光
引っ越してから数ヶ月が過ぎた。
昨日の雨で濡れた木が太陽の光で雨水を輝かせている。久々に太陽を見た気がする。
僕はすっかり部屋の窓から毎日見る雨に濡れた森の風景に何も思わなくなっていた。
父が部屋の扉を開けて相談してきた。
『今夜東京の方で講演する予定なんだ、久しぶりに外食でも行くか』
僕は東京と聞いて少し嫌だったが、父の不安げな様子を見て行くことにした。
車から見る東京は以前と変わらず灰色で気分が悪い。雨雲が暗く空を覆っている。
僕と父は夕食を済ませ、父の講演する会場を裏口から入った。
父の講演が始まる。
僕はその様子を控え室から見ていた。
『今現在、日本本州は温帯から亜熱帯気候へと移りつつあります。一部地域では年間を通して常に雨雲が空を覆い人々の生活に打撃を与えている状況です。今後このような地域が増えることとなるのは明白です。そうなると、現在の日本で主要な発電方法のソーラー発電では必要な電力を確保出来なくるでしょう。
この問題に対して我々は一つの解決案があります。それは問題の原因、大量の雨雲から出る膨大なエネルギーを回収することです。現在我々の研究所では雨雲から人工的に落雷を誘導する研究をしています。これが成功した場合、我々の見積もりでは東京電力の生産する電力の2ヶ月分を1日で発電できるとしています。
研究が成功したら日本のエネルギー関係に革命と希望をもたらすと私は確信しています』
父は具体的な研究方法などを話しはじめた。僕は父の話に飽きて窓の外を見る。相変わらず気分の悪い雨雲が見えた。だけどあの雲も人々の役にたつのかと思うと不思議だ。
窓の下には多くの人が会場の入り口に集まっているのが見えた。
父は講演が終わったらしく僕のいる控え室に入ってくる。
『終わったよ……お偉いさんは私の研究に興味あるみたいでよかった』
父は少し嬉しそうだった。
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