第17話 古代迷宮 【Side ステーム】
クソッ。
最近、俺を見る学院のヤツらの目が気に食わない。
先日の決闘で、レティシアが卑怯にも助っ人を連れて来ていた。アイツさえいなければ、レティシアは俺のモノになっていたのだ。
「……ステーム様。ぼ……僕達四人だけで大丈夫でしょうか?」
薄暗いダンジョン。この学院敷地内に見つかった古代迷宮は、白狼騎士団の管理下におかれているが、俺たち学生も地下五階までなら、先生の引率があれば自由に出入りが出来る。
地下五階までに出る魔物は、ほとんどが低級モンスターなのだが、無駄に通路がでかい。幅十メートル、高さは二十メートル近くある。
一説によれば、古代魔法人がドラゴンを封印する為に作ったのではないか、なんて話しもある。
松明をかざしながら、従士のウィリーと魔術師のマーク、引率者のアルクマッド先生と共に、地下三階まで降りてきた。
「たかだかダンジョンの三階だ。フロアボスと言ってもたかがしれている」
あの決闘でアルクマッド先生が負けて、俺の評判もガタ落ちだ。俺の面子を取り戻すためにも、ダンジョンの三階、封印された扉に潜む、フロアボスを退治してやる。
「四人? 俺は引率だぞ? お前ら三人だけでやれよな」
「ス、ステ〜ム様ァ」
「せ、先生、可愛い生徒に助力しようとは思わないのですか!?」
「フン、今回はカネを貰っていないからな」
この強欲クソ騎士め。先日も負けたくせにカネだけは取りやがって!
「ほら、着いたぞガキども」
三階の最奥にある封印された扉。鎖で縛られ、封印がされている。
この部屋は白狼騎士団により立ち入り禁止とされ、四階に続く階段は別にあり、この部屋は俺たち学生はスルーしていた。
しかし、あの白狼騎士団が封印した部屋だ。フロアボス以外にも、何か秘密があるに違いない。それを俺が知り、皆に伝えれば、俺の株も急上昇間違いなしだ。
「先生、封印を……鎖を切ります」
流石の俺も小刻みに手が震えている。大丈夫だ。たいした敵じゃない。
俺はミスリルで出来た魔法の剣を一閃し、封印の鎖を切断した。
部屋に入る。この部屋は幅五十メートルぐらいあり、部屋の床面全体に魔法文字が書かれている。見た事もない魔法文字だ。
そして――――
「あれがフロアモンスターだって?」
「ステーム様、最弱モンスターのゴブリンですよ!」
無駄に広い部屋の中央にはゴブリンが一匹。
「アハハ、白狼騎士団はあんなヤツにビビってたのか? ヨシ、俺が一撃で始末してやろう」
俺は駆け足でゴブリンに接近し、剣を振りかぶり――――。
「ま、待て! ソイツを殺すな!」
――――振り下ろした。ゴブリンの首が宙を舞う。アルクマッド先生の声は耳に届いたが、ゴブリン一匹程度に何を恐れる事があるのだろか。
「バカ野郎ッ! この魔法陣は古代魔法語だ。あのゴブリンには何か意味が……」
首の無いゴブリンの体が倒れ、血が流れ出す。流れ出た紫色の血は魔法文字に吸い込まれていき、魔法文字が光りだす。その魔法文字から床全体の魔法文字へと光は広がった。
「せ、先生、これは!?」
「トラップだ! ちくしょう! 逃げるぞガキどもッ!」
「ス、ステーム様、あ、足元!」
ウィリーの声を聞くまでもなく、異変に気が付いた。古代魔法文字が丸い魔法陣を作り、俺の周囲が青白く輝き出した。
俺は慌てて魔法陣から飛び出る。
そして魔法陣から現れたの巨大な――。
「あ、悪魔……」
俺はあまりの恐怖に尻もちをつく。下半身が生暖かく濡れ始めたが、視線は悪魔から離れられない。
体長は十メートルを超え、野獣の様な顔に、黒いコウモリの翼。多数の尖った長い歯が剥き出しの口が開き、赤く輝き出した。
「た、たす……け…………」
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