第34話
「え!?!?」
恥ずかしいのでどうにかその話題だけはやめてもらおうと交渉をしていたら、背後から京さんが現れた。
「どうした?そんな幽霊でも見たような顔をして」
「どうしてここに居るの?」
「弟が居るところに私ありだ」
「説明になってないけど」
「私が教えたんだ。今日みんなで集まるから来ませんか?って」
京さんの代わりに説明してくれたのは涼香。
「いつの間に連絡先を交換したのさ」
クラスメイトと義姉だからって理由でお互いに顔と名前は教えていたけど、俺の目の前では京さんと涼香が直接会ったことは一度も無いんですよ。
「知らないのも無理はない。私が学校に向かい、帰宅途中の涼香に声を掛けたんだからな」
「え、どうして?」
「やはり姉としてクラスメイトに挨拶をしておくべきだと思ってな」
「そうなんだ……」
京さんなら確かにそのくらい言いかねないが、まさかそのために行動するとは思わなかった。
「実は言ってなかったけど、休みの日に一緒にご飯に行ったりしてるんだよ。先週の土曜日とか一緒にパスタを食べに行ったんだ!」
「そうなんだ」
しかも仲良くしているし……
姉同士の仲が良いのは素晴らしいことだけど、これは弟として知っておきたかった。少し悔しいです。
「というわけで弟の姉をやっている春川京だ。よろしくな」
「渚君の学校の生徒会副会長をやっている志田麗華です。よろしくお願いします」
「あなたが義姉。この子が所属する文芸部の夏目美玖よ。よろしく」
「ああ、二人ともよろしくな!!!」
挨拶を受けた京さんは、嬉しそうに二人の手を取りぶんぶんと振り回した。
常にマイペースな夏目先輩がいつも通りなのに対して、志田先輩は不自然な程に緊張しているように見える。
「志田先輩、どうかしたんですか?」
現状の情報だと特に緊張するような要素は無いように見えるけれど。まさか、俺をこき使っていることを怒られるとか思っているのだろうか。
「皆知らないのか?この人の事を?」
「ただの義姉ですよね?色々とおかしい所はありますけど」
「後輩君も知らないのか。この人は皆が知っているような日本の有名企業の株をそれぞれ大体4割くらい保有している事で有名な超資産家だぞ」
俺が事情を聴くと、志田先輩はそう答えた。
「姉さん、裏でそんなことやってるの?」
ただお金を大量に所持しているだけって聞いていたんだけど。
「ああ。もし弟が大学を出て就職したいって言ったときに望む企業に就職できるようにある程度の影響力を持っていたかったからな」
「そうなんだ。気持ちはありがたいけどやめてね。自分の力で入りたいから」
堂々とコネ入社をすることを公言しないでください。ちゃんと入りたい会社には自力で就職するので。
「前々から何故だろうと思っていたのですが、どうして全て4割で5割を超える企業が無いのですか?圧力をかけたいのならそちらの方がよろしいのでは?」
志田先輩はそんなことを聞いた。
「5割持ってしまったら私がその会社を持っていることになってしまうからだな。私は別に会社を持って会社をどうこうしたいわけではないからな」
「そうだったんですね」
「だから安心すると良い。企業の方針とかを変更するような真似は一切しない」
と京さんが続けて言うと、志田先輩は何故かほっとした表情をしていた。
どういうことだ?
志田先輩の家はお金持ちだけれど、たびたび出てくる話の水準的に親は皆が知っているような日本の有名企業の社長ではないはずだけど。
まあここら辺を探るのはやめておこう。今後の関係に関わるかもしれないしね。
という話はさておき、遂にこれで俺を取り巻くお姉さんの内5人が一堂に会したことになる。
残りのお姉さんは他のお姉さんと遭遇することは基本的にありえないため、実質的に全員と言えるだろう。
そう考えるとかなりの感動イベントだな。某アイドルグループで神扱いされている7人が引退後に全員その場に揃ったみたいな感動だ。
そのアイドルグループの事はあまり知らないけれど。
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