第17話 洗車という仕事
数日前の休日に確か汐ノ宮さんとこの話はした気がする『この世界では急に熱くなったり寒くなったりする』今は本当にそれがやって来た。
「暑いですね」
「ホント。ヤバい。汗が止まらない」
朝、駅舎の掃除など、いつもの仕事をした俺と汐ノ宮さんだったが。既に汗だく。制服暑いよという状況だった。手うちわでは全く涼しくなかった。
いやいや本当に突然だった。朝起きたらなんか暑い。外に出たら――めっちゃ暑かった。ホントにびっくりするくらい急に、前触れもなく暑くなったのだった。とにかく今日はめっちゃ暑い。駅舎の方では朝から駅長(柴犬)が活動を諦めていた。お腹を上にひっくり返っていた。さすがに今日は悪さをする雰囲気はなかった。いつ見ても完全に床にひっくり返っていた。どうやらまだ木の床は冷たく感じられるらしい。
ちなみに駅舎の影。外ではカピバラさんが朝から土の上にひっくり返っていた。あとペンギンさんに関しては――駅舎内の部屋の入口に『本日は有給休暇です』と、かわいらしい字の看板が出ていた。ペンギンさんは部屋から出てくることすらしていなかった。ってか、駅長(柴犬)やカピバラさん。ペンギンさんの部屋は見たことないが――どんな感じなのだろうか?あの中に3匹は狭そうだから――もしかしたら地下室とかあるのだろうか?って、余計なことを考えていると日光。熱に身体が負けそうだ。マジで暑い。
今日こそ休日でいいのでは?という感じだったので『今日これで終わりますか』と俺がつぶやこうとしたら――だった。
「——若造ー。今日の仕事は特別任務だー。自分たちの寝床の掃除をせよ――命令だー必ず遂行しろー」
なんか駅長(柴犬)が急にほざった。
「——殺しに来たぞ」
「駅長さん。外暑いんですよ?」
「若造なら――問題なーい」
床にひっくり帰りながら命令を出す駅長(柴犬)そのまま外へと日向へと引っ張って行ってやろうか。と思ったが――ふと俺の頭の中に浮かんだことがあった『水浴びがてら車両洗うか。この前結局しなかったし』そんな言葉が。いや、そういえば前に車両を洗おうとしたら。なんか結局しなかったなー。ということを思い出し。
ここは異世界という理由で片付けていいのかはわからないが。水は無限に出るのでね。確か結構冷たい水だったし。だから洗車はちょうどいいのでは?と思った俺は――。
「——わかりました」
「いやいや、烏森さん。倒れちゃいますよ?」
俺が素直に返事をすると、多分暑さで俺がやられたと思ったのか。汐ノ宮さんがすぐに心配してきた。汐ノ宮さん。大丈夫、俺まだ頭まわっているから。だからちゃんと――。
「駅長(柴犬)もし熱中症とかで俺が倒れたら労災お願いします」
「若造——ここにそんなものはない。働けー」
「……」
まあ、予想はしていたが――この世界に労働基準とかがあるようには思わなかったからな。にしてもホントひっくり帰ったまま話す駅長(柴犬)だった。やる気なさすぎというのと。適当すぎるだろ。ここもブラックというか。あー、でもそういえば包帯ぐるぐる巻きになっている駅長(柴犬)ですら。なんか手当てが出ているとという感じはなかったから……そんなものはない。ってのは、まあ事実なのか。
注意して水浴びするか。と俺がはそんな駅長(柴犬)の声を聞きながら外へと向かう。
日向へと一歩出ると。砂漠とまでは言わないが。煮えていた。多分太陽が高いうちはこんな感じなのだろう。涼しくなるということはないだろうなと思いながら俺はホースなどの準備をした。ちなみに少し水を出してみると――めっちゃ冷たくこれはいける。だった。ホント目が覚める。生き返るといったレベルの冷たく気持ちい水が出てきた。
そして濡れてもいい服装に着替えるために寝台車の方に入ると。それから少ししてだった。寝台車のドアが開く音がした。
「烏森さん。私も手伝いますよ」
音の犯人はまあ1人しかいないから誰が来たかはすぐにわかっていたが。一応やって来たのは、汐ノ宮さんである。
「えっ?汐ノ宮さんいいの?いや――ホント暑いかと。それこそ熱中症とか」
「することないですし。それに水冷たそうだったので。水浴び感覚で私もお手伝いします」
「いや――いいのだろうか?って、濡れたら濡れたで大変では?」
エロジジ犬とか言うのが駅舎から復活して出てくるのでは?という心配が俺の頭によぎる。だがその心配は無用だったらしく。俺の前を通過していった汐ノ宮さんはそのまま自分の部屋へと入るとごそごそと何かして――。
「私。一応水着があるので」
そう言いながらシンプルな白色のビキニを手に持っていた。いやいやそれ俺に見せていいのか?いや水着だからいいのか。ってか、本当に下着と水着の違いを誰か教えてほしい。特に下着とビキニだな。一緒じゃんである。って、ホント汐ノ宮さんなんで普通にそんなもの見せてきたのか。
「——いろいろ言いたいことがまたあるのだが――そもそも何で水着があるの?」
「まあ、それはかくかくしかじかというか――早いころに、駅長さんが与えてきまして――」
あははー。と言いながら汐ノ宮さんがつぶやく。まあちょっと予想はしていたよ。汐ノ宮さんが買うとは思えなかったし。ならなぜ――?と考えるとね。ってか。犬の世界にも水着とか……あるな。ありそうだな。現実世界でも最近の犬。そもそも動物たちも服着てるから水着くらいありそうだわ。
「——あのエロジジ犬。そういうことに関してはさすがか」
「あっ、大丈夫。駅長の前では着てないから、ってか、ちょっと言いたいことは――私のサイズをなんで言っていたかなんだけど――」
そう言いながら水着を見つめる汐ノ宮さん。まあ俺的には――あのエロジジ犬。人を見たらスリーサイズくらい言い当てる能力あるのではないだろうか?わからんがね。
「——まあ、それは俺ではなく本人を縛り上げるか何かして聞いてくれ」
「あははー。あっ、着替えた後――私はどうしたらいいですか?」
どうやら汐ノ宮さんは手伝う気満々みたいなので――。
「あー、水かけるだけだと――だから、モップとか何かあるとかなー。高いところも洗えるし」
「駅舎に一応ブラシはありますよ?」
「ならそれが欲しいかな。俺場所知らないから」
「じゃあ先に持ってきますね。入り口のところ置いておきます」
「ありがとう」
それから汐ノ宮さんが長めのモップを準備してくれた。そして汐ノ宮さんは着替えをするために寝台車内の自分の部屋へ。
俺は汐ノ宮さんが着替え中に先に掃除を始めたのだった。
ジャバババーと水を車体にかけていく。水をかけながらよく見ると、砂埃などが付いたのか。1面だけ砂まみれと言うところとかがあったのでとりあえず1面ずつ水をかけた。結構水をかけるだけでも綺麗になっていた。ってか、この砂埃の原因はなんとなくわかるな。定期的にというのかよく近くを暴走。走っている方々がいるので、その砂埃だろう。
ちなみに水を車両にかけると自分にも水が跳ね返ってくるのだが。それが今は超気持ちいい。あと、ちょうど巨木の影が迫ってきていたので、影のところから水を車両へとかけると、暑さも少しマシになりなかなか気持ちい状態だった今日の仕事快適。だった。って、普段ののんびりな仕事も快適だがね。
ってか、途中で自分も頭から水をかぶりました。いや、やっぱこれが一番冷えるよ。気持ちいいよ。目が覚めるというか。はじめは凍るくらい冷たく感じたが。慣れてくると――最高だった。
「あっ。烏森さん気持ちよさそう」
「——おぉ」
そんなこんなで、俺が車体と自分へと交互に水をかけていると。汐ノ宮さんが寝台車から出てきた。ちなみに当たり前のこと。言わなくてもわかると思うが。汐ノ宮さん羽織物を着ているが――前を閉じてないため。白のビキニが見えていて、なかなかセクシー。ってか、足長っ。制服を着ている時も少し見えていたが。今はかなりはっきりと見えるので、改めて長いことを知った俺だった、あっ、あとめっちゃ肌が綺麗だった。
「——烏森さん。目が駅長です」
「それはない」
見ていたことは否定しないが――駅長(柴犬)にはなっていないはずだ。
「即答しましたが。結構見てましたよ?」
そう言いながら胸元を隠す汐ノ宮さん。でも嫌がってるとか言うことは無いようで――ってか。自分で着替えてきたんだからな。
「——見るのは仕方ない。めっちゃ似合ってるから。目がいく」
「そ、そうですか?あまり今までこういうの着ることなかったので――どうかな?だったんですが」
不安そうに自分を見る汐ノ宮さんだが。めっちゃ似合っているから。である。
「グッドだよ」
「ふふっ、ってか。烏森さん私にも水かけてください」
えっ、それは――いいのだろうか?と思うのと同時だった。
「こっちにも頼む」
「「——はい!?」」
唐突に人は増える。訂正。唐突に生き物は増える。
「薫ー。早く水を干からびる」
「あっ。はい」
俺は急に増えた生き物と汐ノ宮さんの頭上めがけて、空にめがけてホースで水を撒く。あっ、虹だ。と思った瞬間1人と1匹に水がかかる。
「おお、オアシス」
「きゃっ。冷たい。でも気持ちいい!」
「——すごい光景」
目の前でカピバラと少女が戯れている。いや、気持ちよさそうだな。いい絵だった。などと思っていると。声で気が付いたのか。いや、確か部屋に籠っていたから――何かを察知して出てきたのか。
「——薫さん。こっちにも――」
「また増えた」
カピバラさんが来てすぐの事。駅舎の方からそこそこ。いや、かなりのスピードでペンギンさんも登場した。ってか、どんどんいつものメンバー集まるというね。
結果。その後の事を言うと――仲良く2人と2匹ずぶ濡れ。水浴びをしつつ車両洗車となったのだった。
後半は汐ノ宮さんがホースを持ち車両に水をかけたり、掃除をしている俺に水をかけるという悪戯をしつつ。カピバラさんとペンギンさんにも水をかけると。まあそれはそれは平和で楽しい時間が流れ。ってか、結局俺1人で車両洗車となったが――まあ問題ないな。いい光景見れたし。目の保養にもなったし。気持ち良かったしな。
そして水浴びは、車両洗車終了後もしばらく続いたのだった。やっぱり暑い日には水浴びだよ。みんな楽しめるからな。
◆
――そうそう1匹いないことには触れてはいけないか。もう1匹が加わったのは、夕食時だ。あの駅長(柴犬)あまりの暑さにか。俺達が外で車両洗車兼水浴びをしているのに気が付かなかったらしい。まあそれに関してはよかったよ。気がつかれなくて、気が付かれたら――大変なことが起こってそうだったからな。
余談だが。夕食時の事を少し触れると――。
「椎葉ちゃん椎葉ちゃん――脱いで!いや、脱ごう!わしも見たい!」
バシ。バコ。ドン。ガッシャン。ドッシャン……。
駅長(柴犬)はそんなことを言い。1匹と2人にボコボコにされたのだった。これもまあ――いつもの事だろう。だから多くは語らない。俺は――眺めていたである。まあいつもの光景を見ていたということだよ。
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