走った。
遺跡は音の次に遂に地響きまで起こし始め、轟音と共に周囲の地面が揺らいだ。
「何なんだよ一体!?」
「遺跡が動き出すなんて、そんな!?」
彼らが警戒する中、遺跡は動き出した。
自らを包んでいた土を跳ね除け、巨大な扉の様な物が開いた。
「あれは……遺跡の門?」
遺跡の正体は誰も知らない。
先祖達が建築した古の神々を崇める為の儀式の場という者もいれば、異星人が齎した物、或いは古代文明が遺した物などという者もいる。
少なくとも彼らと彼らが知る人物の中で、遺跡が何なのかを断言できる者はいなかった。
だから、その中に何が入っているのかなど彼らが知っている筈も無かった。
マン オブ ザ ミレニアム COTOKITI @COTOKITI
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