第18話 交換作業という仕事

 とある日の夕方。もうすぐ夜になるという時間のこと。


――パカパカ……。


 みんなで駅舎に居ると頭上の電気。駅舎内の一番中心の電球が付いたり消えたりしだした。


「あっ、電気交換しないとですね。消えそうです」


 汐ノ宮さんがまず頭上を見ながらつぶやいた。


「だな。急に電気切れそうになったな。さっきまで普通に付いていたのに」


 ってか、今更の事かもしれないが。ここって電気どうやって来ているのだろうか?初めから普通に電気が使えたから特に気にしていなかったが。ってか、そういえば寝台車の方も普通に電気が付くし。お湯も出るんだよな。ここどうなっているのか。まあいつも通りだと『異世界ですから』という声が聞こえてきそうだが――念のため。聞いておこうか。


「ところでさ。ここって――電気どうやって来てるの?ってか作ってるのか?送電線とかないし……」


 俺が動物たち。駅長(柴犬)はじめ、カピバラさん。ペンギンさんの方を見つつ聞いてみると――すぐに返事が来た。俺の予想通り――。


「駅舎の屋根に太陽の光を集めるパネルがあるんです」


 あれ?いや、すぐにペンギンさんが答えてくれたが。俺の予想していた答えではなかった。

 何だって?パネル?太陽光発電という事?えっ?まさかの?俺全く知らなかったんだが――ちょっと見に行けないから、誰かスマホで写真撮って――写真で思い出したが。スマホ無いんだよな。って、そうそうだよ、ホントこれこそ今更かも知れないが。ここへと来た時に何も持っていなかった俺。もちろんそれまで使っていたスマホなどはどこへ行ったのか――だったんだよ。まあ現実世界で悪さに利用されていないことを願うだな。今となっちゃ確認できないし。ってか、結構な頻度でそれまではスマホって使っていた気がするが。俺はどうやらスマホがなくても生活できる子だったらしい。まあ友人と話すというより。いろいろな連絡とかが来るからそれで使っていただけか。だから特にないからと言って困ることは今のところなかった。って、そのことはちょっと置いておいて。なんだっけ?何の話をしていた?あっそうそう。電気だ。電気。えっと、ここの屋根。見たことなかったが。パネル付いてるの?発電用の?


「……えっと――異世界は最先端をいっていたという事?」

「基本屋根は見ないからわからないですよね。ってか。このあたりは木に登らないと屋根は見えないですから」


 ペンギンさんが補足してくれる。


「まあ――そもそもその巨木登れないと思うけどね」


 駅舎近くにそびえる巨木。下の方には、手をかける枝などが全くないため登れない。無理にしがみつきながら登れなくもないかもだが――俺はそんなことできないのでチャレンジもしていない。っか、あんな高いところに無理矢理上って途中で落ちたら――である。


「ってか、パカパカするのは……パネルが壊れて電気が来ていないとかじゃなくて?」


 一応可能性は全て確認しておかないとだからな。


「普通に電球が切れたんだと思いますよ?初めて電球切れましたよ」

「初めてって。異世界物持ちがいいのか」


 俺は点滅している電球を再度見る。多分今の雰囲気いだと――そのうちお亡くなりになりそうだ。


「まあ異世界はイベント起こしのためにいろいろ起こるんですよ。薫さん」


 ってか、そもそもこの駅舎は誰が作ったのか。高いところの作業は3匹の時はどうしていたのかとかいろいろ気になるが――まあそれこそ異世界だからということでちょっと隅に置いておこう。暇な時にいろいろ聞けばいい。ってか。イベント起こしってなんかペンギンさんがボソッと言ったが――ま、まあいいか。気にしたら負けかな?


「——めっちゃ気になること言った気がするが。まあなるほど、じゃ、交換が必要という事か」

「ですね。って――これ烏森さんでも届かなくないですか?台とかがないと」


 ペンギンさんと話しつつ頭上を見ていると、俺の隣に居た汐ノ宮さんが同じように天井を見つつつぶやいてきた。って、確かに汐ノ宮さんの言う通り。長椅子に乗っても――多分俺は届かない。せめてハシゴ。脚立か。でも先ほどのペンギンさんの会話的には、屋根とかに行くなら木に登ると言っていたのでないのだろう。これは――今度隣町へと行く時に仕入れてもらうしかないのか。それまでは夜薄暗い駅舎となるのか。


「薫。ほれ、電球」


 すると、いつの間にかいなくなっていたカピバラさんが器用に頭の上に電球を乗せて戻って来た。いやいやカピバラさんすごいです。マジすごいっすわ。何そのバランス感覚。マジで拍手だった。


「ど、どうも。って――電球が来たがあそこまで届かないけど――」


 カピバラさんから電球を受け取り再度天井を見る俺。すると、ペンギンさんが俺と汐ノ宮さんの前へと移動してきて――。


「普通に考えて、薫さんが椎葉ちゃんを肩車したらいいのでは?」

「——えっ?」

「はい!?」


 驚く俺と汐ノ宮さん。まあ確かに俺が汐ノ宮さんを肩車して――ちょっと伸びれば届く気がするが――それいいのか?である。

 ペンギンさんの提案に、俺と汐ノ宮さんが少しフリーズしていると。


「椎葉ちゃん。ここは若造ではなく。わしの上に」


 そう言いながら汐ノ宮さんの前にやって来る駅長(柴犬)……訂正。エロジジ犬。問題犬だったか。

 2人と2匹。冷たい視線というか。呆れた視線。いや憐れむ視線だろうか?とにかくいろいろ残念な視線で駅長(柴犬)を見ている。


「——なんだ?」

 

 するとみんなが静かになったからか。さすがに駅長(柴犬)もこちらを気にして振り向いた。


「駅長――馬鹿だろ」


 と、カピバラさん。


「駅長さん。椎葉ちゃんに潰されたいだけですよね」


 と、ペンギンさん。まあそうだろうな。汐ノ宮さんは細身だが。駅長(柴犬)の上なんて乗ったら――である。逆ならそりゃ大丈夫だろうが――いや、それはなんか汐ノ宮さんが危険そうだから駄目だな。


「はぁ……」


 ちなみに汐ノ宮さんは――呆れてらっしゃった。


「——とりあえず、烏森さん。暗くなると交換できないですから。交換しましょうか?私たちでするしかないさそうですし」

「マジか」

「椎葉ちゃん!?」


 足元で何か叫んでいるのはスルーされていた。って、汐ノ宮さんを肩車はそりゃできなくはない。でも――それは汐ノ宮さんが大変というか。恥ずかしいだろうということで考える俺。


「えっと……とりあえず長椅子を積んだらいけるか?バランスは……押さえてもらえば……か」

「いやいや、烏森さんそれは危ないですから。その……重いとは思いますが。私を乗せてもらう方が――さすがに私が烏森さんを持ち上げるのは厳しいので」

「……」


 あれ?なんかいつの間にか俺が肩車することになっている?なっているよね?いいのか?ちなみに今の俺達はまだ仕事中ということで、制服である。汐ノ宮さんも制服である。


「烏森さん?」

「あっ。いや――えっと、汐ノ宮さんを肩車するのは全く問題ないんだけど――」

「だけど?」

「……スカートですよ?」

「——あっ!ちょっと待っててください。着替えて――」


 俺の指摘により気が付いた汐ノ宮さん少し恥ずかしそうに寝台車の方に――だったが。


「椎葉ちゃん。着替えている間に日が暮れませんか?」


 汐ノ宮さんが動き出したタイミングでペンギンさんがそんなことを言い。


「うむ。それに仕事中だからな。基本仕事は制服でするものだな」


 カピバラさんも何故かそんなことを言い出したのだ。この2匹――何を考えているのか。


「えっ、いや――でもなんか恥ずかしいと言いますか」

「椎葉ちゃん。イベントイベント」

「えっ?」

「うむ。イベント必須」

「えー!?」

「あの――なんか意味の分からないこと言い合っている間に着替えてこれたのでは?」


 ◆


 その後の事を簡単に話しておこう。俺が汐ノ宮さんを肩車するのは変わらなかった。そして、肩車ということは、俺の顔の両サイドに汐ノ宮さんの足が……という状況で。それはそれは、何と言うか。言ったらダメかもだが。幸せ。

 ちなみにだが、本当に暗くなってきたため。汐ノ宮さんは着替えに行く暇もなく。あれからすぐに俺に乗った。もうどちらもが恥ずかしかったので、パパっと終わらそうと。2人で言い始めたのだが……そう簡単ではなかった。


「あ、あとちょっとです」

「き、厳しい……」


 俺は汐ノ宮さんの指示で立つ場所を微調整するだけ。今上で何が行われているのかは俺にはわからない。


「椎葉ちゃん。薫さん。ファイトです」

「ふむ」

「若造!そこを代われ!今すぐ代われ!それくらいわしでもできる!」


 外野がうるさいのは――放置。あと数センチ。というのが届かず。かなり苦戦。でも汐ノ宮さんが軽いので俺が頑張って背伸びしてみたり。汐ノ宮さんも必死に手を伸ばしたり――ということで、何とか。数分かけて俺達は電球交換という仕事をクリアしたのだった。

 いや、なんでこんなことにというのか。いろいろ忘れないといけない感触というのか。感覚を覚えてしまった俺。その後は……汐ノ宮さん見れなかった。恥ずかしいよ。ちなみに汐ノ宮さんは汐ノ宮さんでカピバラさんとペンギンさんと何か言い合いをしていたのだった。こちらも恥ずかしそうにしていたな。でも――何だろうか?そこまで揉めているようには見えなかったし。カピバラさんとペンギンさんもニヤニヤしている感じだったんだよな。不思議だ。


 そうそう、駅長(柴犬)は何故か俺を睨んでいたな。だから俺は早々に寝台車へと避難したのだった。噛みつかれてもだからな。

 

 まあとりあえず俺は仕事を今日もした。駅舎の電気が消えていたらだからな。あれはちゃんとした仕事だ。約2匹くらいが何かを期待するような視線やら声援を送っていた気がするが――とにかく。あれは仕事である。


 俺は仲間と協力して仕事をした。今日は以上である。

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