第2話
数十分後、目を覚ますと箱を開け中身を確かめた。札束が何個も何個も確かに入っていた。目の前に札束があるということが夢ではなく、本当に現実であったことが嬉しかった。何度も本物の札束であることを確かめた。偽物ではと考えたが、いつか自動預け払い機で確かめればいいと思い気にしなくなった。
その日は会社に出社した。休んで今後のことを考えようかともしたが、遺失物を警察に届けないことで、横領の罪に問われることの可能性を考えると怖くなった。もし持ち主が現れたときに遺失物探しが始まり、マンションの防犯カメラに映っているであろう、箱をエレベータに押し込む私の姿は、一番疑われることが明白であった。その場合、会社に行かなければならなかったので届けるのが遅れたと言い訳するために、出社してアリバイ作りをしないといけないと考えたのだった。大金と離れるのが辛かったが戸締りを何度も確かめて部屋を出た。
仕事を終えて部屋に帰ると居間の床に箱があり中身を確かめた。大金は確かに存在していた。その時の私は既に警察に届けることを考えてはいなかった。この先どうなろうとこの大金を手放すつもりはなくなっていた。警察に取り調べられる時が来ようとも、隠し通そうと考えていた。小分けにして部屋の外に持ち出し、実家の土地に埋めた。仮に警察が私の部屋に踏み込んできても、お金は存在しないという状況を作りたかった。私は3カ月間何度も埋めた位置に行って、掘り返されていないか確かめた。数回は掘り起こして大金を実際に確かめた。3カ月も過ぎると段々と警戒心や罪悪感が無くなり、事件性があるならとっくに私を取り調べに来るはずだと考え、すっかり居直ってしまい、もう大丈夫だと思ったのだった。
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