第11話 斬ってもいいみたいです

 帝都の城門前までは着いたが、城門を潜る為の列は長蛇となっていた。どうやら先程の飛び蜥蜴の影響らしい。ここに付いて1時間はたつな。


 馬車の中では相乗りの人達が俺にお菓子やらフルーツやら何かと良くしてくれる。人間の食べ物は本当に美味い! ありがたい事だ。



「何やら表が騒がしいな?」


「兄ちゃんがドラゴンをやっつけた話しが広がってんだよ」


「そうか」


「『そうか 』じゃないわよライ! 周りを囲まれて動けなくなっちゃてるわよ!」


 レティシアが馬車の窓から外を見ているので俺も見てみた。確かに馬車は人で囲まれている。



「何でだ?」


「みんなドラゴンスレイヤーを見たいんですよ」



 相乗りの女性がそう言うが



「……? ドラゴンスレイヤーってなんだ?」


「ライの事だよ。あなたは竜殺しなのよ」


「竜殺し? 人殺しみたいなモノか? やはり飛び蜥蜴を殺したのは不味かったみたいだな」


「違うわよッ! 全然違うわよッ! 英雄よッ! え・い・ゆ・うッ! 何で犯罪者になっちゃうのよッ!」


「そうなのか?」


「「「………………」」」





 しばらくして列が動くようになり、馬車を取り囲んでいた人々もいなくなった。しかしまだまだ列は長い。そして誰かが馬車の戸を叩く音がした。



「こちらにレティシアは乗っていますか?」



 女性の声だ。俺達が窓から外を覗くと青い鎧を着た女性がいた。話しに聞いた騎士の姿に似ている。



「お、お姉ちゃ……お姉様!」


「やっと会えたわ」



 レティシアは馬車を降りるとお姉さんと何やら話しをしていた。どうやら軍用の門から王都に入れて貰えるらしい。


 馬車は列を離れお姉さんの騎乗した馬についていく。しかし途中で馬車が止まった。外も大分騒がしいな?



「ド、ドラゴンだ!」



 馬車を操っていた男が馬車の扉を開けて騒ぎ立てる。全員が馬車を降りて男が見ている空を見上げた。



「ば、馬鹿な……マ、マザードラゴンだと……」



 レティシアのお姉さんも騎乗で空を見上げ、帝都上空を飛ぶ巨大な赤い飛び蜥蜴を見て呟いた。


 先程の飛び蜥蜴の十倍近くデカい。あんなにデカい飛び蜥蜴は初めて見る。


 帝都の壁から少し離れた丘から光るモノが巨大な飛び蜥蜴に向かって飛び交っているが、余りダメージがいってない感じだな。



「お、帝都が壊滅する……」



 レティシアのお姉さんは顔が真っ青だが大丈夫だろうか?



「アレも斬った方がいいのか?」


「き、斬れるの!?」



 俺の問いにレティシアが驚いている。どうやら斬ってもいいみたいだな。


 相手は先程よりも大きい飛び蜥蜴だ。俺は先程よりも強く剣気を溜める。


 更に風魔法のアラシを練り込む。コロボックルは生まれながらに植物魔法と風魔法が使える。俺は植物魔法は苦手だが、風魔法は攻撃にも使えるので程々には修練した。



「烈風剣・バーストエッジッ!!」



 俺は大気を幾重にも切り裂く閃擊を飛ばす。


 烈風剣がアラシを纏い巨大な飛び蜥蜴に命中し無数に斬り刻む。


 更には遙か遠くの雲も無数に斬り刻まれている。


 能力百倍以上の効果は風魔法の嵐にも影響しているようだ。



「なるほど。力加減が難しいな」


「「「………………」」」


「どうした? やはり不味かったのか?」



 隣のレティシアも、相乗りの人達も、騎乗のレティシアのお姉さんも大きく口を開けて、飛び蜥蜴の肉片が落ちていく空を眺めていた。


 やはり斬り刻んだのは不味かったようだな。


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