第3話 地獄界
神様のお話は止まらない。
「ちょっと話が逸れますが、行為の善悪を問わないことの理由の説明をしておきましょうか。
その方が、心が穏やかでいられるでしょうから。
まず、生物を殺してもよい理由は言うまでもありませんよね。
この世の地獄に生息する生物はすべて、他の生物を食べなければ生きていけません。
そういう風に神が作ったのだから当たり前ですね。
たぶん問題だと想定していることのひとつに、生きる為に殺しているのか、楽しみの為に殺しているのかというものがあるのだと思いますが、その境界はとても曖昧です。
楽しんだ後にも食べたり、食べようとして殺したけれど食べられなかったりもしますからね。
また、殺すことに苦しむなんて全く意味不明です。
それは生きている間は、二重に苦しめと言っているのと変わりません。
ただ生きるのにも苦しいのに、更に苦しんでどうするのですか。
神も生きる楽しさを否定しませんし、むしろもっと楽しんでも良いとも思っていますよ。
別の生物に苦しみを与えているのは、問題がないのかと思われるのかもしれませんが、生物の魂は全て輪廻転生するのです。
全ての魂は永遠にいなくなったりはしません。
また、次でも会えますよ。
いっそ長々と苦しめるよりも、一時の苦痛を与えて即死させてあげた方が慈悲深いですよね。
ですので、殺すことに対する善悪は判断材料には含まれていないのです。」
なんか神の言ってることって、ドンドン殺せって煽っているように感じるな。
なんかその方が神にとって何か得することでも有るのか?
今、俺が疑問を感じているってことは神には筒抜けなんだが、それに対する解答は呈示されないようだ。
代わりにちょっと小首を傾げての微笑みを返して頂いた。
これが答えだと言外に言っているんだろうな。
そして続けて神が話す。
「次に貴方が転生する【
地球が【
次のことも大体予想がつくとも思いますが、太陽系の惑星はすべてが地獄です。
太陽から始まって水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星までで【
後の小さい惑星や衛星、小惑星なんかは【
次は【
地獄の苦しみが重い順に、太陽から天王星までが割り振られています。
以下にその対応表を提示しておきますね。
一、太陽 【
二、水星 【
三、金星 【
四、地球 【
五、火星 【
六、木星 【
七、土星 【
八、天王星【
となっています。
詳しい説明をしても、今後の貴方には特に関係もないので省きますが、大陽がこの星系の重力圏の中心になっていることから、ここを地獄の作成とその開放に宛がわれたという経緯があります。
あまねく重力圏には魂が引き寄せられるという事象は、貴方たちにはお約束ですよね。」
あー、アレね。一部では良く言われてたなぁ。(遠い目)
まあ、最近では電子の海に拡がっていくというのが主流になりつつあるけれども、古典は偉大だからねぇ。
まだまだ、現役で頑張ってもらうとするか。
さて、神様の説明ターンはそろそろ終わりかな。
次はまた、質疑応答の出番だな。
神様。ちょっと質問があるんですけど良いですか?
「はい、良いですよ。なんでも聞いてください。
答えられない事も有りますけれどね。」
それは神様にも分からない事があるって事なんですか?
「いいえ。それはまだ貴方たちに開示するのが、時期尚早な事柄の場合だからです。
神に分からないことなどは有りませんよ。
例え一個神に分からないことがあったとしても、神は集合生命体ですからいずれかの神が知っていれば、それはすべての神が知っていたというのと同じことなのです。
分かりましたか? 」
おおぅ。なんというジャイ○ン主義(注)の権化。
(注:ジャ○アン主義とは。俺のものは俺のもの、お前のものも俺のもの。を標榜する者たちの唯一の心の拠り所である。)
神の暴言をやり過ごして、俺は質問を続行する。
火星や金星ならば、人類がいずれ開拓して住むことも可能になるかもしれないから考慮に値するとは思うんだけど、他の惑星はちょっと無理じゃないですか?
特に太陽なんか燃えてるんだから、火が消えてからなんて言っていたらその時は太陽系全体が滅んでますよね。
「神は何時でも存在し、何処にでも現れます。
すなわち、貴方が向かう火星に人類に類する存在が生存出来るようになった時空にも神は存在し、それに貴方の魂が託されそこで輪廻転生を繰り返してカルマを溜めるのです。
まあ、これはもっとも簡単な作業ですね。
ちょっと羨ましいです。
太陽とかでカルマを溜めるためには、少し方法が違います。
貴方には直接関係がないので、別に情報開示をする意味は特にないのですが、まあ良いでしょう。
肝は魂に紐付ける肉体と呼べるものを炭素系ではなく、ケイ素系や窒素系、もしくはプラズマ生命体など様々なものを用いて、その時々に合ったものを用意すれば良いだけなのです。
まあ、魂に紐付け易さというものが、それぞれで違うのでそこが工夫のしどころではあるんですけれどね。」
はぁ。そうか。
別に人間にこだわる必要もないのか。
だったら、神様の言うように太陽系は地獄としても有効に使えるって訳ね。
ならば、もう俺が気にすることは、転生後の生活のしやすさとかだけだな。
例え死んでも生まれ変われるのなら強くてニューゲーム、いや前世知識を駆使してのザマァや現代無双もできるかもしれんな。
そんなことを考えていた時、ふと神様の顔が優しいものになっているのに気がついた。
あれ? なんだ、この雰囲気は?
なんか俺が残念な奴だとでも言いたいような顔だな。
なんかさっきまでの俺の思考の中で、おかしなところがあったとかか?
ちょっと思い返してみたが、パッとは思い付かなかった。
だけど、なんか引っ掛かるな。
しばらく考えたところで、ハッと気が付くことがあった。
反射的に神様の顔を見やると、ちょっと悲しそうな表情に変わっていた。
そうか。俺の輪廻転生は記憶が引き継がれるというものではないのか。
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