父はいつもと違いソワソワしていた。その日も変わらず空は分厚い雲で覆われ、地上は大粒の雨が降っていた。


午後のある時、外で雷が落ちる音がした。

雷が聞いたことのないぐらい連続で落ちるのを聞いた。


僕は慌てて外にでる。


体は服ごと雨に濡れびしょびしょだ。

少し経って森の中で焦げた匂いが少ししてきた。


道路に出ると巨大な研究所が見える。その周りから黒い煙が上がっている。


研究所から何か青く光る火の玉?が飛び出る。

青い火の玉は雲に入った。


ピィカ


閃光が一斉に出る。研究所近くから大量の雷が落ちる。雲で薄暗っかった森は太陽が出たのかと思うぐらいに明るくなった。


一瞬で家近くまで落ちる範囲は拡大し、家に雷が落ち、家が崩壊する。


最後の記憶は黒ぽっい大地に横たわり、巨大な太陽が雲一つない空の上でギラギラ輝いている青空だった。










目を開けると白い天井。


体を起こそうと腕に力を入れる。腕は動くが弱々しく動き体を起こせなかった。



白衣の男が来た。


どうやら僕はあの日雷に打たれた影響で5年間昏睡状態だったらしい。医者から説明を受けた直後に父が会いにきた。


『ゆうた……起きたか………すまない』


『あ、うん』

父は謝ってきた。




病院を退院して家へ帰る。

以前の家は無くなってしまい、新しい家を作ったそうだ。


いたって普通な住宅地を車は走る。木の一本もない寂しいところだ。

僕は家に着く前に父に

『父さん森に行きたい』


『ん?……森?』


『父さんの研究所近くの森だよ』


『え、あ、あれは…… ゆうた本当に森があったところに行きたいのか?』


『う、うん』


『ああ、わかった』

父は歯切れの悪い返事をしつつも車を武蔵野の方へとやる。


車からの風景は一切変わらない。







車は一面真っ黒に焦げた何もないところで止まる。


『ここが武蔵野だ……すまない』


僕は何も言えなかった。


沢山あった木も、心地の良い鳥の歌も何もない、ただ少し先に父の研究所らしき建物があるだけの土地が武蔵野だと思えなかった。


『すまない、ただ、これだけはわかって欲しい。この犠牲は必ずもっと大きな形で…』


『もういい!』

僕は父の話を遮り森だった黒い大地で蹲り泣いた。



そして僕は誓った。


と。



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