第12話

 会社との話し合いがあった日、博士から呼ばれて以前依頼していた遠隔操作型ロボットが完成したとのことだった。店に入ると私がそこにいた。一瞬で博士がロボットで私を作ったのだと感づいた。本当に外見上は私であった。誰もロボットと説明されても分からなかった。本当にそっくりなものができるのですねと言うと、博士は笑っていた。これはどの様なことができるのですかと尋ねると、箱型ロボットと同じ仕事ができるとのことだった。私は感心した。何かに使えるといいなと言った。博士は単に私を驚かせるためにこんなことをしたのだろうと思っていた。博士に遠隔操作のできる新しいロボットを尋ねるとこれだと言った。私はアプリのようなものを起動して自宅にあるロボットに操作して仕事ができるものをイメージしていたが、博士の想像は私が自宅にいてロボットが会社にいるというものであった。ロボットに出社させてその間私は家に居るというものであった。遠隔操作の意味が根本的に違っていた。目の前の私を見ると夢のようなものではあるが、ばれたときにどうなるかが不安であった。また私がもう一人いることが不思議だった。確かに目の前にいるのは私であった。これは電気で動いていますかと尋ねると、もちろんとのことであった。空想にふけることはできないが、仕事はできるよとのことであった。ばれないですかと尋ねると、仕事さえすればいいのであれば問題なくこなせるとのことだった。女性店員が入ってきた、「そっくり」といった。このロボットを止めることは可能ですかと尋ねると背中にスイッチがあるとのことだった。値段はいくらですかと尋ねると、更新料程度でそんなにはかからなかった。用事などもしてくれますかと尋ねると、当然とのことだった。会話はできますかと聞くと、会話が一番難しいとのことだった。話題の発想が一番難しいとのことだった。人間は不安な気持ちをもっているが、ロボットはするかしないかしかの判断しかないので、微妙な共感が最もロボットに再現できないものらしい。当然、気持ちの落ち込みもないとのことだった。またサングラスを着けていた。眼だけは再現できないとのことだった。人間は眼で感情を伝えるということがあるがロボットにはないとのことだった。

 パソコンの画面でロボットを操作することができた。ロボットに搭載されたカメラで周りを眺めることができた。ロボットに聞かれると私が答えることもできた。どこかスピーカから聞こえるような感はあった。

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