第9話 川上VSマルコ

 後ろ手に手を組んでいた神父姿の男は切り倒された2人の姿と川上を見比べて、大声で笑い出した。

「面白い!まさかこの国で先制攻撃を受けるとは思わなかった!しかもこの二人がこうもあっさり倒されるとは!」

驚きの言葉ではあったが、神父の顔には笑みが浮かんでいた。

「ところで、なぜ我々を攻撃するのかな?」

切り倒された二人の事は気にする風も無く、神父は川上の顔をじっと見据え問いただした。

笑みは崩していない。

「カエサルのものはカエサルに!」

川上はそれだけ答えた。

その言葉を聞いた神父は心の底から愉快そうな笑い声をあげた。

「ははははははっ。

日本人から聖句を聞かされるとは思わなかった。しかも、先制攻撃を受けるとは!」

神父は浮かんでいた笑みを崩し、

「貴様、どこまで知っている?」

白髪の細面の眉が歪み、怒りの表情に変わった。

「さて」

川上はとぼけるようにそれだけ答えた。

神父は一瞬川上の心意を計り兼ねたようだが、すぐにその狂暴さを露にした。

「目には目を、歯には歯を」

その呪いの言葉に続け、切り倒された男たちに向かい

「立て!」

と命じた。

「目には目を、歯には歯を!ですか。

イスラム教の言葉ですか」

川上は笑みを浮かべて神父に答えた。

明らかな挑発の言葉だった。

「てめえ…」

神父は憎々しげな表情を浮かべた。

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