第14話
私は次の日からロボットを会社に持って行かないようにした。また遠隔操作でも使わないようにした。係長は私に多めの仕事渡した。
「○○、今日は仕事が滞っているね」
「何か問題が生じたら伝えてくれ」
同一時間労働と言って未処理書類を机の上に置いて行った。
結局私は会社に残るようになったが、残業代は払われずに、定時退勤扱いにされた。
「残業が必要な場合は事前に相談が必要だ。残り分を他に分けることが基本だから、残業は発生しない」
などの言葉が飛んできた。一週間もすると耐えられなくなって、ロボット処理を用いるようになった。すぐに係長が現れさらに仕事を依頼してきた。結局残業は部署全体では減少した。仕事中に机を離れ飲み物片手に談笑する社員が増えっていった。最終的には部署の仕事はほとんどロボットが行っていた。私はそんな生活を続けていると1カ月もすると疲れてしまった。17時以降は分身ロボットに変わって帰ることにした。トイレで交代した。また小説のアイデアを練る時間を取られることが何より苦痛だった。ロボットが問題視されたらその時対処すればいいと思った。
そんなある日自宅の最寄り駅を通っていると店の女性に会った。
「自宅はこの辺ですか?」
と彼女から尋ねてきた。私は住所を答えると、
「私の家も近くです」
と笑いながら言った。時間があったら一杯飲みませんかと尋ねると彼女は同意して一緒についてきた。酒を飲みながらお互いを紹介しあっていると、話はロボットの話になり最近の会社でのトラブルの話になった。
「みんな知っていると思うよ。今会社で働いているのはロボットであること」
「流石にロボットってわかりますよね」
「しかし正面からそのことを問題視する人間
はいない。自分たちが楽して仕事をするためには知らないふりするのが一番だからね。私も最初は意地張って頑張ったけど1カ月で嫌になった」
「結局残業代は私の懐におそらく来ない。これからは残業をしたい人間達が問題視するかもしれないね。係長は徐々にその人間達に仕事を分配しなくなっているから今後
問題が生じるだろう」
「こいつはロボットだと告発する人間が出てくるであろう。しかしロボットの力を借りて少し働いて定時に帰りたい人間にとってみたら、大きなお世話になって対立がおきるだろう」
そんなことを私が話した。
「大丈夫なの?」
「会社にとって不都合なことは起きてはいない。問題は仕事を奪われた人たちがどうするのか。今からの問題だろう。書類の作成や審査みたいな仕事はコンピュータが最も得意とする仕事だからやがて私の仕事にはこのような波は来ることは分かっていた。博士がその波をこのように面白い形で起こしてくれたということだよ」
「そのうち残業代を払いなさいてことにならないの?」
「その可能性ある。誰かが労基署に駆け込んで未払い問題が出るかもしれない。その時会社が無理やりロボットを捕まえて、ロボットであることを確認する可能性もある。しかし、それは考えたけど難しいだろうね。その時点で人権問題だ。話し合いを申し込まれたときは私が出ていくつもり」
と笑った。ロボットは精巧に出来ていて一見すると人間そのものでしかなかった。それを人間とロボットと区別するこためには、まずは人間である私との話し合いが必要であると考えていた。
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