破
あの日以来、僕は毎日黒焦げの大地に植物の種を植えていた。意味が無いのはわかっていても何かしたかった。
『やあ、君なにしているだい?』
黒の大地で白衣を着た男が手を出して、止まって居る僕に話しかける。その男の後ろでは[研究反対!環境破壊反対!戦争反対!]
と掲げる人たちがいた。
僕は男の手を握って立ち上がった。
僕は父の研究に抗議する[ムト ラーレー財団]の一員になった。
入団してすぐに父のことを知った。2年前の戦争で父の作った人工雷発生爆弾を使った作戦で数千人が殺されたこと、他にもどんどん父の支援団体の悪事が知れた。だがそんなのはどうでもいい。ただ森を消した父が憎かった。
僕の父への憎悪、森への想いが伝わり、僕は父の研究所を爆破するチームの一員になった。
計画は順調に進んだ。
今日、父の研究所を爆破する。
爆薬設置は順調だ。あとは僕が研究所のエネルギー室に爆薬を設置するだけだ。
僕は研究所正面玄関から堂々と入って、エネルギー室に爆薬を置いた。最後に父と話したくなって父のところへ行った。
僕は父の部屋へ入る。
机には氷の入った麦茶のコップがあった。棚には本の他に沢山の写真がある。軍服の人と撮る父、白黒写真でお揃いの同じ外国の文字が書かれた服を着た人たちの中で笑う父、沢山あった。
『ガチャ』
父が扉を開け入って来た。
『ゆうた……何しに?……いやいい。ここに来たってことは何かしに来たんだな。ゆうたが何をしようと私の研究は止まらない。何度でも立ち上がってきた。
ゆうた……が何をしてもいいと思ってる。私はゆうたに、世界にそれぐらいのことはした。償いは受けるよ。もう私の夢は叶った。
ゆうたの夢のためなら死んでもいい』
『ドカン!』
研究所のどこかで爆発がした音が部屋中に響く。
『父…さん…』
『早く行け!』
僕は動かなかった。
『早くいけ!お前はこんなところで願いを終わらせる気か?!』
僕は血まみれの父を置いて、見殺して研究所から逃げた。
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