横取り

二重一意

第1話

 私は突然大金を手に入れた。散歩のために朝早く外に出ると、マンション前の歩道に大きな箱があった。その中にお金がぎっしりと入っていた。私は大金を見ると興奮したのを覚えている。とっさにその姿を誰かに見られたら困ると考え、すぐにエレベーターに乗って、箱を部屋に運び入れた。もしかすると誰かに見られていたかもしれないが、周りを一度も確認しなかった。少しでも速く部屋の中に箱を運び入れることだけ考えていた。部屋の中に箱を入れてしまうと、様々なことを考えた。誰かに見られていたかもしれないと恐怖を感じた。

「すみません。私のお金です。返してください」と誰かが現れるかもしれないと怯えた。もちろん警察に届けようかとも考えた。しかし落とし主が現れると1割程度が手に入ると考えると、既に膨らんだ欲望が萎んでしまいそうで悲しくなった。警察に届け出て落とし主が現れなかったことを考えると、合法的に私のお金になるのだから嬉しくもなった。こんな大金を落とすならきっと合法的なものではないのではないか、だから誰も名乗り出ないのではないかとさらに考えた。しかし誰かが現れることの可能性も同時に頭をもたげ、私を落胆の中に突き落とした。しかし最終的には目の前の大金が、自分の物になる嬉しさを考えてしまうのだった。私は興奮して箱に添い寝するようして眠った。もう一度目を覚ましてから考えようとした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る