第16話 神の姿を模して

 前回、既に約七年が過ぎていると言ったが、俺達の身体もそれなりに成長している。

 まあでも、十七歳の身体なんて言う程大人って感じでもないし、まだまだ成長途中であって欲しい所でもある。


 何処がだって?

 言わずと知れた胸部装甲の事だよ!


 元男の俺が、なんでそこまで胸の成長に拘るのかと不思議に思われるかも知れんが、これには深い理由が有るんだ。

 それは……事ある毎に、ケイミィが自分の胸を自慢してくるからだ!


 俺も十七歳になって、それなりに出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んで、スタイル的には十分育っているとは思うんだけど、ケイミィはそのレベルが違うんだよ!


 奴の胸にはメロンが二つ付いていて、腰は何処に腸が詰まっているんだという様な細さで、尻は逆に人を撥ね飛ばす気が満々な程肉が付いている。

 一体、何処のマダムかという貫禄なんだけれども、データ上は俺と同じで十七歳なんだよな。


 だから俺は、これもデザインされた結果なんだと思うことにしている。

 そうでなきゃ、やってられるか!


 当のケイミィは、結果が全てだという考え方なもんだから、使える武器は全て使って俺に対抗して来る。

 いや、別に何かを争っているという訳でもないので、気にしなければどうという事も無いのだろうけれど、奴のあの勝ち誇った目を見ていると無性に悔しく感じてしまうんだよ!


 これが、ヒラのアンドロイドが相手なら多分受け流して置けたんだろうけれど、相手は俺が認めて副官に任命したケイミィだ。

 もし俺が転生者じゃ無かったとしたら、奴がここを仕切っていたとしても、少しもおかしくなかっただろう人材だ。

 だからだろうか、ケイミィに対して異常に対抗意識を燃やしてしまうのは。


 まあ、何にしろ二人はお互いを意識し有っていて、日夜切磋琢磨しているんだから、特に言うことは無いと思うけども。


 因みに、第参号コロニーを担当している副司令は【ゼシカ】だ。


 彼女は、頭脳の出来はケイミィに次いで優秀だが、身体の成長については語るのも可哀そうになるくらいに育っていない。

 ともすれば、ロールアウトしたばかりの新入りと間違われるくらい、七年前と全然変わっていなくて小さいままだ。

 だけど、彼女自身はそんな事には全く無関心でしれっとしていて、そこの所は俺も見習わなくてならない部分でもある。


 ついでにゼシカの容姿を述べておくと、確認できる範囲では頬と手の甲の一部に黄色の鱗状になった皮膚が見受けられるが、その面積も大したことはなく、化粧の一種と言えなくもない感じだ。

 そして言動は「大丈夫……問題無い……。」がキメ台詞の、まるで【情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース】の様な無口系キャラだったりする。狙ってる?


 ともあれ、七年の月日というものはそれぞれにとって、それなりに価値が有ったり無かったりで、色々と楽しかったり苦労したりもした。

 その色々の内に入るだろう事柄の一つに、男性体の存在がある。


 以前、いずれは男性体を作って自然交配、そして育成していくと言っていたが、あれは嘘だ。

 イヤ、全部がという訳ではないな。

 じゃあどこが嘘かと言えば、それはいずれではなく一年後には取り掛かっていたからだ。


 やっぱり、女性体だけの集団というのは倫理的にと言うか、生活環境的にと言うか不味いモノが多々あった。

 それを詳しく語ろうとすると、少し長くなると思うが取り敢えず聞いてくれ。


 先ず、一点目。

 前世の俺が居た時代には、女子校生なる存在が居た。

 ああ、ここで言う女子校生という者は、女子だけが所属している学校の生徒の事で、女子高生いわゆるJKの事ではない。

 それでその女子校生の方の実情を、皆もチラッと聞いた事があるかも知れないが、当時の俺達がまんまそれと同じ様相を呈していた。


 つまりは、仕事時はきっちり着ていた一体型のスーツを、時間外になった途端に脱ぎ捨ててパンツ一丁になって彷徨いたりする。

 そして、大股を開いて座ったり、そこらに寝転がって尻をボリボリ掻きながら屁をこいたりする。

 まあ、胸は殆どの者が無いも同然なので、ブラとかは必要が無いと言えば無いのかもしれないが、もう少し節度と言うものを持って貰いたかった。


 それから、皆で楽しく語らい合うのは別に良いんだが、その笑い声が【ガハハ】とか【ギャハハ】とかの品の無い笑い方をするのも勘弁して貰いたい所だ。

 まあ、似た様な事は他にも有るが、総じて男性体の目が無いからやっていると言っていい行動だ。


 次の二点目。

 生活空間が直ぐに荒れ放題になる。


 つまり、仕事場ではキッチリ掃除して綺麗にしていても、自分の部屋に帰ると物が散乱していたり、チャンと仕舞う所が有るのに出しっぱなしにしていたり、ゴミを捨てないで取ってあったりしていわゆる汚部屋の様相をなしている。

 これも、男性体が自分の部屋に来ないから片付けないんだろう。


 最後の三点目。

 男性体はいないけれど人肌が恋しいのは変わらないとでも言うのか、十歳児でも二体で慰め合ったりする。


 変に情報だけ詳しく教育されていたりするからか、好奇心でやり始める奴等が多いが、男生体と違って果てる事がないので、何時までもやり続けて仕事に遅れたり、やり疲れてボーッとしていたりで役に立たなかったりする。

 悪いが、男性体がいる場合の詳細は割愛する。


 まあ、そんな例をさんざんに見せつけられて、やっぱり女性体だけではアカンと気が付いたという訳だ。


 それで、有機型アンドロイドの製造ロットの三ロット目で早くも、総製造数の半分を男性型に振り分ける事になった。

 そして、この事を全完成体に告知して、「このままの生活を続けていたら、次にロールアウトしてくる男性体に多分嫌われるけど良いのか? 」と言ったら、その日から態度がガラッと変わって、こっちが逆に怖くなる位に効果覿面だった。


 そして、ロールアウトしてきた男性体は、先任の女性体数人の下に補佐として働かせるようにした。

 こうする事で、女性体は男性体に良い所を見せようとお互いに競うようになり、仕事の効率が上がる事にも繋がったので、結果としてはプラマイゼロになっているのかもしれない。


 そんな訳で、俺の所にも男性体が配属されて来ました!

 ID番号【a-046】命名【エーシロー】君、通称【シロちゃん】です!

 当然、エルフ耳の似合う超可愛い【】だよ!


 みんな! ヨロシクね!








 それから三年後、俺は可愛い女の子を出産していた。





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