第3話 世間は大騒ぎ

 母によると、朝起きたら、俺が家に居なくて、テレビではダンジョンや行方不明者の情報が流れていて不安だったそうだ。父も勤務先である市役所から非常招集されて、職場に出かけて行ったそうである。さすがに飯縄神社に隣接する市の運動公園にダンジョンができているとなれば、公園緑地整備課にも仕事があるのだろう。


 ニュースサイトでは、ダンジョンの話題で盛り上がっていた。


~2023年4月30日のニュース~


 日本時間で2023年4月29日の未明以降に世界各地で発生しているダンジョンについて続報です。

 4月30日現在、日本国内で確認された物だけで3000個のダンジョンが発見されています。海外でも、米国、中国、インドなどの人口過密地域を中心に推計で30000個以上のダンジョンが見つかっており、詳細がつかめていない状況です。


 日本国内の場合、緑地に直径10-20mの円墳状のものが出現し、その石室の入り口付近に鳥居が建っているという形状が多いようです。石室の内部がダンジョンへの転送ゲートになっていますので決して立ち入らないでください。見かけない円墳を見かけたら警察または各自治体のダンジョン対策室までご連絡ください。海外では、大規模な礼拝堂やモスクなどの宗教施設の内部がダンジョンへの転送ゲートになっていることもありますので、ご注意願います。


 同時多発大量行方不明事件についての続報です。都市圏の駅や公共交通機関で乗客や乗務員が行方不明となり、無人になったバスや列車による事故が多発しています。日本国内だけでも、既に少なくとも500万人以上の行方不明者が発生しており、政府は非常事態として自宅待機を勧告しています。JR各社や、私鉄各社、各バス会社等で運航の自粛が発表されています。


 同時多発大量行方不明事件で行方不明になった人の一部がダンジョンで発見されました。ダンジョン内部を探索せよという世論が盛り上がっていますが、捜索は進んでおりません。政府は何をしているのでしょうか!


 都内ではダンジョン内を探索するために集まった警察官を中心とした50人のグループがダンジョンに入る前に行方不明になる事件が発生しました。食料品を買おうとスーパーやコンビニに集まっていた買い物客と店員が行方不明になった事例もあります。ある程度以上の密な集団ができると行方不明が発生する傾向が見えてきています。外出を自粛しましょう。


 自衛隊壊滅。同時多発大量行方不明事件に関連して、各地の自衛隊基地で自衛隊の隊員や関連職員が一斉に行方不明になっています。一部の隊員は最寄りのダンジョン内で発見されていますが、大半が行方不明のままです。


 ダンジョン内で多数の意識不明者を発見。一部は低体温症で死亡。ダンジョンからの生還者によると、ダンジョン内で発生しているfurry-ball(毛玉)に襲撃されると体力が低下するとの証言があり、furry-ballに襲撃された結果ではないかと推測されています。


 政府は、ダンジョンの影響を鑑みて5月1日と2日は学校を一斉休校とし自宅待機を行い、ゴールデンウィーク明け以降は状況を見ながらリモート授業を推進することになりました。この処置は、新型コロナの騒動以来の処置になります。


~2023年5月1日~

 ダンジョンからの生還者が相継ぐ。自力で出口にたどり着いた人を中心にダンジョンからの生還が相次いでいます。一方で、意識不明や死亡している状態での発見も増えています。4月30日現在、日本国内では、生還者約500万人うち200万人が意識不明の重体、行方不明者495万人、死者5万人が確認されています。


 葬儀場の危機。一度に大量の死者が発生したことから、葬儀場のキャパシティが各地でパンクしています。一部の地域では、2週間待ちの地域まで発生して関係者の頭を悩ませています。


 通販や出前で食料品を確保しようとした人が注文を殺到させたため、サービスが停止したり、配送に大規模な遅れが発生したりしています。各地で食料品の買い占めも発生している模様です。


 4月29日以降に世界各地の貧民街や難民街で大規模な行方不明が発生。一部では無人の廃墟になった街も確認されている。人口が過密な地域であるため、未発見のダンジョンに転移されたのではないかと憶測を呼んでいます。もともと住民の数が把握しきれていない地域もあり、十分な確認ができていない模様です。


 韓国からの情報です。4月30日に、自分の土地に鳥居があるダンジョンが存在しているのが気に入らない土地所有者が土木機械でダンジョンを破壊する映像をネット配信している最中に行方不明になりました。配信されていた映像によると、鳥居を破壊して石室の入り口を埋めようとしたところで振動が発生し、より大規模なものに再生されている様子が写されていました。直後にダンジョンから半径20km以内にいた住民全てが行方不明になっています。これを受けて韓国政府はダンジョンを破壊しないように広報を繰り返しています。


~2023年5月2日~

 未発見の行方不明者が多い地域を中心に、ダンジョンの第2層以降の探索が開始されました。探索の結果として、意識不明や死亡している状態での発見が増えています。5月1日現在、日本国内では、生還者約600万人うち200万人が意識不明の重体、行方不明者390万人、死者10万人が確認されています。


~2023年5月3日~

 5月1日以降に新たな大量行方不明が発生していないことが確認されました。ダンジョンでの行方不明者の捜索が加速されています。ダンジョン内の集積地に集めていた亡骸が死後24時間で消滅する現象も確認されています。行方不明になってから72時間以上経っている人が多く、新たな生存者や遺体の発見の可能性は絶望視されています。5月2日現在、日本国内では、生還者約620万人、行方不明者375万人、死者15万人が確認されています。


~2023年5月4日~

 一部の地域のダンジョンで、5月2日以降に新たな行方不明者が発見されないことから、5月3日付けで捜索の打ち切りを行うところが出てきました。5月3日現在、日本国内では、行方不明者370万人、死者20万人が確認されています。


 ダンジョンの第2層以降で高純度の貴金属やレアメタルの団塊がドロップ。ダンジョンの第2層以降に現れるモンスターの一部が直径10mm-30mmの高純度の貴金属やレアメタルの団塊を残すことが確認されました。早くもゴールドラッシュに期待する人たちもいるようです。


~2023年5月5日~

 捜索の打ち切りを行ったダンジョンの周辺で小規模な同時多発行方不明が新規に発生していることが確認されました。関係者からは、行方不明者の探索が継続しているダンジョンの周辺では発生していないことから、ダンジョン内に一定以上の人間が存在していないとダンジョンが人間を捕獲することで行方不明が発生するのではないかとの推測が出されています。5月4日現在、日本国内では、発見後に亡くなった人を含めて、死者と行方不明者の合計で400万人に上っています。


 ダンジョンの第3層以降で高熱原体として利用可能な物質を発見。高純度の貴金属やレアメタルの団塊が得られることが報道されたことが記憶に新しいところですが、解析不能なため魔石と呼ばれていたオーブを水と反応させることで高熱原体として使えることが判明しました。今後の研究が期待されます。


~2023年5月6日~

 産業界から、ダンジョン内にある土地の有効活用論議に向けた検討会が始まった。ダンジョンの第1層には、furry-ball(毛玉)ぐらいしか害獣が存在せず、物理障壁で排除することが可能であることから、土地の有効活用を政府に提言しようというものです。一方で、ダンジョンは未知の存在で、時期尚早であると指摘する専門家もいます。


~2023年5月7日~

 日本政府は、ダンジョン内での一定規模以上の探索を継続することなどを条件に、自宅待機勧告を解除することを検討し始めたことを公表しました。ただし、過密状態を避けるため、多数の人が集まる大規模なイベントや、公共交通機関の運行は、当分の間停止されます。

 ダンジョンの探索に予備役自衛官を活用する方針が検討開始されました。地域によっては、民間の警備会社によるダンジョンの探索も検討されています。


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