第18話 聖母と天使創生

 前話のあらすじ。

 俺とシロちゃんは、生でエッチした。

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 シロちゃんと初めて関係を持ってからは、たまに身体を重ねるようにもなった。


 それもひとえに、シロちゃんが男臭くない【男の娘】だったからに他ならない。

 可愛い顔と細い身体で、狂暴な見た目ではないイチモツじゃなければ、俺の拒絶反応は凄まじい事になっていただろう。

 それに、最初は自分の身体の衝動に戸惑っていたシロちゃんも、俺が行為を喜んでいるのが分かると素直に応じる様になっていった。


 そんな状況がしばらく続いた後、ヤることをヤってれば発生する事態が起こった。

 俺が妊娠したのだ。


 まあ当然な帰結だし、俺よりも前に妊娠している完成体も結構いたので、なにもおかしな事でも無いし、不安とも思っていない。

 まだ少数だが出産経験者もいて、そのデータも十分に揃っているので、同じ処置をすれば俺でもちゃんと母親になれる筈だ。


 あと、唯一俺が希望している事象が一つ有るが、それは出来たら産まれて来るのが娘だったら良いなという事だったりする。

 まあ、今更男女の性別を産み分けられる訳でも無いし、どうやら出来ちゃったのは一発目だったみたいなんで、これも運命なんだろうな。


 神様、良い巡り合わせを何卒お願いします!


 それじゃあと言う事で、出産方法等の詳細を解説して行きますか。


 先ず、現在のコロニーには医者などは存在していない。

 以前人類が支配していた頃には、人数は少ないがいた様だが、当然一緒に火星に降りて行ったからな。


 普通はそんな状況での出産なんか、不安で仕方ないと思うかも知れないが、俺達は特に気にもしていない。

 まあ、俺達自身の命の価値が元々低くて、替えの利く存在だと自分達でも自覚しているし、取り敢えず挑戦してみようと言う前向きで楽観的な精神構造を、強制教育装置で植え付けられているからでもある。


 それで、医者がいない環境での、安全で安定的な出産を模索した結果、余っていた培養槽を有効活用する方法を見つけ出した。


 先ず始めに俺達が作られる過程を説明すると、精子バンクと卵子バンクからそれぞれ抽出された精子と卵子を掛け合わせて発生した素体を、培養槽で完成体に成長させる事で製造している。

 そして、現在は人類に放棄された事から、自身の生息階層を削減して効率的に運用する必要に迫られる事になり、それ以降使用する培養槽の基数も見直しをして、稼働数を減らしてきていた。

 しかし、現状ではまだ解体していない培養槽が多数残されていて、その再資源化をどうしようかと思案している所だった。

 そこで発見考案されたのが、培養槽を使用しての培養液中出産と、産まれた赤ちゃんの一時的な培養槽での保護育成だ。


 皆も、水中出産という言葉を聞いた事が有るかもしれないが、妊婦が水中で出産するという方法が前世でも確立していた。

 その長所は、暖かい水に包まれる事で心が落ち着いて、力を掛けずに自分に合った体勢で出産出来る事なんだが、特に俺達は培養液に長い期間浸かっていた事を覚えているので、更に効果が高まるだろう。


 それに培養液には元々、鎮痛作用の有る薬効成分も含まれているので無痛分娩にもなって、出産時の苦痛を和らげられる効果もある。


 そして、産まれた赤ちゃんなんだけど、はっきり言って俺達には乳児の世話なんかは経験者等も居ないんだから到底無理だろう。

 なので、なんとか固形物が食べられる様な年齢に成長するまで、産まれた直後から培養槽で育成する事にした。

 その方が、乳幼児の突然死や他の病気にもなりにくくなるんじゃないかな。


 まあ、可愛らしい赤ちゃんと触れ合えないのはとっても寂しいけれど、死なせる可能性が下げられるのならば我慢も出来ようものだ。


 取り敢えず妊娠してしまったから、ある期間にわたって指揮が執れなくなるという事を、ケイミィ達副官と身近な者に連絡しておいた。

 でもまだまだ先の事で、その期間も長くて数日だろうけどね。


 それから、お腹が結構大きくなるまで、司令室でのんびり椅子を暖めていたが、その間シロちゃんが甲斐甲斐しくお世話をしてくれていたので、特に問題は起きなかった。


 それよりも俺に遅れる事三ヶ月程で、ケイミィが妊娠したと言ってきた事には結構驚かされた。

 彼奴ってば、仕事が恋人だと言わんばかりの生活を送っていた筈で、そんな子供を作る相手なんてそれまで影も形も無かったと思うんだけど、一体何処で拾って来たんだ?

 まあ、相手の事を隠したいと言うのなら、無理に聞き出そうとも思ってはいないからどうでも良いけどね。


 まさか、俺に対抗する為だけに妊娠したんじゃないよな?

 なんか、怪しいな。

 でも、それも奴のアンドロイド生だからとやかくは言うまい。

 ただ、後悔だけはしないでくれよ。

 そんなの、生まれた子が可哀想になるだろ。


 まあ、俺のそんな心配が取り越し苦労だったなんていうのは、のちにケイミィが息子を猫っ可愛がりしていた事で証明されていたけどね。


 そんな感じで時は過ぎ、俺の腹がパンパンに膨らんで、もう何時破裂してもおかしくない様になって、ようやく産まれる兆候が起きた。


 俺はそれまで、定期的に医療診察装置を使って、子供が順調に育っているかを確かめていたが、男女の性別は敢えて見ないでいたので、どちらであっても良い様な名前を考えていた。

 だから出産を終えて、培養槽から出てきて初めて掛ける言葉は、その名前だと決めている。

 俺は培養槽に足から浸かりながら、早く出てきて名前を呼ばせてねと大きなお腹をさすりながら深く思った。


 出産は直ぐに終わった。


 培養液に浸かって暫くして、鎮痛剤の効果が効いてきたのか痛みが薄らいできて、気持ちもずいぶん落ち着いてきたなぁとぼんやりと思っていたら、なんかお腹がスッキリしたと感じた時には、もう既に赤ちゃんは産まれていた。


 え? あれ? もう産まれたの?! と吃驚して慌て掛けたが、直ぐに鎮静作用のお陰で恐慌をきたさずにすんだ。


 そんな事をしている間に、産まれた赤ちゃんは直ぐ様吸引器に吸われて、隣の成育専用の培養槽に送られる途中で洗浄され、各種観察用のコードを身体中に付けられた後に、培養液のただ中で漂わされていた。


 俺のいる出産用培養槽の中からも、隣の成育用培養槽の様子がモニターに映されて確認出来るんだけど、小さな小さな可愛い俺の赤ちゃんの姿を見たら、急に胸が一杯になって涙が溢れてきたが、それは培養液に混ざって誰にも知られる事はなかった。


 俺は、産後も数日間は培養槽の中で養生しなければならず、じかに赤ちゃんを見ることは出来なかったが、起きてる間はずっとモニターに釘付けで、全然飽きる事は無かった。

 だって、小さい手をニギニギしていたり、腕をブンブン振り回していたり、足でなにかを蹴っていたりと、見ていると凄く面白いんだもん。


 あ、それから性別も判明しました。

 足を上げた時に見えたんだけど、アソコに……チンチンは無かった!


 すなわち! 女の子でーす!


 ワーー! パチパチパチ!






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