3章
1話 佐渡島到着
※※※※※※※※※ 佐渡島 ※※※※※※※※※
ふぅ やっと着いたか。
それにしても歩きと船で1月以上かかるとはなぁ。
現代と比べると道が悪いから歩きにくいし、船だとちょっと荒れたり風が悪いと大きく揺れるし、さらに悪化すると港で待たされるから辛いなぁ。
フェリーか飛行機ほしい・・・
そんなこんなでたどり着きました佐渡島。
阿新丸に日野家挨拶に連れ出されてからここに来るまで約2月、よく頑張ったよ。
さてっと、阿新丸の親父さんのお見舞いに行かなきゃってどこにいるんだろ。
「阿新丸。親父さんは何処にいるの?」
「分からん。島内にいることは確かだから、これから一緒に探してくれ。」
「知らんのかい!!!」
「仕方がないだろう。急な連絡だったんだから。」
「じゃあ、調べるから親父さんの人相を教えて。」
「分からない・・・」
「ん?分からない。」
「物心つく前に佐渡島に流刑になったから親父とはあったことがない。」
そうか、正中の変って僕が満2歳くらいのことだもんなぁ。阿新丸も一緒くらいだろうから、幼過ぎて覚えてなくてもしょうがないか。
「で、どうするつもりだったの?」
「九郎。任せた。」
「いや 人任せじゃなくてね。大体、こういうことの場合って先触れを出しておくべきなんじゃないの?直接 現地に行って会えるものなの?」
「さぁ、息子が見舞いに来たんだから、会えるのではないか。」
「なんてお気楽な・・・」
親父さんの居場所も知らないで来たのか・・・
仕方ない小助達を連れてきているから探ってもらうか。
僕は、秋と隈部時春とここら辺で聞き込みをしようかな。
おい、阿新丸。勝手に動き回るな。お前が迷子になったら探さないといけないから余計に時間がかかる。
まぁ、親父さんも罪人とはいえ長期間暮らしている人を探すんだから情報はすぐに集まるでしょ。
※※※※※※※※※ 3日後 ※※※※※※※※※
うん。思ったより情報ないね。
やっぱ現代と違って狭い世界の情報しかないからかなぁ。
唯一得られたのは、佐渡本間本家の|雑太城<<さわだじょう>>近くの庵で暮らしていることだ。
居場所が分かったからとりあえず良しとしよう。
まずは佐渡本間家の雑太城へ向かうかな。
※※※※※※※※※ 半月前 鎌倉 ※※※※※※※※※
「内管領様(長崎高資)。六波羅探題より定時の報告書が執権 北条守時様宛に届いております。」
「ふん。六波羅探題か。執権 北条守時様へは私から伝えておくゆえ、報告書を渡せ。
どうせろくなことは書いておるまい。
なになに。日野資朝の息子が佐渡島まで会いに向かったとな。今上の手紙を持っているかもしれん・・・か。
大したことにはならんかもしれんが、気になるのぅ。今上の悪い病気が出たのかもしれんな。
執権 北条守時様へは私から報告しておこう。下がってよいぞ。」
「はっ」
|所従<<しょじゅう>>が部屋を出ていく。
「後醍醐め。誰のおかげでその地位に入れると思っているのだ。私の目の黒い内は反抗など許さん。」
長崎高資は、そう呟いたが思い直したように
「まぁよい。佐渡島の本間泰宣へ命じ、日野資朝を見せしめに処刑すればおとなしくなるだろう。
誰かおらぬか。祐筆を呼べ。」
祐筆へ本間泰宣への命令書を書くよう指示すると、そのまま政務に戻るのだった。
※※※※※※※※※ 雑太城前 ※※※※※※※※※
僕達は、阿新丸の父親である日野資朝のお見舞いを許可してもらうため、雑太城城主 本間泰宣の元へ向かっていた。
小助達には先導と情報収集をしてもらっている。
ただすばしっこくて、情報を取ってこれるのは小助を入れても10人いない。
半分は八代郡に残してきたから今は5人だ。
これじゃ領内の情報を取ってくるのがやっとなんだよなぁ。もっと人数を増やさなきゃなぁ。
武田信玄がやってたみたいに歩き巫女とか三つ者とか作ろうかなぁ。
先生になれそうな人を探して、寺子屋の授業に専門科目として入れよう。
僕がそんなことをぼーっと考えている間にやってきました雑太城。
阿新丸だけで城へ行かせるのは不安なので隈部時春を付けます。
僕と秋達は近くの宿を探しましょう。
並行して日野資朝の居場所を小助に探ってもらおう。
阿新丸の逸話を知っているから、日野資朝にあっさり会えるとは思えないしなぁ。
あっ 阿新丸が帰ってきた。
「阿新丸、親父さんに会えそう?」
「今上の手紙を渡したら、当主の本間泰宣が出てきたんだが、鎌倉の執権殿に図ってみないと許可を出せないそうだ。
今から急いで確認してもらえることになったので、1月後には回答が来るかもしれない。」
なに今上の手紙って。そんなもの持ってたの?
鎌倉幕府に警戒されている今上の手紙とか逆効果じゃないのかなぁ。いまさら取り戻せないけど・・・
こりゃあ僕らの周りを警戒しておかないとまずそうだな。非常時の逃走ルートでも隈部時春と相談しておこうか。
小助に負担をかけちゃうけど雑太城も監視してもらおう。
※※※※※※※※※ 一月後 宿舎にて ※※※※※※※※※
1か月が過ぎた。
阿新丸は、毎日のように雑太城へ日参しているが、未だに良い返事はもらえていない。
今日も城へ行っているようだ。
阿新丸には雑太城から動向を探るための密偵がついているみたいだけど、襲ってくることもなさそうなので気が付かないフリをしてそのままにしている。
僕は初めのうちは町に出て観光していたが、小さい街なので1月も居ると見るところもなくなっていた。
調べてもらったけど僕には密偵は付いていないようだった。小領主のミソッカスなんてそんなもんだろうけどスパイ映画見たくならなくてちょっと残念。
今日も日がな一日、宿舎の縁側でのんびりと白湯を飲んでいると小助がスッと僕の背後に降りてきた。
「九郎様。雑太城に鎌倉からの使者が到着したようです。」
うぉっ。危ないなぁ。白湯を零して火傷するところだったじゃないか。
小助さんや危ないから正面から入っておいで。
なになに、これも九郎様の修行です。慣れてください。だって。
なんでも修行といえば許されるものではないよ。
まあいいや。今はまず報告を聞こうか。
「はっ、雑太城に鎌倉からの使者が来たようです。内容までは分かりませんが、使者は急いでいたように見えました。
現在、幾人かで探りを入れております。
明日までにはある程度の情報を得られるでしょう。」
「うん。任せたよ。もう少し情報を得てから阿新丸には伝えよう。」
・・・・・
情報を集めてきたけど良い情報がない。
小助達に集めてもらった情報を精査すると阿新丸の親父さんは今上への見せしめに処刑されることになったらしい。
処刑される日程はまだ決まっていないようだが、それまでに阿新丸との面会は許されないだろう。
どうしたものかなぁ。
「小助、日野資朝の庵に忍び込むことはできそうか。」
「はっ 私の手のものが侍女として入り込んでおりますので、阿新丸様をお連れしたとしても1度きり、しかも夜であれば忍び込むことは出来るかと思います。」
「そうか。阿新丸へ説明する。すまんが呼んできてくれ。」
僕は、小助に阿新丸を呼んでこさせ、今後について打ち合わせを行うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます