第2話 大叫喚
神様とのお話はまだ続いている。
ところで神様の容姿について、顔面偏差値が異様に高いところまで話した段階で、話題が先に進んでしまって全て説明できていなかったので、先にここで言及しておこう。
身体は特に人間と差があるようには見えないが、先の神様の発言から鑑みるに、人間側から見られる容姿に特に拘りがあるようには思えないので、デフォルトかぞんざいに設定したものなんじゃないかと推測される。
それでも一応解説しておくと、体型は細身で極端な凹凸などはなく男女どちらとも取れるような見た目で、ゆったりとした丈の長いワンピース状の服で、腰に緩いベルトを巻いている感じだ。
足元は裸足ではなくサンダルかなと思われる履き物を履いている。
特に手足とか首元とかにアクセサリーに類する物を付けているようには見えず、いたってシンプルな佇まいだ。
だからなのか、余計に顔の造形に目が向くが本人、いや本神はどうでも良いって思ってそうな感じか。
まあ、長いこと見ていても飽きるようなもんじゃないっていう点は歓迎すべきところだよな。
「そろそろ次の説明に入りますね。
貴方が現在、全裸と呼ばれる状態なのは貴方の魂に紐付けられているものが、その身体だけだったからですね。
貴方の魂に服装も紐付いていたのなら、ここに貴方が現れた時点で服も着ている状態でしたでしょう。
貴方は違いましたが、まれには服を着た状態の人もいますよ。
貴方の生きていた時代で言えば、オタクと呼ばれていた人たちに多い傾向ですね。」
神様の説明に、なる程と納得するものを感じた。
俺の知っている奴らは、大体いつも同じ服を着ていた記憶がある。
だから魂にまで染み付いていたと言われてもおかしくはないよな。
ということは、自他共にオタクであったと認識されていた筈の俺は、崇高なるオタクの仲間には含まれていなかったということか。
何だか、寂しくもあり悲しさも感じるな。
あの俺の輝ける青春は一体なんだったのかってね。
変なところで落ち込んでいる俺のことを、生暖かい目で見ていた神様が話を続ける。
「まあ、貴方とそんな振り向いたような格好のまま話し合っているというのも、趣があってそれはそれで良いとも思いますが、普通にするのもまた良いでしょう。
では、私と同じ格好で良ければ服を用意しますがどうしますか? 」
是非それで御願いします!
「ふふふ。
貴方のように愉快な人との会話は滅多になくて面白いのでサービスですよ。
はい、どうですか? 」
神様の合図と共に、俺は一瞬で服を着た状態に変化した。
格好は神様と一緒の筈だが、何だかやぼったく見えるのはなんでだろうな。
まあ、なんであれ変な姿勢での神様との対話も終了だ。
これでもっと落ち着いて話が出来るな。
誰だ? 大して変わらんだろ何て言うのは。
まあ、次に行こう、次に。
「もう良いですか?
では貴方の最後の質問にお答えしましょう。」
えっ? 最後の質問?
なんだったっけ? 何を聞いていたんだったかな。
ああ、思い出した。こんなこと忘れんなよな、俺。
そうそう、大元のなんで俺がここにいるのかの詳細な説明を求めていたんだったな。
それで、一体どんな理由で俺は神様と対話する羽目になったんだ?
やっぱり、チートを貰っての異世界転生なのかな?
だったら良いなぁ。
「貴方には地獄に行って貰います。」
ハイハイ、ジゴクですね。
って、えっ? それってどんな異世界?
ジゴクって名前の異世界ってこと?
「いえ、地獄は地獄ですよ?
詳しく言えば【
ハァ?
俺は神様が何を言っているのか全く理解ができない。
いや、言っていることはもちろん分かってるよ?
だが、よりによってなんで地獄なんだ?
俺はむしろ、天国に行ってくれとでも言われると思っていたのに、まさかの逆張りの地獄行きだと?
何でなんだよっ!
俺って現世でそんな悪いことをした覚えなんて微塵もないぞ!
まあ、オタクとしての行動で人に迷惑をかけたのかもしれないが、地獄に落ちる程でもない筈だ!
いや、わずかな可能性として死の寸前に凶悪事件を起こしていたのかもしれないが、俺にはそんな記憶は一切残っていない!
記憶にない行動の責任まで取らされるというのか?!
どうなんですか?! 神様!
ちゃんと納得の行く説明をしてください!
「そうですね。
この時代の人は地獄について、あまり良く知らないのは分かっていますので、ここまでは定番と言って折り込み済みなんですよ。ふふ。
では、説明しますね。
まず前提として、貴方が今までいたのは何処でしたか? 」
え? 言わずと知れた地球ですが。それが何か関係が有るのですか?
「はい、有ります。大有りです。
あまり人類には知られていませんが、地球の正式名称は【
えっ、じゃあさっき言ってた地獄って地球のことだったんですか?
なんだ、ビックリさせないでくださいよ~。
なんか心臓に悪いですよ。まあ、もう心臓には影響ないかもしれないですが。
「いえ、違いますよ?
貴方に行ってもらうのは【
ね、違うでしょう? 」
大して変わらないじゃないですか!
【大】が付いているかいないかしか違ってないんじゃ、ほとんど同じですよ!
「いえいえ、それが結構変わるんですよ。
期間は【大叫喚地獄】の八分の一倍、苦しみは十分の一倍です。
ね、ずいぶんな差でしょう? 」
えっ、じゃあ俺の年齢の三十数年の八分の一倍だったら実質四年弱ですか?
「いえ、そうではありません。
そもそも期間というのは、魂に一定のカルマを蓄積する時間のことで個別の個体の生存時間には左右されません。
その個体が死亡したら、その地獄で次の個体に輪廻転生して、魂に一定のカルマが溜まるまで何度でも生まれ変わってその地獄で過ごすのです。
ちなみにカルマとは【行為】、【宿命】という意味ですが、別に善行を行えば多く溜まり、悪行を行えば減るというようなものではありません。
その生物が生きている限り増えるので、長生きすればその個体としては多く溜まりますが、何度生まれ変わっても何も不利益はなく期間を終える時間は変わらないのです。
ですので、大量殺人をしたかったら好きに行っても構いませんが、その個体は周囲のものに排除されたりするので、また幼生体から育たなければならないので、とっても面倒ですよ?
それに一度死に癖がつくと、何度もすぐ死ぬような負のスパイラルに陥ったりもするので注意が必要ですね。」
そう言って神様はニッコリと微笑んだ。
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