7話 本拠地

※※※※※※※※※ 菊池城 ※※※※※※※※※


菊池城に到着しました。

始めてきたけど小高い丘の上に砦があるだけだな。それでもうちの屋敷より何倍も大きいけどね。

まぁ、この時期の城って秀吉の頃や江戸時代と違って石垣造なんて無いからなぁ。

現代だと公園になっており、目の前に隈部氏が作ったと言われる隈府城があるんだけど、今は当然ながらない。


「九郎、我が城に着いたぞ。立派だろう。」


「大きいですね。うちの屋敷とは大違いです。」


親父殿に合わせておこう。うちの屋敷より断然大きくて防御力が高いのは確かだからね。


「そうだろう。城の中を案内してやろう。ついでに兄達にも合わせてやろう。」


「楽しみです。」


親父殿はニコニコとしながら城の中に入れてくれた。


・・・・・


僕は今、広い部屋にいる。どうやら評定の間らしい。

親父殿、武重兄上と2人の男が目の前に座っている。

誰だろうと思っていたら親父殿が紹介してくれた。


「頼隆と武澄、隆舜じゃ。お前の兄にあたる。この小僧が九郎じゃ。」


僕は座礼をした。兄達の挨拶をしてくれているようだ。


「九郎。北条英時様との約束にて八代郡の支配は俺が表向きは頭となるが、実の頭はお前じゃ。八代郡90村余りの内、今回の騒動で地頭がおらんようになった土地も多かろう。

こやつらを代官として使ってみんか。」


「兄上達を部下として使うのですか?兄上達は納得されているのですか?」


「こやつらには既に話をして納得しておる。」


「九郎殿。私達は庶子の生まれのため領地を継ぐことが出来ません。部屋済みとして終わるくらいなら、外で力を使いたいのです。」


頼隆兄上は、真剣な顔で頼み込んできた。本当に部下になっても良いらしい。


「頼隆兄上。身内だけの時は、九郎殿はやめて下さい。九郎と呼び捨てにして頂いて結構です。」


「分かった。公の場では九郎殿と呼ばせてもらうぞ。」

「承知しました。これからよろしくお願いします。」


どうやら頼隆兄上は、親父殿と違って真面目らしい。

そんなことを考えていたら親父殿からジト目で見られた。なんでバレた???


「それで九郎よ。八代郡の統治はどうするのじゃ?」


「はい、八代郡のうち統治者が不在となっているのは30村ほどになります。

一色殿に5村、城や隈部達に頼んで10村程代官を派遣して貰えることになっていますので残りは20村になります。

兄上達はどのくらいであれば管理できますか?」


確認の結果、頼隆兄上、武澄兄上がそれぞれ5村ずつ、隆舜兄上が2村を担当することになった。


「残りは、僕が代官を派遣しましょう。ところで親父殿。八代郡を警備するための武将を派遣していただきたい。総責任者に隈部をあてるつもりですが、八代郡を警備するには足りません。」


「それこそ頼隆達を頼ればよかろう。」


「代官業と警備業を兼務するのですか?」


「代官と言っても事務方が作業するのだからな。お前の好きな計画を立ててみて人が足りぬようなら検討しよう。」


「承知しました。兄上達に手伝って頂けるのであれば、総責任者は頼隆兄上にお願いします。きちんと手当も出しますのでお願いいたします。」


「俺としては手当も貰えて嬉しいが、良いのか?」


「ええ、お願いします。その代わりしっかりと働いてもらいますよ。」


僕がニッコリ笑うと頼隆兄上達は、ちょっと慄いた顔をしていた。解せぬ。


僕は兄上達と相談し、1週間後に八代郡の藤原の屋敷に集合することになった。

藤原の屋敷は既に接収しており、一色殿が管理をしているようだ。


僕は、色々と準備をするために一度、豊田に帰ることとした。



※※※※※※※※※ 豊田荘 ※※※※※※※※※



家に帰ると弟の千代丸と知らない女の子が遊んでいた。

千代丸のガールフレンドかな。

千代丸は僕を見つけるとトテトテと女の子と一緒に近寄ってきた。

うん 泥団子は持ってこないように。。。


「あにさま。おかえりなさい。」


「ただいま、千代。一緒に遊んでる女の子は友達かい。」


「うん。千っていうの。ボクのいいなずけだよ。」


「センです。」


許嫁???おままごとかな。


「よかったねぇ。千代。」


千代丸はニッコリしている。ほのぼのとして楽しそうだなぁ。


「母上と御爺様は中にいるの?」


「いるよ。」


「じゃあ、ただいまの挨拶をしてくるよ。また後でね。」


僕は、千代丸から泥団子を受け取り、家の門を潜った。

これどうしよう。見えるところに捨てたら怒るよね。

千代丸から見えないように玄関の端に置いた。


・・・・・


「九郎。やっと戻ってきたか。無事でなによりじゃ。」


「只今戻りました、御爺様。」


僕は御爺様に八代郡での出来事や北条英時様との取り決めについて説明した。


「頑張ったな。こちらの方は、隣村に援軍に向かった時にはだいぶやられておってのう。」


隣村は、奇襲を受けた時に運悪く領主様が怪我をされたらしく、御爺様が援軍として東伯した時には、屋敷に攻め込まれる直前だったそうだ。

御爺様たちが外から野盗に攻め込んでなんとか立て直したが、野盗には逃げられてしまったらしい。

領主館がボロボロになっていたので、領主様一族を豊田荘に連れて帰り静養してもらっているとのこと。

領主様の怪我はかなりひどく、薬師からは動けるようになったとしても杖なしでは歩けないだろうと言われているらしい。

子も長女が4歳、長男が0歳なのですぐに家を継ぐのが難しいようで、子が元服するまでは御爺様が代わりに面倒を見るそうだ。

面倒を見てもらう代わりとして長女の千を千代丸の嫁に出す約束をしたらしい。


本当に千代の許嫁だったんだ。僕はいないのに・・・

まだ千代も4つだし、親が決めた許嫁なんて良く分かっていないよね。僕も7つだし、これかれこれから。


僕は八代郡へ行く準備があるからと部屋を退出し、ふと玄関の方を見てみると千代が千ちゃんにぎゅっとされ、ニコニコしていた。

・・・


さあ、用意しようっと。


「九郎様、現実は直視した方が良いですよ。」


「茜、いきなり出てきてうるさいよ。」


前世の記憶でもモテた事ないのだから、ほっといてくれ。



※※※※※※※※※ 数日後 ※※※※※※※※※


引っ越しする準備が出来た。

城隆俊と藤は砦に残って警備と開発の取りまとめを担当することとした。


八代郡の警備は兄上達が手分けして担当してくれるので隈部時春を親衛隊の新しい頭とした。

茜、秋も、一緒に八代郡へ移る。茜は治水チームを連れて先に八代郡に入っている。

一色殿もこちらの領地は春慶尼様に任せて八代郡に行っているらしい。

茜によると一色殿の領地の治水を手伝うことを条件に人の採用と訓練を手伝ってくれているようだ。最初のイメージと違っていい人だね。


千代に一緒に行きたいと泣かれたが、千と母上を守ってねって諭したら泣き顔のまま頷いてくれた。

とってもかわいい。連れていきたい。連れて行くと夜に「母様」って泣き出すんだろうけど。


工作班や寺子屋の優秀者や小助達忍び衆も含めて50名ほどの大所帯での移動となる。

本当は工作班の内政部隊を内政部隊がもう10名ほど来る予定になっているんだけど引継ぎが終わり次第の移動となる。


これでも足りないけど足りない人手は現地採用する予定。


やっと本拠地が出来たからこれからは遠慮なく富国強兵に邁進するぞ。

目指せ畳の上での大往生!!!

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