4話 一騎打ち?
※※※※※※※※※ Side 隈部時春 ※※※※※※※※※
九郎様には先に進んでもらい目の前の兵と対峙する。
他の兵が来る前に目の前の兵を早急に片づけねば。
相手は2人。刀を抜いている。
立ち振る舞いからして大した腕ではないようだが、九郎様よりは出来るだろう。
観察していると1人が不用意に打ち込んできた。軽くいなして、返す刀で腕と太ももを切りつける。
腕はかすり傷の様だが、太ももは深く切りつけることができたようだ。
これでこいつは動けまい。
もう一人の兵が切られた兵を庇うようにへっぴり腰で切りかかってくる。
こちらもいなした後に脛を切りつける。
骨は切れなかったが、深手を負わせることはできたようだ。
本当なら止めを刺して首を手柄とするべきだが、九郎様の護衛中だ。
負えなくなったことを確認し、後ろ髪をひかれる思いで九郎様の後を追った。
・・・・・
九郎様に兵が迫っているのが見える。
追う兵の一人に後ろから追いすがり足を切った。
残りは3人。小助が牽制をしているうちに追いつき、挟撃せねば。
3人のうち2人を引き受け相手をしている。
先ほどの兵より連携が良く、中々に手傷を追わせられない、ちらりと横目で小助を見ればこちらも膠着しているように見える。
後ろで秋殿がクロスボウを構えているのが見えるので、何とか撃つ為の隙を作れればこの状況を突破出来そうだ。
1人が上段から振りかぶって来たのを、前に出て鍔迫り合いに持ち込む。もう一人が後ろに回り込もうとしているので、秋殿が矢を放ちやすい様に鍔迫り合いを相手方に押し込むふりをして横にひく。
後ろに回り込もうとしていた兵に対して秋殿が矢を放ち、胴に矢を打ち込んだ。
矢を打たれた兵が戸惑っている隙にさらに肩へ矢を打ち込まれる。
これでこの兵はしばしの間、動けないだろう。
俺は目の前の兵へ蹴りを叩き込み、たたらを踏ませることが出来た。
そのまま足を切り、動きを止めることができたが、兵がとっさに横に振りきったため、腕にかすり傷を負ってしまった。
幸い深くはない。目の前の兵の腕を切り動けなくする。
これで2人。
横目で小助の方を見ると秋殿の矢が兵へ刺さっており、小助が足を切りつけるところであった。
3人の兵が動けないのを確認し、九郎様の元へ急ぐ。
秋殿が腕の傷の治療をしようと言ってきたが、断り、九郎様と合流することを優先した。
九郎様。無事でいて下され。
※※※※※※※※※ Side 阿新丸 ※※※※※※※※※
本間三郎と対峙することになった。
父の仇としては小物だが、もはや本間泰宣を討つことは叶わない。
九郎が後ろで弓を構えていることは分かっているが、こいつは俺が仕留めたい。
本間三郎は、綺麗な刀術を使うので次の攻撃予測がやりやすいが、力は向こうの方が上なので攻撃を捌くだけで精一杯となっている。
京で隈部殿、雪殿と稽古していなかったらここまで捌くことはできなかっただろう。
幾合切り結んだか分からないが、必死で食らいついていた俺を本間三郎が蹴り飛ばした。
俺は不意を突かれて避けられず、大きく後ろへ飛ばされてしまった。
木にぶつかって止まったが、一瞬息が止まる。不味い。切られる。
腹を蹴られた事で足に力が入らない。震える足を宥めてなんとか立ち上がると、腕と足に矢を受けた本間三郎が九郎の方へ向かおうとしていた。
九郎は、刀を抜いて受けて立とうとしているが、九郎の腕では数合凌ぐのがやっとだろう。
九郎が殺される。未だに震えている足を叩き、歩こうとしたが、旨く力が入らない。
本間三郎が九郎にゆっくり近づいているのを見て、何とかできないか考えたが、何も思いつかない。
歯がゆく思っていると九郎の手が動き、本間三郎が地に臥した。
俺は震える足を宥めながら九郎の方へゆっくりと近づいて行った。
※※※※※※※※※ Side 菊池九郎 ※※※※※※※※※
阿新丸と本間三郎が戦っている。
僕にはどちらが優勢か全く分からないが、僕は本間三郎の剣の腕には全くかなわないだろう。
阿新丸頑張ってくれ!!!
見ているとつばぜり合いから阿新丸が吹き飛ばされた。
やばいって思った時に自然とクロスボウを本間三郎に向けて放っていた、
予備のクロスボウも発射し、三郎の腕と足に矢を刺したまではよかったが、倒れなかった。
しかも標的をこちらに変えて向かってくる。
まずいと思ったがどうしようもないので、僕はとりあえず刀を抜いてみた。
近づかれたら勝てないから、刀で戦うふりをして目つぶしと寸鉄を投げこんだ。
目つぶしは躱されたが、寸鉄が旨い事足に刺さってくれたようで死んではいないが今度こそ動けなくはなったようだ。
殺してしまうよりけが人のまま残した方が、本間三郎の救出に人手が取られるため、逃げやすくなるだろう。
偉そうに言うけど人殺しの度胸は僕にはない。
念のため本間三郎が落とした刀を蹴り飛ばしておく。
後ろを見ると隈部時春達が向かってきている。
「九郎様。この者の首を取り。九郎様の手柄としましょう。」
そう言うと本間三郎に止めを刺そうとしている。
「時春。本間三郎は、このまま放置しておく。追手が来ても本間三郎の介抱に手を取られるから、追ってこれないだろう。」
僕は慌ててそう言うと阿新丸を立たせ、船へと急ぐのだった。
※※※※※※※※※ 船着き場 ※※※※※※※※※
大膳坊の案内で船へと急ぐ。
遠くから追手の声が聞こえてくる。
どうやら本間三郎を見つけたようだ。
僕達も見つかっているようだが、本間三郎の救出を優先するみたい。良かった。
僕達は船に乗りゆっくりと波辺を離れていった。
沖に出るまでに数本矢が飛んできたが、狙いが外れていたため被害は出なかった。
・・・・・
何とか越後に戻ってきた。
僕達は、越後から船で敦賀港へ行くために、事前に取り決めてあった宿へ向かった。
宿に着くと小助の部下が凄い勢いで表へ出てきた。
「九郎様。報告があります。」
「まぁ 太一。九郎様も到着されたばかりで疲れておる。まずはゆるりとしてから報告を聞こう。」
小助が部下を窘めているが、部下は興奮したまま話を続けようとする。
小助はここで報告されるのはまずそうだと、部下の口をふさぎ落ち着かせるのであった。
・・・・・
潮風に晒された体を井戸水で洗い流し、白湯を飲んでゆるりとさせてもらった。
その間に小助達が船の手配や今後の日程確認などをしていたようだ。
過労で倒れないかな。一緒にゆっくり休んでほしいんだけどなぁ。
しばしゆっくりできたので太一の報告を聞くことにする。
太一も落ち着いており、周りに気を付けるように小声で報告をしてきた。
「ご当主様から見舞がすんだら最速で戻ってくるように命令が来ています。肥後へすぐにお戻りください。」
親父殿から?何かあったかな?
「太一。何か聞いてる?」
「菊池領の北と南の境で不穏な動きがあるそうです。他領は今年の野分の被害が大きいところが大きかったので、豊作な我が領の米を狙ってのことかもしれません。ただこの件での招集かどうかは分かりません。」
う~ん。高々小競り合いくらいで親父殿が呼び出すかなぁ。
まぁいいや。戻ったら分かることだ。
「皆。肥後に帰るよ。」
「「「オー」」」
僕達は、急いで肥後に戻るのであった。
越後と敦賀の観光したかったなぁ・・・
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