第34話 居候生活の開始
アオちゃんのお屋敷で、ゆったり生活しながらの日々は至極順調だ。
アーリィママも最初は仕事を変える事に難色を示していたが、それよりも生活環境が断然良くなる事の方を優先したようだ。
まあ準原始人生活よりかは、他のどこでもが楽園なんだけどね。
そんな感じで、ゆるふわ生活を始めたつもりだったんだけど、アオちゃんのリハビリに付き合っていたら、幼児虐待を疑われるレベルでの過酷な運動を強いられる事に。どうしてこうなった。
まあ言うても幼児レベルだから、端から見ているとただ遊んでいるようにしか見えないのかもしれないが、疲れる事は疲れる。
お陰で、文明衰退の原因をアオちゃんに聞くような元気は到底残らないので、その辺の話し合いは進んでいない。
今日もリハビリ体操をした後に、美味しいお昼ご飯を食べて大変満足でした。
俺は割り当てられた自室でもってお昼寝の時間なんだけど、特に眠くもないので起きている。
今は精神的なストレスとかは無く、頭もスッキリしていて良く回っている状態だ。
ちょうど良いから、ここらで生まれ変わった俺の環境というか状況を解説しておくか。
今の俺ん家の家族構成は、両親と兄と姉が一人ずつ居る。
全員がエルフ人で、父がアーバス二十五歳、母がアーリィ二十三歳、兄がアルフ八歳、姉がアンナ六歳で、俺アイマがもう直ぐ二歳だ。
父と母の仕事は土木工事全般で、重機を使っての道作りなんかを請け負っているみたい。
家のご先祖(まあ俺の事だけど)が、移住者の代表をやっていた関係で移住当初は金回りが良くて、開拓した街なんかの良い場所を押さえる事が出来て、土地の賃貸料だけでも暮らせていけるようになっている。ただし、本家筋だけね。
今生の家は前世の俺から見て孫の世代で分家した家系らしく、起業する為の資金援助くらいなら本家から出して貰えるが、他は特になにも期待出来ないとか。
まあ子孫が増えれば、その全部には支援が出来なくても普通だよな。
そんな感じで末端の家系だった家は、重機の購入を支援して貰えて幸運だった方なんだろう。
家とか家具はボロかったが、食事とかは好き嫌いさえ言わなければ腹一杯食えていたからな。
まあそれが不味くなければ、取り敢えず文句は無かったとは思うんだが。
今の時代は普通の子供は午前は学校に行き、昼の給食を食ってからは家の仕事を手伝ったり、将来就きたい仕事を探したりの自由時間なんだけど、家の兄姉はまだ幼いからもっぱらテレビでアニメを見たり、ゲームをして遊んでる事が多かったな。
ああ。家具とかがボロいのしかないとか言いながら、テレビは有るのかよと思われるかもしれないが、これは公共放送や非常事態の通信を受信する義務があるからで、全家庭に強制的に設置されているから
そうだな。ここはもう少し詳しく説明しておこうかね。
話は俺の前世時代から始まる。
旧コロニーは最初の頃は住人が数える程しか居なかったから、居住可能階層を減らして効率化を優先したよね。
それで使わなくなった階層は色々な事に流用されてた訳なんだけど、そこに存在した有用な物資は、もちろんそのまま捨てちゃうんじゃなくて、分解して回収していたんだ。
物資自体が元々そのつもりで設計されていて、機能単位でブロック化してあって、分解が簡単に出来る仕様だったし。
火星に行ってから電子機器工場を立ち上げて、電化製品を量産出来るようになるまでの繋ぎの対策だと思われる。
それでそれに絡んでなんだけど、高級部品の必要性が低い製品に対しても、分不相応な部品が無闇に組み込まれていたりした。
例えば、電子レンジや冷蔵庫なんかにホログラム投影装置が使われていて、ちょっとしたモニター画面が空中に浮かんで表示されたりしていた。
まあ分かると思うけど、そんなのただの科学技術の無駄遣いだと思うよね。
それが、時代が過ぎれば事情も変わると言うべきか、ホログラム投影装置が各家庭用のテレビや通信装置のモニターに流用されているという事態になっている。
なんか今の状況って、地球人の頃にテレビで見たアフリカの原住民が携帯電話を自由自在に使いこなしてるみたいな感じだ。
ついでに使ってる様子を言っておくと、ホログラム投影装置の画面を白壁の前で表示するようにして使っている。
画面の大きさも自由自在だし、壁さえあればどこへでも移動させられるので使い勝手は良い。
家は貧乏だったので一家に一台しかなくて、使用権を
だがしかし、まだここに来てから一度も見るような暇がなかったんだけどね。
なんか悲しい気持ちになったが、気にせず次に行こう。
現在アーリィママと俺は、家から歩きで半日は掛かる本家のアオちゃんの屋敷に滞在していて、実家の家事とかが出来ていないので、俺の兄姉もこっちへ呼ぼうかと言う話になってきている。
元々は一泊するくらいの予定で、ひ孫の初顔合わせ程度の積もりだったので、長期に家を空ける用意等はしていなかったから色々と準備に大変みたいだ。
まあ、あっちの食事は給食配達業があるから、そこは困ってたりはしないとは思うが。
いや、アーリィママが作るご飯より種類が多くて、その方が喜ばれているかも知れないな。
まあともかく、俺がアオちゃん家に留まる事で、今の家族にもなにかと迷惑を掛ける事になってしまって申し訳なく思ってはいるが、特に後悔とかは感じていない。
それよりも兄達が来る前に、テレビを好きなだけ見ておく方が大事だよな!
家にあるホログラム投影装置よりも機能が多そうな機械を前に、意気込んで電源を入れると、OSの起動画面が空中に表示された。
おおぅ。久し振りに見た画面に感慨もひとしおだったが、ついでに疑問も浮かんできた。
「アレ? テレビの起動画面ってこんな感じじゃなかったよね?
高級品は庶民用のとは規格が違うのかな? 」
などと
「ああ~、そうか。 これってば初期登録もされていない、
気付いてみれば至極当たり前な事態だったけど、これって誰か家事担当の人とかを呼んで、登録作業をして貰わないと駄目な感じかな。
でも今、ここって屋敷の離れっぽい端っこの部屋で、周りに人がいないみたいなんだけど。
それに幼児がフラフラと出歩いているのを見られるのも、後々の言い訳が必要な時に際しても不味いか。
「仕様がない。 ここは俺の前世の認証コードを試してやるか! 」
俺は遊び心で、前世のアイだった頃の個人認証コードを装置に入力してみた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます