第4話 銃声
「ふう着いた」
結衣は隙間に合うようにキューブを嵌めた。
「これで帰れるのかな?」
「疲れた〜」
「じゃあ私が抱っこしてあげるから」
一瞬肩を叩かれた気がした結衣は後ろを向いた。しかし誰もいない。
「どうしたの?」
「…いやなんでもない」
結衣は2人を抱っこした。
「(やっぱ重いなこの2人)」
そう思いながらも、彼女は我慢した。やがてキューブは光った。
「いよいよ帰れる⁉︎」
まだなようだ。急に床や壁が暗くなり、さらには充血した目が映った。そして遠くに出口と思われるワームホールが現れた。
「びっくりした!でも帰れる」
「じゃあチューして」
「え⁉︎ああそういえばそんなこと言ったな」
そう言った直後、銃声が聞こえた。恐る恐る振り向くとそこには。
自分によく似た人がいた。
「⁉︎」
「あれ?結衣が2人?」
奴は銃を3人に撃つ。
ズドンズドン
「きゃあ」
結衣は転んでしまった。
「結衣!」
「逃げて早く!」
「でも結衣h」
「早く!!!!!!」
奈々美と梨華は泣きながらワームホールに入った。
「早く行かなきゃ」
ズドン
カチャ
頬っぺたが冷たい。銃を押しつけられているらしい。斜め上には不敵な笑を浮かべた奴がいた。
ルルル、ルルル
結衣の電話が鳴った。奴は携帯を取り上げると、踏み潰した。
「!」
しばらくこの状態が続いた。いつ撃たれるかわからない結衣はガクガク震えていた。
やがて奴が口を開いた。
「いつまで」
「⁉︎」
「いつまで、いつまでここにいればいいの」
「…え⁉︎」
「いつまでここにいればいいんだと聞いてるんだ」
なんのことだかわからない結衣は恐る恐る聞いた。
「私は何百年もここにいるの。何故かは知らないけど、ずっとここにいるの。こんな殺風景な場所、ずっといるの辛いんだよ。本当に辛いんだよ。んで私はここから抜け出す方法を見つけた。それは、他人の不安と自分の不安を入れ替えて無理やり脱出すること。でもかなり不安にさせないと成功しないの」
どうやら彼女は結衣の不安を自分の不安を入れ替えるために、色々と怖がらせていたらしい。しかし結衣の強靭なメンタルは、不安に打ち勝っていたらしい。
「私だって外に出たい。自由に暮らしたい。だから、お願いだから…」
「……」
「……でもキューブを嵌めればいいんじゃ」
「私だってそうしようとした。でも、なぜか掴めなかった。それにキューブに近づくと逃げるように消える」
「……そうだったのか」
「あの紙を書いた人は私が銃で撃った。その人もかなりメンタルが強靭で、帰られたくなかったから」
「…」
結衣は迷った。ここで不安を入れ替えれば、自分はここに閉じ込められたまま。だがそうしなければ、この人は閉じ込められたまま。結衣は決心した。
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