第13話 想い

「藍李と出かけるの2回目だな」

「あ、うん…そうだね…」

「あの時は、もう俺の事、好きだったんだろう?」



ギクッ



「…まあ…」


「藍李って顔に出るから分かり易いよな?隠すに隠せないってやつ?」


「し、仕方ないじゃん!一応、隠してたつもりでいたんだけど…」





あなたは本当はすごく辛いのに


一人が良かったのかもしれない


一緒にいていい?


なんて・・・ごめん…ね…




だけど……



どんなにあなたに


突き離されても


私はあなたの傍にいる


あなたの傍に


私をいさせて下さい……





「…尋渡さん…」


「ん?何?ていうか、俺は藍李って呼んでるのに、さん付け?別に良いのに。二人きりの時くらい、恋人気分味わったら?」


「…まだ…私の彼氏じゃないから。義理妹だから…尋渡さんは、まだ、お姉ちゃんの旦那さん」


「…たった一枚の…紙切れだけのね…」


「えっ…?尋渡さん…」




《やっぱり…ショック大きいよね…》




「どれだけ体の関係とかあっても、結局…一枚の紙切れだし」


「…尋渡さん…」


「もらう時、緊張して、ドキドキして…名前書く時もスッゲードキドキで…でも…所詮、一枚の紙切れ」


「だけど…一枚の紙切れでも、女の人にとっては、とても嬉しいんだよ。だって…自分の苗字が変わるんだよ」



「………………」




「…ごめん…尋渡…尋渡は辛いのに…やっぱり一人が良かった…よね…?でも…尋渡が辛いなら私も辛いんだよ…」



「えっ?」



「二人のラブラブっぷりは、いつも目の当たりにしてきたから…嫉妬して…すっごい嫌で嫌で仕方がなくて…あー…どうして私、お姉ちゃんの旦那さんの事、好きになったんだろうって……」



「…藍李ちゃん…」



「…それなのに…あんな事あって…すっごい複雑で…でも…一番辛いのは…尋渡さんだよね?今の尋渡さん見てると私も辛い…」





車を脇に停める。



「藍李ちゃん…一目惚れってあると思う?」

「えっ…?それは…私が…そうだったし…」


「…そうだったんだ…じゃあ…初めて会った時から…ずっと…?気のせいかと思っていたけど……」


「…でも…結局…結ばれない…。運命のイタズラだよね…それより…今後、離婚とか考えてないよね…?」




「どうかな…?」

「…尋渡さんが…いなくなるなんて嫌だからね!」

「…藍李ちゃん…」

「…ごめん…私の…わがままだよね…」



「…アイツも…友矢に一目惚れしてたんだって…だけど…自分に言い聞かせて毎日過ごしていたみたいだし…何とか結婚まで至るも…あの日、色々な想いが爆発したんだろう?」



「………………」



「それを今後はしないからって…そんなの信じられるわけないっしょ?血の繋がりのない弟でも、兄弟だし、一人の男だ」



「…気が紛れるなら…私の事…抱く?」


「えっ?」




「…なーんて…何言ってんだろう?これじゃ…私もお姉ちゃんと変わらないね」


「好きだったら…関係ない…ってやつ…か?でも…藍李ちゃんには後悔しない人と関係持った方が良い」


「…そうだね…それより!夜のドライブ!早く行こうよ!気晴らしに来たん……」




振り向くと、キスされた。


ドキン…



「藍李ちゃんと早く出逢っていれば…俺は…君を好きになってた…」




ドキン



「…尋渡…さん…」



「…辛かったろ?一緒に住んでて、隣の女性は自分じゃなくて…陽南で。いつも見せつけられて…私だって好きなのに!!って…どうしてもっと早く産まれてなかったんだろうって…ずっと…考えてたんじゃない?」



私は泣きそうになった。





スッと片頬に触れる。



ドキン…




「初めて会った時から、薄々、感じていたけど…気のせいだろうって…思ってた。…だけど…すごく辛そうにしてんの見受けられて…」



「…………………」



「もう悩むな!」




ドキン…




「陽南とは、離婚すると思う。陽南には、友矢がいるから。たった一枚の紙切れでも、籍を入れたままにするわけにはいかないからな」


「やだ!家出て行くの?出て行かないでよ!尋渡さんさん!」


「大丈夫だよ。家庭内別居…ってやつ?また、引っ越しとかするなんて大掛かりな事はしたくないからね」






その後、二人はきちんと話し合い、離婚に至った。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る