第8話
次の日書類をセットすると、わざと引き出しにガムテープを着けて部署を出た。部署を出ると後ろから人事部の人間が尾行してきた。食堂にパソコンを置くと、彼も離れたところにパソコンを置いて作業を始めた。昼に私が机に戻るとガムテープは剥がされていた。電車でデータを確認すると、ロボットは部長室に入っていた。彼らも大胆だなと思った。
「この箱は博士の店の物のようです」
「実際にその店に行くと、博士がいてこの箱の写真は自分が開発したものだと認めました。しかし誰に売ったのかどのような機能があるのかは守秘義務だから言えないと言いました」
「この機械に朝から書類をセットしているようです。午後も書類をセットして彼は大抵食堂や展望室で過ごしています。出来上がった書類はメールに添付ファイルで送られてくることもあります。紙媒体のときは、昼と夕方に回ってきます」
私の仕事のパターンが説明されていた。
「で、これで何が問題なのか」
部長が言った。
「彼が離席していることが周りから不満が出ています」
「しかし外勤、異部署間移動や来客が来た時など離席はよくあることだよね」
「しかし度が過ぎています」
「離れる時の報告はあるんだろう」
「はいそれは行うように言いました。あまり好ましいことでないことも伝えています」
「先日は仕事を指定座席で行うようにと就業規則に書かれていますかと返答してきました」
さらに係長が続けた、
「彼の言い分では人の少ない場所の方が仕事がはかどると言っていました。問題があるときは連絡をしてくれと言って聞きませんでした」
部長が困った顔して、
「何が問題かよくわからんね」
「思い切って言いますが私は彼がこの機械を使って仕事をしているのではないかと考えています」
同僚が言った。
「これがそのロボットと言うの?これは幾らぐらいするものなのかな?そんなに仕事が効率よくできるのなら、我が社で買いたいね。何故彼はこれを手に入れたの?彼が開発したのか?」
部長が次々質問を始めた。
「ところで、これはどうやってここに持ってきたの?え、承諾も得ずに勝手に持ってきた。思い切ったことをするね。彼に知れたらどうするの?」
「その時は彼にこれが何なのか聞きます」
係長が答えた。
「そうかそれほどに現場混乱しているんだね。周りの士気が下がるというんだね。しかし仕事に遜色はないんだろう?もう暫く様子を見よう。早くこれを戻してきなさい。その店にもう一度行って、価格交渉できないか探ってくれ。上には私が相談しておく。揉めると難だから穏やかにことにあたるように。写真を取っておこう。これは製品番号みたいなものが無いね。手作りなんだろうね。ロット生産されていないということか」
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