5話 検非違使?
※※※※※※※※※ 数日後 宿坊 ※※※※※※※※※
宿坊に泊まって数日が経過した。
興福寺の評判などについては小助達に探らせている
御所には菊池一族が到着したことを知らせているので後数日もすれば先ぶれの使者が来るらしい。
先ぶれの使者が来て、本使者が来て、そこから御所にあがる日が確定するそうだ。
面倒くさいが、仕方がない。
下級の官位授受では本来なら地元に使者が来て授受し、後から上位官位の方経由でお礼をすることが多いそうだが、今回は今上天皇が僕に会いたいと言うことで上京することになったそうだ。
僕が元服前なこともあり、正式な謁見ではなく内謁となるらしい。謁見ほど礼儀作法は必要ないみたいなので禅恵様に教わったことだけで事足りるとのこと。
追加の勉強しなくていいのは良かったぁ。
そうそう、御神木はあのまま観音堂に安置されたままとなっている。
御神木の件も御所と六波羅探題へ報告しているのでそろそろ何か言ってきてもおかしくない頃だ。
御神木を僧以外が移動させることが前代未聞の事らしいので、どちらも御神木と興福寺の扱いをどうするかで揉めているらしい。
観音堂に安置しているとはいえ盗人に盗まれても困るので、従者を常時2名警護させている。観音堂の中に宿泊できる様に整えているのでそれなりに快適なはずだ。
もちろん寝泊まりした従者は翌日は休みにしている。僕はホワイトな家を目指しているからね。
阿新丸は、2日後に新右衛門殿と一緒にやってきた。
そうそう同い年なので呼び名に「様」は要らないそうだ。新右衛門殿は嫌そうな顔をしていたけど、渋々従ったみたい。
せっかく来てもらったので炊いた白ご飯やおかずを振舞ったら気に入ってくれたようで、毎日ではないが数日おきに通ってくる。
通ってきては剣術の稽古に雪と一緒に混ざったり、雪の領地経営の授業を一緒に受けたりしている。
雪と阿新丸の稽古を見ていると互角かちょっと雪の方が上に見える。まぁいいライバルだろう。
僕?僕は剣で生きることはないので対象外ですよ。阿新丸には、10回に1回勝てればいいかなぁって感じ。雪にはもうすでに勝てる気がしないorz・・・
隈部時春からは、護衛が間に合うまでの数撃をしのげる様になってほしいと言われているのでそれが目標かなぁ。
色々予定はあっても相手の動きがないと先に進めないので、まったりと待つ予定。
今日は、稽古も無いし、阿新丸様の案内で京見物に行くことにしている。
加茂神社とか神社と寺院を回る予定。この時代のお寺って中に入れないんだってね。
今回は阿新丸の権力で幾つかの寺は中も見物できる予定だ。
四条河原にも行ってみたいかなぁ。
金閣寺や銀閣寺、二条城はまだないしね。
どたどたどた
阿新丸が来たかな?隈部時春にしてはいやに慌てているような・・・
「九郎様、六波羅探題から検非違使の方が来られており、九郎様に面会をしたいとのこと。」
ほうら厄介ごとだ。
幕府から朝廷の官位である検非違使が来るなんて変だな。あぁ検非違使は武士に人気の官位だったと聞いたことがあるな。
「六波羅から来られていると。それは親父殿の案件では?」
こういった手合いは御爺様か親父殿に任せるに限る。
「いえ。使者殿は九郎様を指名しています。」
げっ 御神木関連かな。本当に厄介ごとかも・・・ 仕方ない行くか。
「すぐ行く。使者殿を広間へ案内してくれ。小次郎、御爺様か親父殿に同席してもらえないか聞いてきてくれ。」
「「承知しました」」
さて何が出るのかなぁ。
・・・ 広間 ・・・
「菊池九郎にございます。」
御爺様も親父殿も不在ということで僕と時春の2人で使者殿と会うことになった。
使者殿、僧衣に身を包んでいるけど、その僧衣って派手すぎない?金色でキラキラしてるぞ。
「検非違使を務める|佐々木道誉<<ささきどうよ>>と申す。此度は興福寺の御神木の件で数点聞きたいことがあって来た。御神木を興福寺の許可なく動かした件について申し開きはあるか。
興福寺からは、御神木を勝手に動かすなど不敬であり、京に神罰が下るとの申し出が来ておる。」
ばさら大名トップの佐々木道誉様でしたか、納得した。
頭が良くて政治に謀略に強く、戦にも強いスーパーマンだっけ?
あっこっち見てる。ぼーっと考えてないで回答しなきゃ。
「御神木の件ですか。私は御神木と言われるような尊い御神体を道の真ん中に放り出しておくほうが不信心であり、神罰が下ると考えます。そのため、きれいな布で御神木を包んだうえで観音堂に安置することこそ神罰を回避するために必要なことだと思い、移動させました。
神罰が下るのであれば、御神木を路中に放置した興福寺こそ神罰が下りましょう。」
「あっはっはっは。興福寺の方が不信心か。これは面白い考えだ。確かに御神木を聖域以外に放置することは不信心かもしれん。
興福寺が御神木を受け取りに来たらなんとする。」
「何もしませんよ。持って帰って貰うだけです。」
「持って帰って貰うだけか、面白いのう。よし、興福寺の件は任せておけ、悪いようにはせぬ。」
「はい。お任せいたします。」
これで興福寺の件は片付いたかな?
この人に任せると良い様に利用されそうで怖いけど、他にいい案もないし任せるしかないか・・・
「それで本題なんだが、お主うまい酒を持っておるそうだな。少し飲ませてくれんか。」
ん?興福寺が本題じゃないのかな。
「それは構いませんが、まだ試作中の品のため量は提供できませんよ。」
「おう。それで良いから飲ませてくれ。」
小次郎、酒と割り水を持ってきてくれ。
時春、何かあてを持ってきてくれ。
・・・・ 試飲 ・・・・
この上洛で物資を管理している金吾が酒の入った壺と肥後の木で作ったお猪口を持ってきてくれた。
お猪口を佐々木様へ渡し、壺から酒を注いだ。
「おお これは旨い酒じゃ。量が少ないのが惜しまれる。九郎殿、再来年には量を作れるようになるのか?」
佐々木様が、水をチェイサーにして酒をチビリチビリと飲んでいる。
「まぁ その予定ですが、人気が出そうなのですぐに売り切れそうな感じですね。」
「そうか。儂の分として一樽予約できんか?」
「どうでしょう。今上天皇に献上する予定ですので雅な方々の予約がどのくらいあるかですね。佐々木様には最低でもこの壺3つ分は取っておけますが、それ以上は難しいかもしれません。」
「むう。仕方あるまい。それだけでも頼む。」
「承知しました。金吾、書き留めておいてくれ。」
「承知しました。」
このまま金吾に酒販売の管理を任せようかな。
秋配下の祐筆達と組ませれば滅多な事にはならないだろうし。
「気に入られたのでしたら、数がないので開けたもので申し訳ないのですが、その壺は佐々木様へ進呈いたします。どうぞお納めください。」
「これはこれは忝い。しかしこの酒は旨い。旨いが既に足に来ておる。これ以上は持って帰って飲むとしよう。
それでは九郎殿、また。」
佐々木様はお猪口に残っていた酒をくいっと飲み干すと颯爽と帰っていった。
あれがバサラ大名TOPの佐々木道譽か。歴史に名が残るだけあって迫力あったなぁ。
興福寺の件は任せておけと言っていたけどどうするのかな?
変な風に戻って来るなんてないよね・・・
さて遅くなったけど京見物だ。
先に阿新丸や雪達が行っているので追いつこう。
・・・・・
京見物で寺巡りしようと考えてたけど、信仰の対象だから見物というより、修業の真似事させられた。
うん。僕には、座禅と偉い坊さんの説法は要らないかな。
皆に追いついた醍醐寺でしこたま座禅をさせられ、説法を聞かされ、僕もう疲れたよ。
僕は観光したかったんだけど、寺を巡るってそういうことじゃないよね・・・
清水寺にも行きたかったんだけど、清水寺って興福寺の支配下らしく興福寺と揉めている僕が行くと面倒なことになるので駄目だって言われた。 とほほほほ
加茂神社は、お祓いしてもらえたからそこだけはちょっと嬉しかったかも。
そんなこんなで京見物は終わった。
現代と違って観光地じゃないから、歴史的建造物はあるけど見物出来るところは少ないなぁ。
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