第15話 黒い大剣

「飛び蜥蜴の死骸?」


「ドラゴンの死骸はライオット君の物よ」



 お城から戻り、昨日と同じ部屋でソファーに座りお茶を飲んでいた時にエステルさんから飛び蜥蜴の話しがでた。

 


「死骸処理か。仕方ないな、何処かに埋めるか」


「違うわよライ! ドラゴンの鱗や牙、皮に骨、全てが超高級素材なのよ!」


「そうなのか?」


「「…………」」


「アハハハハハハ、ライオット君はどうしてそんなにおもしろいんだい」





 昨日手合わせした広場には二体の飛び蜥蜴の骸が置かれていた。大きな壺も幾つか有り、どうやら血や臓物が入っているらしい。



「俺にどうしろと? 流石に一人では食いきれないのだが」 


「だから違うわよライ!」


「ライオット君、このドラゴンの死骸は僕の騎士団で買い取らせてくれないか」



 団長が買ってくれるらしい。



「それは助かる」


「代金はまぁボチボチ支払わせてくれ。レッドドラゴンにマザードラゴンの死骸となればかなりの金額だ。一括支払いだと騎士団の予算が無くなってしまうからね」


「それは構わない」


「助かるよ。お金以外で困っている事は有るかい?」



 お金は先程王様から沢山貰えた。勲章も貰えたし、剣も団長がくれた。他に必要な物か……。


「もう一振り剣が欲しいな。先日の様に折れてしまった時に必要だからな」


「アハハハ。僕があげた剣はそうそう折れないと思うけど、まぁ武器庫を見に行こうか」





 青狼騎士団の武器庫には見た事も無い武器が沢山あった。剣、槍、弓、棘の付いた鉄球、鎌に鎖が付いた武器、更には車輪の付いた大型の弓。



「色々有るな」


「好きな物を見繕っていいよ」



 俺はレティシアと二人で武器庫の武器を見回しながら歩く。近くにあった短剣を手に取る。短剣も悪くないな。懐に潜り込まれた時に役に立ちそうだ。



「ライ、もっと良い物にしようよ。せっかく色々有るんだから」


「そうか」



 武器庫を歩いていると床に置かれた黒い大剣が目に留まった。ツーハンドの大剣だ。


 俺は右手で握り持ち上げてみた。なるほど、ずっしりとした重さがある。これなら片手でも両手でも悪くないな。禁断の実を食べてしまってからは重さを殆ど感じていなかったからな。



「悪くないな」


「かっこいいよライ」


「そうか」



 俺は大剣を右手で掲げてみる。黒く妖しい光を放つ大剣は魔法を帯びているのだろうか?



「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~ッッッ!!」」



 団長とエステルさんが大きな声で驚いている。どうしたのだろうか?



「ら、ライオット君。流石の僕も吃驚だよ!」


「ライオット君、それどれだけすると思ってるの!」


「高いのか?」


「重さよ! 重さッ!」


「ああ、ずっしりして良い感じだ」


「……男十人でやっと運んだのよ! 何キロあると思っているの! そ、それを片手でって……」


「だ、大丈夫、ライ?」


「ああ、問題無いな」


「ライオット君、それは高密度アダマンタイトで作ったドワーフの嫌みの名刀だよ。誰も持てまいって笑っていたドワーフ達に見せてあげたいよ」


 俺はこの黒い大剣を貰いうけた。背中に背負うためのホルダーも貰い、大剣を背中に装備する。


「うん! ライ、カッコいいよ。そうだ、団長さんと手合わせしてみたら。昨日は剣が折れちゃったし」


「なるほど」


「い、いや、それは遠慮させて貰うよ。僕は死にたくないからね」 



 団長から断られた。残念だ。学院に戻ったらアルクマッド先生に手合わせをお願いしてみよう。




 午後からは王都の街をレティシアと歩いた。せっかくだから買い物をしたいと言われて二人で街を歩く。



「なあレティシア、俺はやはり何か可笑しいのだろうか。何やら、すれ違う女性がチラチラ俺を見るのだが?」


「き、気にしなくていいよ。ら、ライはほら、前髪も上げて、服もうん、似合ってるよ」


「そうか」



 午後からは、王様と謁見した時に着ていた白いシャツに、青狼騎士団の青いコートのままの姿で街に来てしまった。


 銀の剣と黒の剣は騎士団の館に置いてきている。何か不安だ。せめて鞘だけでもとレティシアに言ったのだが却下された。


 何故だ?






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