幕間 ある内親王の日常

ちゃーんちゃらちゃちゃちゃ 腕を前から上にあげてのびのびと背伸びの運動から。

・・・・・・

のびのびと深呼吸・・・・


ふう、少し疲れましたね。

わたくしの一日は、九郎様に教わった「らじお体操」から始まります。

九郎様は、この体操を朝一にするのが良いと言っておられましたので、毎日、朝餉前に行うようにしています。

また、朝餉に玄米くり~むというものを付けております。

これも九郎様から勧められた薬で、以前は歩くことが苦痛だったのですが、これを飲むのようになって足が軽くなりました。

この玄米くり~むは、とっても甘くておいしいです。たくさん食べるのも体に良くないそうなので決まった量しか食べられないのがちょっぴり残念ですわ。


朝餉の後は、唄などのお稽古があります。

歌は恋の楽しさや辛さを詠ったものが多く苦手だったで先生から「好きな殿方を思い浮かべながら歌を詠んでみましょう。」といわれても全く思いつかなかったのですが、今は九郎様のことを思うと歌を詠んでみようかなと思えるようになりました。

まぁ、なかなか先生に褒めてもらえる歌は詠めないのですが・・・

ただ、「歌に感情を込めて詠めるようになりましたね。」とお褒めの言葉を頂いたのは嬉しかったです。

ただ「感情を明らかに込めすぎるのも風情を損ないますので、これからの課題としましょう。」と言われてしまいました。

わたくしには良く理解できませんでしたが、先生の言われることを理解し、いつかは九郎様に渡しても恥ずかしくない歌を詠めるようになりたいと思います。


昼餉を頂いた後は、運動をします。

以前は昼餉は食べていなかったのですが、私が少食であることを心配した九郎様がお父様に提案し、食べるようになりました。

九郎様がおっしゃられるには「内親王様の食事量だと本当は1回の食事量を少し減らして1日4食から5食召し上がるのが体に良いのですけどね。」だそうです。

お父様は1日4食にしよう。と言われたのですが、私がまず3食からでお願いします。とお願いし、現状になっています。

多く食べて太ってしまっては九郎様に会うのが恥ずかしいですもの。


さて運動ですが、庭に竹で作ってもらった「てつぼう」にぶら下がります。

本当はぶら下がっている竹のところまで腕の力で体を持ち上げる事で腕を鍛えるそうですが、わたくしは全く体を持ち上げる事ができませんので、腕が限界になるまでぶら下がっています。

これでも始めたことに比べたら倍以上の時間、ぶら下がることができるようになっているのですよ。

武士の方は腕が太い方が多いですが、九郎様に聞いた方法だとほそまっちょという者になれるそうでして、これであれば殿方のように太い腕や足にはならないそうです。

ほそまっちょになるには食事も大事だそうですので、食べ過ぎないように気を付けましょう。

九郎様が言われるには、わたくしは「はやぐい」では無いそうですので適切な量をゆっくりと食べるといきなり太ることはないらしいですけどね。


ぶら下がりが終わったら、寝殿の周りを歩きます。

足を上げて歩くのが良いそうなのですが、着物を着たまま足を上げて歩くのは難しいです。

はじめは何度も転びましたが、今では何とか転ばずに2週回ることができるようになりました。

ただ、ドタドタと音をさせて歩いていますので、女御や女官にはすこぶる評判が悪いです。

今も顔を顰めている女御が見えますので、お父様やお母様が病気の治療の一環であることを皆に周知していただけなかったらやめさせられそうな感じです。


運動が終わりましたら日によりますが、舞や笙や龍笛等の楽器のお稽古があります。

舞の稽古の時は、その前の運動を先生が見られているせいか、しずしずと歩くことから稽古が始まるようになってしまいました。

わたくしは舞と運動は別であることは重々承知していますのに、失礼極まりますわ。

でも、先生に言わせると「運動後は足運びが雑になっています。」だそうです。気を付けますね。


楽器は、特に龍笛に力を入れています。

これも九郎様が「雅楽に参加できるなんて素晴らしいですね。機会があれば私に教えてくださいね。」と言われていたので、わたくしから九郎様にお教えできるよう頑張ります。

龍笛だけでは九郎様と一緒に舞台に立てませんので、龍笛と一緒に演奏できる笙や龍笛に合わせて舞うことのできる舞のお稽古にも力を入れていますの。

いつかは九郎様と同じ舞台に立ちたいと思いますわ。


夕餉の前には書を学びます。

源氏物語や住吉物語等、古来の物語が多いですわね。

光の君の様な気の多い殿方は苦手ですが、九郎様はどうなのでしょう。

光の君と紫の様な仲睦まじい夫婦になれたらいいなと思います。

きゃっ わたくしとしたことが恥ずかしい。


今度、九郎様にお手紙を書こうかしら。

博多商人の金吾という者に渡したら九郎様に届けて頂けると聞いていますので、手紙を書いたら女御に持っていかせましょう。



夕餉を食べたら就寝まで自由時間です。

行水をしたり、風呂(サウナみたいなもの)に入ったりして体を清めた後、夏であれば蛍を眺めたり、冬であれば雪明りを楽しんだりします。


あまり遅くならないうちに就寝します。

これが通常のわたくしの一日です。


お父様は宮中行事でお忙しくされているようですが、わたくしやお母様は行事に参加することはほとんどありませんので、毎日のんびりと過ごしております。


あらどうしたの?そんなに慌てて。

お父様がお呼びですか。分かりました。支度をして参りましょう。


それではまたお会いしましょう。

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