幕間 候補者を探そう
※※※※※※※※※ 豊田の荘 竹崎の館 ※※※※※※※※※
「城様。八代郡へ向かう工作班及び親衛隊の選抜が終わりました。こちらが人員名簿になります。」
「うむ、これで準備が完了したか。出立は2週間後だったな。俺はこの地に残るので、若様の護衛は任せたぞ。」
「この隈部、全霊をもって若様をお守りします。」
「隈部、俺達 いつの間にかに大所帯の長になったなぁ。俺なんて数年前まで部屋住みで兄貴達のおまけで基本的に農作業していたんだ。ちょっと武芸が出来たから菊池様に若様の護衛につかないかと言って頂き、あれよあれよという間に数十人の親衛隊長、砦の主将、代官として代官代を派遣する身分だ。」
「私もですよ。それで苦労することもあるんですがね。」
「代官代の当てのことか。どうだ 若様から言われた人数は揃ったか?」
「いやぁ 中々見つかりません。普通なら本家や分家を探せば部屋住みなどいくらでも見つかるはずなんですが、戦えるものは若様の親衛隊、その他の部屋住みは工作班に既に推薦していまして、そこから引き抜けないものですから中々に難しい状況です。
代官職をもらえるというこの好機を逃したくはないのですが、どうしても見つからない場合は、代官の選定権利を若様に返上することになるかもしれず、頭を抱えています。
この時代に新しい土地なんてありませんから、代官職も増えませんしね。
城様は、どうですか?」
「俺も同じだ。仕方が無いので寺子屋卒業予定の小僧を元服させ、小僧の祖父で隠居している爺を貢献にして数人送り出すことにした。土地持ちではないとはいえ代官として奉公できる先は少ない故、爺様たちも納得してくれたしな。」
「へぇ、面白いことされますね。うちの一族にももうすぐ元服する予定の者がおりますので、経験豊富なご隠居と組で代官を出来ないか聞いてみましょう。」
「そうしてみな。それから親衛隊も早い処、副隊長を決めないと、隈部が休む暇がなくなるぞ。そちらはどうなんだ?」
「えぇ、役方と武術方2名の3名を予定しています。若様にお許しをいただいており、今も副隊長達が親衛隊の引っ越し準備及び若様の引っ越しの護衛計画を作っていますよ。」
「そうか、気張りすぎて倒れないようにな。」
「ありがとうございます。」
※※※※※※※※※ 菊池郡 隈部の館 ※※※※※※※※※
隈部 時春は、実家の隈部館に来ていた。
時春の祖父は、隈部家の惣領で菊池家の家老を勤めている。時春はその3男である。
その祖父に対して城隆俊から聞いた案を披露していた。
「御爺様、この案であれば若様からの依頼を満たすことが出来るのですがいかがでしょうか。」
「うむ、良かろう。さっそく探してみよう。誰かおらんか。」
祖父は、時春の提案を受け、分家に使いを出し、人を集めるのだった。
・・・・・・
使いの結果、2人新たに領主が決まり、残り1人となったが動作がしても適任者がいない。
父も含めて3人で頭を抱えていた時、襖がバンと開き、手に木刀をもったままの女の子が飛び込んできた。
「御爺、父上、兄上。領主候補が足りないとのこと、なぜこの雪に頼まんのじゃ。」
「これ、雪。はしたない。また、武芸の稽古をしておったのか。全くもう少しで良いからおしとやかに出来んのか。」
「わらわは自分で身を立てたいのじゃ。どうじゃ、わらわに領主をさせてくれんか。」
「雪。言葉使いに気をつけないさい。そんなことでは嫁の貰い手がなくなるぞ。」
「嫁になぞいかん。どうかわらわに領主見習いをさせてたもれ。」
雪はここぞとばかりに3人の間に座り、目を潤ませながら2人を見上げた。
「御爺、わらわと一緒に八代に行ってたもれ。」
シーンと静まり返り誰もが固まったように動かない。
その中で初めに話したのは惣領の御爺様であった。
「う~ん。若様の好意を断るのはもったいない。代替者が出来るまでワシと雪で対応するか。」
「父上、あなたは惣領ですよ。ここにいてもらわなければ困ります。」
「宗春、今を持って惣領はお前に譲る。それで良かろう。」
「父上、数年の代替であれば私と雪で参ります。父上は惣領としての役割を全うして下さい。」
「ワシは惣領だぞ。その命令が聞けないのか。」
「横暴ですよ。なぁ、雪。雪も父と共に八代に行きたいだろう。」
「御爺と行く。」(代官になるためには御爺と行かなきゃいけないんじゃないの?)
雪の勘違い決定に御爺様は浮かれ、父はがっくりとうなだれるのであった。
※どちらも末娘の雪にとっても甘いです。
「御爺様も父上も雪に甘いなぁ。代官候補は揃ったけど元菊池家家老を連れて行ったら若様が吃驚するかなぁ。」
ようやっと隈部家でも割り振られた代官候補が揃うのであった。
※※※※※※※※※ 豊田の荘 竹崎の館 ※※※※※※※※※
「あはははは」
「笑い事ではないですよ。城様。家老が隠居して八代郡に行くことになったので、菊池家への報告や新家老のお披露目などを大急ぎで終割らせる準備と引っ越し準備の両方を手伝うことになったのですから。」
「それでも若様からの依頼を熟せたのは良かったではないか。」
「良かったんですかねぇ。祖父が来るなんて私のお目付け役が出来ただけな気がします。これから若様に報告しなければならないんですが、何と言われるか、気が重いですよ。」
「ま、頑張ってきな。」
・・・・・
「・・・というわけでご依頼のありました代官の数は揃いました。」
「ご苦労。それで時春の祖父は領地経営の経験が豊富なんだろう。」
「まぁそうですね。惣領になる前から合わせると40年以上領主をしていますから。」
「それを見込んで時間のある時で良いので八代郡に作る予定の寺子屋の教師を頼めないか?授業内容は、領主経営全般、内容は任せる。もちろん雪殿も通ってよいぞ。」
「頼んでみましょう。」
この時の九郎の決断により寺子屋の名物教師が誕生するのだが、それはまた別のお話で。
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