第15話 (仮)駅員の日常7

 7日目。


 カピバラさんとペンギンさんがとわか駅へと戻って来た。

 行きは乗客なし。空っぽで出発していった小さな電車だが。戻ってくると小さな車内はたくさんの荷物。座席にも荷物。これでもか!というくらいに荷物が詰め込まれていた。ちなみにお客さんは0。ってかこれ……まるで貨物列車だな。いや、貨物列車でいいような。

 まあとりあえず電車が戻って来たということで、電車が到着してからの俺の仕事は、汐ノ宮さんとともにお出迎えのち荷物を降ろしたりの仕事をした。

 ちなみに荷物というのは基本食料である。人も動物のもだ。後は雑貨があったりと。ってか、駅舎にはちゃんと食糧庫というのか倉庫もあるんだよな。なお、管理しているのは汐ノ宮さんだ。

 どうやら昔。汐ノ宮さんがやって来るまでは、倉庫に食料を置いておくと、争奪戦が起こっていたらしいが。今はその心配はない。倉庫の鍵も厳重に汐ノ宮さんにより保管されているからだ。ってか、聞いた話。どっかの駅長(柴犬)とかいうのが1人マナー違反をしまくっていただけで、鍵の管理などをカピバラさんとペンギンさんがお願いしたとか。ホントあの駅長(柴犬)はである。

 そうそうちなみにその駅長(柴犬)は、まだぐるぐる巻きだった。だから……今のところはそっとしておこう。

 一応駅長(柴犬)は最低限の食料。水はもらえているみたいだし。昨日よりかは少し元気になっている気がするのでね。でもまだぐるぐる巻きだ。ってか、なんか抜け出せそうな感じはあるが――緩んでいるところもあるし。でも出れないほど疲れ切っているのかね。いや、周りがさすがの駅長(柴犬)でも怖いのかな?ホント周りでいろいろとみんなが目を光らせているからね。

 でもまだ数日しかいない俺が言うのもだが――あの駅長(柴犬)が簡単に大人しくなるとは思えないのだが……まあ今は荷物運びだ。ちゃんと仕事をしよう。俺は(仮)駅員だし。


 ◆


「カピバラさん」

「なんだ?」

「隣町ってどんなところなんですか?」


 ふと俺は荷物を運びながら隣に居たカピバラさんに隣町について聞いてみた。いや、俺達は行けないみたいだが。どんなところか気になってね。それにもう1週間ほどこの地に居る俺。カピバラさんとも雑談がしやすくなっていたので、荷物を運びながら聞いてみたのだった。


「ここより立派な町だな」

「——でしょうね」


 ここより何もないというのなら――それは町ではないだろう。ってか、ここも町と言っていいのかは……だが。

 そういえばここは、とわか駅。とわか町とか言うのだろうか?または町の名前は名前で別にあるのだろうか?そういえばそういうことを聞くタイミングがなかったからな。まあ知らなくてもいい気がするが。でももし時間があれば誰かに聞いてみよう。駅長(柴犬)以外に。本当はカピバラさんに今聞いてもいい気がしたが。今のカピバラさんは先ほどの俺の振った話に関してまだ話しているのでね。


「あと、向こうは何でもある。物でも食べ物も探せばなんでもあるはずだ」

「それもでしょうね」


 ここでは、一応水はあるがその他はこうして運ばれてきた物だけだ。だからよくよく考えると、カピバラさんが電車を出してくれないと水しか飲めないという。いや、ゾッとするな。カピバラさんがストライキしたら――なんだよな。

 いやでもまあ――探せば何かこの草原にもあるのだろうが。確か最近では食べれる花とかも聞いたことある。もしかしたら草も食べれるものがあるかもしれない。ってか、掘ったことはないが。土の中に何かあるかもしれない。

 でもね。運んできてもらわないと食糧難になりそうだだから――やっぱりカピバラさんには頑張ってもらわないとだな。


「あと、生き物も多いな。無駄に多い。かなり居るぞ。この町とは比べものにならないほどあの町には居るな」

「まあここがいなすぎる気がしますが……」


 ここ2人と3匹だからね。鳥とかも居るのかと思ったが。今のところ見たことないんだよな。不思議だ。


「だからあの町は――騒がしすぎる。落ち着かないな」


 話を聞いていると、ふとカピバラさんの声が疲れたような声になった気がした。なるほど、カピバラさんは生き物が多いところは苦手らしい。


「なるほど、ちなみにですが。隣町には――俺達みたいな人っているんですか?まあいないですよね?」

「居るぞ」

「——居るんだー!」


 それは予想外だった。動物はいろいろ居るのだろうな。と思っていたが。まさか人もいるらしい。ってか、なら何故に俺達はこの場所から出れないのだろうか?同じ人が居る。生活しているのなら。俺や汐ノ宮さんが行けないのはおかしい気がする?もしかして……人は人でも俺と汐ノ宮さんは何か特別?

 まあ俺なんかが考えたところでは何もわからないのだが。ってか、別に今の生活で問題ないからな。わざわざ隣町に何かしに行くという考えはないので、このことはとりあえず頭の隅に移動させた。


 俺がカピバラさんと話しながら荷物を持って電車と倉庫を何度か往復をしていると――ってか、今気が付いたが。カピバラさん。俺の横を話しながら歩いているが。特に何も運んでないという。

 まあ荷物運びが俺の仕事ちゃ仕事だが。そういえば電車に荷物を詰める時はどうしているのだろうか?向こうの駅では誰かそういう人が居る?か。ペンギンさんが1人で?ってか、ペンギンさんと汐ノ宮さんは……と俺が思いつつあたりを見た時だった。


「烏森さーん!助けてください!駅長(柴犬)がー!」

「……え?」


 今日はご指名が入ったのだった。いつもの汐ノ宮さんなら『助けてー!』くらいなのだが。何故かご指名が来た。ってか、皆さん。これはこの場所ではよくあることです。騒がなくても大丈夫です。あの問題犬がやらかしているだけです。1日にそこそこ汐ノ宮さんの悲鳴。ヘルプは聞こえてくるのでね。

 そんなことを思いつつ。俺が声の聞こえてきた駅舎の方を見てみると。やはりというか。駅長(柴犬)もう元気いっぱいだった。既にぐるぐる巻きから脱走。どうやら俺達の視線が無くなるのを待っていたらしい。

 そして今は荷物を運んで両手が塞がっていた汐ノ宮さんの周りを荒い息で走り回っていた。走り回っているのは汐ノ宮さんが動くからというか。逃げようとしているからで、多分汐ノ宮さんが動かなければ……あれは、覗いているな。何がとは言わない。

 ヒントは、今の汐ノ宮さんは俺と同じく仕事中だ。仕事中ということは俺達は制服を着ている。彼女が来ているのは――である。

 ホント困った駅長(柴犬)だ。ちょっと静かだと思ったら、チャンスをうかがっていたらしい。やれやれだよ。


「——あのエロジジ犬懲りないな。ってか。汐ノ宮さん本当に困っているみたいだから――カピバラさん行きますか」


 俺は荷物をちょっと後回しにして、隣でいろいろ語ってくれていたカピバラさんに声をかけた。ってか、俺が声をかけてすぐというか。返事をしながらカピバラさんは俺より早く動いていた。


「抹殺する」

「……相変わらず物騒だが――まあそれくらいでいいか」


 俺がつぶやいているころには、カピバラさんダッシュ。汐ノ宮さんまでは2秒くらいだろう。本当は俺が助けを求められていたから、俺がすぐに行くべきなのだろうが。って、こんなこと思っているより俺も汐ノ宮さんの方へと行った方が良さそうだな。今の汐ノ宮さんは俺と同じく荷物運び中なので、荷物を持っているからか、駅長(柴犬)から逃れるためにふらふらしている。あの雰囲気は、コケるかもしれないし。俺はそんなことを思いつつカピバラさんに遅れること数秒。動き出そうとした時だった。電車の方からペンギンさんの声が聞こえてきた。


「あっ、薫さん。ちょっとこっちは手が離せないので――椎葉ちゃんお願いします」

「えっと――」


 俺がふと振り向くと電車の中からかなりたくさんの荷物を器用に持ち出そうとしているペンギンさんがいた。大道芸でも練習中なのだろうか?


「か、薫さん。こ、こっちは、だ、大丈夫です」

「む、無理しないように。向こう片付いたら手伝いますから」

「——はい」


 現在のペンギンさん。自分の背丈よりたくさん箱などを持っている。いやいや、一気に運ばなくても、なのだが。まあ本人が大丈夫と言っているので、俺はまず既に汐ノ宮さん1人になって――って、再度俺が汐ノ宮さんの方を見た瞬間だった。


——コッ。


 汐ノ宮さん本当に躓いた!だった。ゆっくりスローモーションに……。


「あっ、危ない!」

「——ひ、ひゃああっ!」


 ――ガシャン!


 ◆

 

 いやー、今日もいつも通り。あの駅長(柴犬)今はエロジジ犬。駅長(柴犬)のおかげでこの後バタバタだったよ。


 あの後の事を言うと、こけかけた汐ノ宮さんを助けに向かって、何とか俺は汐ノ宮さんをキャッチした。だが、それと同時に後ろでは違う悲鳴が――。

 まあわかっているとは思うが。たくさんの荷物を運んでいたペンギンさんがズッコケた。もちろん汐ノ宮さんを助けに向かった俺がそちらも助けるということは出来ず。ってか、この時汐ノ宮さんが俺の上にいたからね。あれは――無理だ。動けなかったし。ごめん。ペンギンさん。


 ちなみに、汐ノ宮さんは汐ノ宮さんで、俺が下敷きになりつつも、抱きかかえるように助けてから、その後ワタワタしてやっぱりズッコケたのだが――まあそこは深く触れず。またペンギンさんはペンギンさんでホームで目を回しているし。遠くでは悲鳴……こっちはいいな。あと、悲鳴を上げている真後ろくらいには超元気なカピバラさん。カピバラさん。今日は仕事の後だが、疲れがなかったのか。元気だった。

 そして、その直後遠くで砂埃が見えた。どうやら決着がついたらしい。

 

 とりあえず、今日はちょっと今までの日々からみると働いた日だった。いろいろすることがあったからな。あっ、ちなみに一番楽しかったのは。駅舎の駅長室のところに縛り上げた駅長(柴犬)をみんなで突っつくが楽しかったな。多分この駅長(柴犬)明日は1日休むだろう。

 ちなみに汐ノ宮さんがちょっとキレていた。容赦なく駅長(柴犬)をいじめていた。まあ――駅長(柴犬)の顔が汐ノ宮さんにいじられる時だけにやけているように見えたが……まあいいか。


 ――ってか、これは駅員の仕事?あっ、一応荷物運びはしたよな。それに電車が到着するのを出迎えもした。まあ駅員らしい仕事もしているな。その後とかはバタバタだったが。まあよしということにしておこう。


 今日は仕事頑張ったぞ。

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