第16話 デート 【Side レティシア】

 見てる、見てる、すれ違う女の子達がライを見てる。やっぱりライはカッコいいよね!腕なんか組んじゃったりして~、えい!


 腕組みしたら仏頂面のライが不思議そうな顔をしている。 


 強くて、カッコよくて、優しくて、私しか見ていない(私しか友達がいないって事は置いといて!)、朴念仁だけど、そこもライの魅力だよね!



「エヘヘ~」


「どうした? 何か楽しい事でもあったか?」


「何でもないよ~」



 帝都なら知り合いもいないから少しくらいはいいよね!


 可愛いブティックに入ると女の子達がみんなライを見ている。今日のライは青狼騎士団の制服を着ているから、目立つ目立つ。


 シルヴィス様はライを青狼騎士団に入れたいみたいだけど、ライはどう思っているのかな? ……いや、何も考えてないか、ライだし。



「ねぇライ、この服どうかな?」



 私が普段は着ないような、短いスカートのワンピースをライに見せてみる。



「そうだな」


「ねぇ、ねぇ、こっちの服は?」



 フリルが沢山ついた可愛いめの服をライに見せてみる。



「そうだな」



 も〜う! またいつもの『そうだな』だよ! でも、ま、いっか。楽しいし! 凄く楽しいから!



「これが似合いそうだな」


「えっ」



 ライが手にしているのは、薄い緑の柄が付いた白いブラウス。ライは緑色が好きなのかな。


 ラ、ライがあたしの服を選んでくれた……。



「どうした? 顔が赤いぞ?」


「え、あ、うん! 買う! この服買う!」


「そうか」



 やったー! 嬉しい嬉しい、超嬉しいー!


 私は速攻でライが選んでくれた服を買った。


 ブティックを出て公園に行く。広場には元気に遊ぶ子供達、ベンチには楽しく会話をしている恋人達の姿……。



「ねぇライ、ちょっとベンチに座ろうか」


「何故だ?」



 な、何でいつもの『そうだな』じゃ無いのよッ!



「つ、疲れちゃったかな? かな?」


「そうか」



 エヘヘ~。ライと並んでベンチに座れた~! 学院のベンチに座る恋人達が羨ましかった。あたしもいつかって思ってた……。願いが叶ったよ~。


 あたしは取り留めない話しをずっとしていた。ライは相変わらず相槌を打つだけだ。でも楽しくてドンドン言葉が出てくる。


 ライの事も少し聞きたいんだけど、理事長からはその時は覚悟が必要だよと言われた……。ライの過去に何か有るのかな……。今はまだ怖くて聞けない……。


 ライがトイレの為に席を立った。あ~幸せだ~。今まで男の子と付き合った事はなかった。私の周りにいた男の子達があたしに向ける目はあたしの顔だけを見ている。


 確かに、確かにあたしだって顔は気になるよ。でも、それだけじゃ寂しすぎる。


 ラ、ライは顔はいいよ。うん、顔はいい。でも、それだけじゃない。


 ライは女の子には優しいんだよね。ライは女の子に興味がない感じだけど、それでもセレナを助けた時も、何も言わずに協力してくれた。


 ……ライは、ライはあたしの事をどう思っているのかな……。



「ねえ、キミぃ、一人ぃ?」



 ベンチに一人で座っていたあたしに、チャラそうな男二人が話しかけてきた。


 何よ、コイツら?


 あたしは、キッとそいつらを睨んだ。



「おお! この子、めちゃめちゃ可愛い!」


「すっげえ美少女、俺の彼女確定じゃね」


「バッカ、ぜってえ、俺の彼女だよ」



 ああ、コイツら物凄いおバカだわ。



「こんな所じゃさァ、ナニも出来ないからホテル行こうぜ」



 しかも、頭の中はお花畑だ。取り敢えず蹴り飛ばしとくか。


 あたしはベンチから立ち上がり、チャラい男二人を睨むが、お花畑の二人はそれにも気が付かずに「んじゃ、合意って事でホテルに行こうぜ」と、あたしに手を伸ばしてきた。


 よし、殺そう!



「イテテテテテテテテテッッッ!!」



 あっ、ライだ!


 チャラい男があたしに伸ばした手を握り、ライがあたしを助けてくれた!



「お前ら、誰だ?」


「イテぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」


「なんだ、テメェはぁ、あ〜ンッ!」



 腕を掴まれていない方の男が、ライに睨みを利かせている。



「ライ〜、怖かったよぉ」



 あたしはライに駆け寄り、広い背中に隠れた。テヘ。


 ライが腕を掴んでいた男をほうり投げ、睨みを利かすチャラを睨んだ。



「テメェ、その子の何なんだよ!」



 ラ、ライはあたしの……何?



「テメェ彼氏かァ? 彼氏でもなァ、邪魔すんじゃねえよ、ゴラァ!」



 あたしの彼氏……。



「彼氏ではないな」



 ですよねェ〜〜〜。



「レティシアは俺の……」



 レティシアは俺の?



「レティシアは俺の大切な人だ」



 大切なひとキタァァァァァ!



「ざけんなよ、ゴラァッッッッ!」



 男が拳を振り上げた。



「ゴフッう!」



 もう一人の、ライに腕を掴まれていた男が、タックルをしてチャラを吹き飛ばした。



「な、何すんだよ」


「バ、バカかテメェは! あの制服を見ろ!」


「制服?」



 言われて男の顔がみるみる青くなっていく。



「せ……青狼騎士団……」



 ライは青狼騎士団員ではないけど、知らない人が見たら騎士団員にしか見えない。



「「す、すいませんでしたぁぁぁぁ」」



 チャラ二人は頭を下げると脱兎の如く走り去っていった。



「大丈夫だったか?」


「うん!!」



 えへへ、『レティシアは俺の大切なひとだ』かぁ。今日の夜は寝れないかも。



「そろそろ帰るか?」


「うん!」



 あたしはライの腕にそっと寄り添ってみた。いつも仏頂面のライの口元が緩んだのは気のせいじゃない。


 あたしはそのまま腕組みをすると、ライは少し頬を赤らめて「帰るぞ」と言った。


えへへ。






【作者より】

 お話は中章が終わりました。お仕事コンテスト用作品は六万字以下の制限があるため、次話から終章となります。

 残りわずかですが、宜しくお願いします。


 もし★評価を頂けるようでしたら、花咲は★1でもめちゃめちゃ嬉しいので、宜しくお願いします。

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