武蔵野と光 

ライカ

山奥の武蔵野へ移住することになった。



父は車を森の中で走らせる。

道は意外にもきちんと舗装され、大きな揺れなく進む。

少し横に目をやれば、そこは緑生い茂る森、

濃い緑の世界が広がっていた。

木の上の方や遠くを見れば霧で白く曇って映る緑の葉が見える。幻想的だった。




新居に入り、荷物の整理をし終え、外に出る。

耳を覆いたくなるぐらいうるさい雨の音が東京とは違い不思議と嫌な感じはなくむしろ気分が良かった。

地面は湿っていてぬかるんでいる。背の大きな草が足に絡んでくる。

ところどころに茶色の倒木、赤、黄色の木の実が落ちている。

何かの生物の声がそこらじゅうで響いてる。

雨のせいか独特な水の香りが充満しているように感じる。


川が見えた。

流れが早く都市と同じで濁っていて汚い。所々に魚が跳ねている。


歩き疲れたので、木陰に腰を下ろし、流れる川、風でざわつく森の葉を眺めた。

ぼーと眺めていると汚いと感じた川に慣れ、この濁った感じが空の厚い雨雲、森、川の向こうの平原の景観にあってるように感じてくる。

とても落ち着いていた。






家に帰って僕は父に何も聞かれていないのにベラベラと今日見たのを子供のように話した。


父は黙って、うれしそうにそしてつらそうに聞いていた。



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